元将軍と交易商 7
「スパイク谷はすでに上位王の支配下にあり、オーク傭兵の受け入れも始まっていました。もしヒルダ女王が決起を叫んでいたら、エイクリムの町は民の血に塗れたことでしょう。しかし女王は自ら退き、そうしませんでした」
「そうか……」ハイマンは俯き、両手で額を支えた。「英断だったと思う。仮に一時は敵を退けられたとしても、破滅への第一歩となっただろう……。それにしても不思議なのは、ブランはどうやってオークと交渉したのか、だ」
この時はじめて、交易商の表情がわずかに強張った。ハイマンはそれを見逃さず、弱点を見つけたとばかりに突っ込む。
「もちろん、お前は知っているのだろうな? 教えてくれないか?」
「それは……」
笑顔は崩さず、しかし交易商は額の汗をぬぐった。一矢報いた気分になって、ハイマンはふんぞり返って腹の上で手を組み合わせる。
「何か問題でもあるのかな?」
「いえ、その、実は……わたくしどもも、提供できるほどの情報を持っておらず……こればかりは、いやはや、灰の預言者と呼ばれる半オークが手引きしたということしか……」
「灰の預言者? 半オーク? なんだそれは?」
「ええ、いや本当にどこから来た何者なのか、皆目見当も付かず……まるで魔法のように突然現れまして……」




