第2話 従者
森の中に入っていくと、ちらほら人が見えるようになってきた。
目の前にいた人が自分語りをし始めた。するとどこからか人がわらわらやってくる。羨ましい。
この森では何か行動すると人が寄ってくる。それで承認欲求が満たされるというシステムだ。
早速自分も何かしたい。何をすればいいのか。とりあえず挨拶することにした。
「はじめまして!」
声が木々に吸い込まれていく。誰も見向きもしない。もう帰りたくなってきた。と思ったそのとき!
「おめでとうございます!あなたは当選しました!」
と声をかけられた。何が当選したのか分からないが、反応があると嬉しい。この調子でどんどん声を出していく。
「眠い~!」
「寝不足かな~~!!」
「昨日寝るの遅かったかな~~~!!!」
根気強く声を出していると、一人の女性に声をかけられた。
「こんにちは!私の名前は、すぱみ!プロフ見て~」
プロフが何のことかよく分からないが、この子は自分にずっとついてくるようになった。
これが噂に聞いたフォロワーというものか。嬉しい。感謝をこめて挨拶した。
「フォローありがとうございます!これからよろしくお願いします!」
「プロフ見て~」
プロフとは一体何なのか。
またしばらく歩くとスーツを着た男が寄ってきた。新しいフォロワーだろうか。
「あなたは誰ですか?」
「私の名前はアーフィです。副業で稼いでいます。役に立つ情報を発信しています」
た、頼もしい。有名になるには作戦を練ることが重要。こいつはいい相棒になりそうだ。
「俺、有名になりたいんだけど、どうすればいいと思う?」
「有名になるためには、ユーザーが見て楽しいと思えるコンテンツや、ユーザーの役に立つ情報を発信していくことが大切ですね」
そうかそうか。それはそうだ。なんか抽象的なことしか言ってない気がする。
「もっと具体的な案とか無いの?」
「具体的な案は有料で販売しています」
金取るんかい。フォロワーならタダで情報をくれてほしいものだが。そして俺は一文無しだ。
「悪いけど、今お金ないんだよね」
そう言うと、アーフィは何も言わずに踵を返し、そのままどこかに行ってしまった。
出会いもあれば別れもある。これしきのことでめげてはいけない。俺の冒険は始まったばかりだ。