タイムリミット
「いやぁ! なかなか上手くいかないものだねぇ!」
状況は緊迫しているというのに、レインはどこか楽しそうだ。
そんな彼の様子を見て、ハリスが小さくため息を吐く。
二人の関係は、これくらい気楽なのだ。
そもそも、レインとハリスは……旧知の仲である。もっとも、この事実はトロイメライ戦隊の関係者なら誰もが知っている事だが。
「レイン……頼みますよ? 僕達に残された時間は少ないのですから」
「分かっているとも。そのために、ここにいるんだから」
「……しかし。何故こうも合体機構が上手くいかないのでしょうか? 操縦技術……というにしては不可解です」
「同意見だね。操縦技術の問題でも、君達三人の心理的な問題でもない。おそらく……機体の機構、この複雑さだね」
「そこをカバーするために、残りの三機があるのでは?」
「そうなんだけれど……それだけじゃ足りないんだ。だから……」
――合体する、トロイメライ・エヴァンゲリウムとトロイメライ・キルヒェンリートにトロイメライ・エルプズュンデ。
この三機に追加武装を施し、改良する。
それが、レインの出した追加プランであった……。
****
改良の件は、すぐにトロイメライ戦隊全員へと通達された。
その上で、発表されたのは合体しない三機も改良に回すという事だった。
だが、そこには大きな問題がある。
それは……疑似怪獣に対応出来る機体が無くなるという事だ。
いくら量産機が各国に配備されたとはいえ、オリジナルには到底劣る。
それに、もしカタストロイ本体が現れたとしたら……量産機はおろか、今のトロイメライ戦隊ですら対応出来ないだろう。
その問題をどうするのか?
そこでレインが出した案は、とんでもないものだった。
――各国に対カタストロイ用に設計した特殊障壁を配備する。
つまるところ、時間稼ぎを行うという案だった。
当初は、反対する者も多かったが、全員飲むしかなくなった。
何故なら、カタストロイ本体が襲撃してくるタイムリミットがある事を、告げられたからだ。
……カタストロイ本体が覚醒し、この地球を滅するまでのタイムリミット。
それは、残り六ヶ月と三十日後である……。
――それまでの間に、合体機構の構成見直しと改良、そして、各国への特殊障壁配備が間に合うのか?
「出来る事を為すだけさ。これが……ボク、いや、私に託された力と使命である以上は、ね?」
レイン以外いない研究室の中、彼は一人呟く。
いつもの飄々とした態度ではない、毅然とし、その瞳は使命に燃えている。
こんな彼を知るのは、ハリスくらいだろう。
「みせてやるよ、災厄の悪魔。君に地球人類の底力をね……」




