5話
セリスはじっと悠斗を見つめた。
「市民カードをお持ちでないということは、何らかの事情があるのでしょうね?」
悠斗は一瞬ためらったが、すぐに答えた。
「はい、実は私はノヴァリス公国からの亡命者なんです。」
もちろん真っ赤な嘘であるが亡命予定だったけど巻き込まれて市民権もカードも無いこれで通そう。
セリスの表情が少しだけ和らいだ。
「ノヴァリス公国からの亡命者ですか。それで、市民カードを持っていないというわけですね。理由をもう少し詳しく教えていただけますか?」
悠斗は深く息を吸い込み、話を続けた。
「ノヴァリス公国では、私の研究が危険視されていました。古代技術の研究をしていたのですが、それが公国の保守的な体制にとって脅威と見なされたのです。命の危険を感じ、ここに逃れてきたのですが、正式な手続きができず、市民カードを取得する機会がなかったのです」
セリスは悠斗の話をじっくりと聞き、納得した様子を見せた。
「それならば、納得です。ですが、帝国内での市民権を取得するためには、正式な手続きを踏む必要があります。今回の功績も考慮して、上層部に働きかけてみますが、しばらくお待ちいただくことになるかもしれません」
悠斗は感謝の意を込めて頭を下げた。
「ありがとうございます、セリスさん」
セリスは説明を続けた。
「まずは、あなたがこの地でどのような活動を行っているのか、詳細な報告が必要です。そして、今回の功績についても文書で提出してください。その後、帝国の審査委員会が市民権の付与について判断します」
「わかりました」
「私も一度戻り諸々手続きの準備をして悠斗殿とハルさんを惑星アルファスへ招きたいと思うのですがいかがでしょうか?お待ちいただく間はこの宇宙ステーションに滞在して頂いて大丈夫です。勿論費用はこちらが持ちましょう」
セリスは善意から言っているが一度情報の共有をしたい悠斗は小惑星に戻りたい。
「お気遣い感謝しますが小惑星アストリアを根城にしておりますので、そちらに一度戻りお伺いの準備をしたいと思います」
僕はダンジョンに戻ってフラッグシップの製造に着手した。
メインエンジンには魔石では耐えれないので生成に個数制限のあるダンジョンコアを使い魔導縮退炉の製造をパラケルススとエルダーリッチに指示した。
ある日、悠斗のもとに一通の通信が届いた。送信者はレオン・ハルバート。男爵の家系を率いるアルファスの領主からだった。
「市民権の発行のために、ハルバート家の統治する惑星アルファスにお越しください。迎えを1か月後によこします」
という通信内容だった。
取り合えずフラッグシップになるフェンネルは間に合いそうで良かったことに安心した。
悠斗とハルは、ダンジョンの開拓と防衛に力を注いでいた。ある日、突然ハルから呼び出され艦艇が接近していることを知らせた。悠斗は緊張しつつも、その接近者が敵でないことを祈りながら対応に出た。
「マスター、味方識別信号を発してこちらに接近中です。」
とハルが報告した。
「了解。タイミング的にハルバート家のもので間違いないだろう。ハル誘導頼む」
と悠斗は指示を出しつつ、接近する艦艇をモニターで確認した。
しばらくすると、その艦艇から通信が入った。画面に映し出されたのは、美しい女性の姿だった。彼女は厳格な表情で、だがどこか親しみやすさも感じさせる。
「私はセリス。レオン・ハルバート男爵の命を受け、あなたをアルファスに招待するために参りました。市民権の発行のために、共に来ていただけますか?」
悠斗は驚きながらも、礼儀正しく応対した。
「お久しぶりですセリスさん、よろしくお願いします。ぜひ、アルファスに同行させていただきます。」
ハルもその場に現れ、静かに一礼した。
「セリスさん、私も同伴しても問題ないでしょうか?マスターのサポートが私の役目ですので。」
セリスは微笑みを浮かべた。
「もちろんです。では、出発の準備を整えてください。」
悠斗とハルは迅速に準備を整え、フェンネルに乗り込みすぐに出発した。
