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元将軍と交易商 3

「執政官どのが一命を取り留められてから後、王都で起こったことは筆舌に尽くしがたく……お聞きになりますか」


 ハイマンはごくりと喉を鳴らした。「あ、ああ、うん」


「新たに編成された部隊は鉄串を携行していたため、のちに鉄串隊と呼ばれるようになります。帝国本土からの輸送物資を襲う賊に対して徹底的な反撃を行い、賊はその場で鉄串に刺されて街道に晒されました。ファランティア紛争初期には帝国軍もやっていたことですから、もしや将軍もご覧になったことが?」


「実際に目にしたことは、ない。報告では聞いていた。死体を串刺しにして晒したとか……」


「目にした者は一生忘れられず、何度も悪夢に見るそうですね。今回、串刺しにされたのは死体だけでありません。多くは生きたまま串刺しにされました。実際のところ、鉄串がまっすぐに頭部を貫くことはほとんどありませんから、股から徐々に食い込んでいく過程で、胸や腹、肩から抜けてしまいます。そこまで正気を保っていられる人間はおりませんが、何日も断末魔のすすり泣きが続くそうで、それはそれは恐ろしい光景であったと」


 部屋の壁に伸びる影が犠牲者の姿にみえて、ハイマンは胃液がこみあげてくるのを感じた。酒のせいだけではなく。


「……さらに、鉄串隊は王都でも成果を上げていきます」


「なん、だって?」


「銀行家のマルティンを皮切りに、鉄串隊の捜査によって次々と賊の関係者が逮捕され、生きながら刑に処されました。自宅の前、大通り、街角で。賊を密かに支援していた者が王都にいたのは事実なのでしょう。ですが、多くは拷問によって自白を強要された無実の者たちでした。マルティンに至っては尋問があったのかさえ怪しい。なにしろヘルゲン教授との会談を取り持った御仁ですから」


「そ、それではトビアスどののご令嬢は……」


「リーリエ・ハイドフェルト様も捕らえられ、地下牢に送られましたが生き延びました。城を出られてのち……その、続きをお話したほうがよろしいでしょうか?」


 ハイマンはほっと胸を撫で下ろしたところだった。「え、ああ、もちろんだ。城を出られたのだろう。よかった。それで?」


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