夢三夜
こんな夢を見た。
小さな穴を覗くと、薄ぐらい緑掛けた部屋に長髪の女が座っている。
女は、顔をこちらに向けることなく項垂れああと喚いている。
月明りらしいかげが窓もないのに差し込んで、服の白を真白に四角く切り取っている。
心配になって手を伸ばしてもせいぜい小指しか入らない。
毳立った木片が食い込んで、もうどうにもならない心持ちがした。
私はどうも女が気がかりで、なにも手につかない日々が続いた。
ある日、また女がああと喚いていた。
歯がゆくて手を伸ばすと、今度は手首まで何とか入った。
耳を澄ますと、女の声がぶつぶつと聞こえるが、何を言っているか解さない。
則ち手首が痛んできたから、手を伸ばすのはやめた。
ある日、女の声がぱたりと已んだ。
なかなか気になったので覗くと、そこにはいつも通り女があった。項垂れ床に顔を伏せている。
また手を伸ばしてみた。
今度は総身が入った。
私は永年の謎でも解くかのような心持ちで女のもとに歩いた。
近づくと、女はもういいのですと言う。何がと問うても返はこない。
腹が立ったので、女の顔を覗きこんでみた。
私は、此処までの行いを深く後悔した。