「悠斗さん戦艦はいったい何ですか?未知のエネルギーが検出されているんですが?ワープとか大丈夫ですよね?こっちに悪影響ないですよね」
気品のあった顔が崩れてしまっていた。
悠斗は冷静に答えた。
「セリスさん、フェンネルは私たちが開発した新しい技術と魔法の融合によって生まれた戦艦です。そのエネルギーは魔導縮退炉から供給されています。ワープも安全に行えるように設計されていますから、心配しないでください。」
セリスは依然として警戒を解かず、真剣な表情を崩さなかった。
「でも、この未知のエネルギーが周りにどんな影響を及ぼすのか、まだ完全には分かっていないのではないですか?私たちにとっても、この技術は新しいものですし…」
悠斗は真摯な態度で答えた。
「確かに、未知の部分はあります。しかし、私たちは徹底的にテストを行い、安全性を確認しています。フェンネルがもたらす力は、この宇宙での新たな可能性を開くものです。私たちはその力を正しく使うつもりです。」
セリスはその言葉に少し安心したように見えたが、まだ完全には納得していない様子だった。
「そう願っています、悠斗さん。この力が私たちにとって脅威とならないことを祈っています。」
悠斗はセリスの不安を感じ取りながら、彼女に微笑んだ。
「もちろんです、セリスさん。私たちの目的は平和と繁栄です。フェンネルもその一環として利用していきます。」
その言葉に、セリスは少しずつ安心していった。彼女の心にはまだ不安が残っていたが、悠斗の真摯な態度に少し希望を見出していた。
セリスの指揮する艦隊は整然と進行し、目的地である惑星アルファスへと向かった。
アルファスに到着すると、壮麗な宮殿が彼らを迎えた。宮殿の中には、レオン・ハルバート男爵が待ち受けており彼は威厳のある態度で迎え、悠斗とハルに向かって頭を下げた。
「ようこそ、悠斗さん。私はレオン・ハルバートです。市民権の発行など色々とお話をいたそう」
悠斗は緊張しながらも、しっかりと答えた。
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」
レオン・ハルバート男爵は悠斗を宮殿の会議室へと案内し、そこで詳細な話し合いが始まった。悠斗は、自身の経歴(嘘)とアストリアでの活動について詳しく説明した。
「なるほど、あなたの活動は非常に興味深い。あなたのような人物が我が帝国に加わることは、大変心強いことだ」
レオン・ハルバートは感心した様子で言った。
「しかし、私たちにはまだ解決しなければならない問題がある。周辺の宇宙海賊を一掃し、私たちの領地を守るために協力せよ?その見返りとして、そなたには市民権を与え、正式にアストリアの権利を渡そう」
悠斗は一瞬考え込んだが、やがて頷いた。
「もちろん、協力させていただきます。ですが一つ提案があります。宇宙海賊で改心する気のある物は正規軍に取り立ててはいかがでしょうか?」
「うむ。だが獅子身中の虫となる可能性も高かろう」
もちろん悠斗もそのことは織り込み済みだ
「ですので海賊同士で見張らせたらよいのです。5人1組として誰かが違反行為をしたら全員が罰を受けるというものです。」
「だがそれだけでは抑止力にならないのではないか?」
レオンは呆れて言う
「ですので告発させるのです。告発が本当だった場合、罰がないどころか告発者には褒章を出すのです。勿論、嘘の告発だった場合は厳しい罰が必要です。いかがでしょうか?」
「だがそこまでして数を揃える必要はなにだ?」
「現状の帝国は不安定です周辺の貴族も治安が回復したと知れば採掘資源を求めてい牙をむいてくるでしょう。その時に少しでも戦力が必要なのです。勿論、今の正規軍との混成艦隊などはしないで別の部隊として扱わないといけませんが」
そこまで話してレオンは大きく深呼吸をした。
「うむ。そのように取り計らおうその策の献上も合わせてアストリアの権利を渡すことを誓おう」
誓うってうやむやにする気だったんか!
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