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悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します  作者: 水空 葵
第1章

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45/100

45. 心配されました

 昼食後、領主代理のお仕事のために普段はグレン様が使っている執務室に入って、資料に目を通す私。

 幸いにも私が持っている知識でこなせる内容だったからお義父様を頼る機会は無かった。


 けれど、さっき届いたらしい大量の手紙を見て、固まってしまった。


「これは酷いわね……」

「全て旦那様に宛てた釣書でございます」


 送り主は、ほとんどが親交の無い家。

 だから返事を書く必要も無さそうね……。


 念のために、内容を確認してからゴミ箱に入れていく。

 表向きでグレン様は喪に服しているのに、釣書を送ってくるだなんて非常識すぎて言葉が出ない。


「これは……領地からの報告だわ。

 確認していて良かったわ」


 最後の一通は明るい内容の手紙だったから、頬を緩めることも出来た。

 新しい鉱山が見つかったみたいで、視察に来て欲しいという内容だった。


 鉱山がアルタイス領にまで広がっているから交渉が必要になるみたいだけど、急ぎではないから後回しでも良さそうね。

 そう判断したから、すぐには視察出来ないことを伝える返事を書いていく。


「レイラさん、何か困ったことはあるかな?」

「お気遣いありがとうございます。今のところ大丈夫ですわ」

「それなら良かった。私達は別棟に居るから、何かあったら呼んでもらって構わない」

「分かりましたわ」


 途中でお義父様との会話が入ったけれど、返事は数分で書き終わった。

 返事を送る手配を済ませたら、今日のお仕事は終わり。



 だから、執務室を後にした私は私室に戻って魔道具を作る準備を始めた。


 瘴気の気配は今も濃くなっているけれど、まだ魔物は出ていない。

 そろそろ家から返事が飛んでくると思うのだけど……。


「奥様、玄関にこのようなものが刺さっていたそうです」


 そう思っていたら、カチーナが手紙を持って来てくれた。

 私の予想は当たっていたらしい。


「ありがとう。

 また扉に傷を付けてしまったかしら……?」

「いえ、今回は地面が抉れていたくらいでした」

「良かったわ……」


 心の中で息を吐きながら、手紙を受け取る私。


 玄関の扉は襲撃があっても破りにくいようにと頑丈に作られているけれど、目に見える部分は装飾が施されている。

 前回、手紙が飛んできた時は、その装飾に挟まるようにして刺さっていたのだけど、飾りが折れてしまっていた。


 物は治癒魔法で治せないから修理する事になったのだけど、その金額に白目を剥きそうになった。

 弁償にならなくて本当に良かったわ。


 そんな事があったから、今回の返事は地面に飛ばすようにお願いしていたから、大丈夫と分かっていても少し緊張していたのよね……。

 だから、安心して手紙の中身に目を通していく。


「何か分かりましたか?」

「ええ。すぐに出来そうで良かったわ」


 読み終えた時、カチーナに問いかけられたから、そう答える私。

 試しに手紙に書かれていた方法を試すと、禍々しい気配が消えていった。


「消えましたね……」

「私の魔力を撒いたら消えるみたい」


 突然のことに驚いたみたいで、一瞬だけ目を見開いてから呟くカチーナに何をしたのか説明すると、今度は心配する目を向けられてしまった。


「思ったよりも単純だったのですね。

 ですが、これでは奥様の魔力を使う事になってしまいますね」

「そこは心配しなくても大丈夫よ。

 私の魔力はパメラ様の倍以上あるみたいだから」


 正直に言って、私よりも癒しの力がかなり弱いパメラ様を持ち上げる王家は馬鹿だと思う。


 私とブランで少し調べれば分かった魔物の原因も、まだ発見できていないらしい。

 このままだと王都の罪のない人々が犠牲になってしまう。


 けれども、流行り病のことを考えると避難させるのは悪手なのよね……。


「それなら安心ですね」

「とりあえず、近いところから消していくわ」

「分かりました。私は護衛としてお側にいますね」


 万が一に備えてカチーナにも剣を持たせてから、廊下に出て残る瘴気を消していく。


 ちなみに、この剣は勝手に武器庫から持ち出したもの。

 だからカチーナは心配そうにしているのだと思うけど、今は私がこの屋敷の主と同じ立場だから問題無いはずだ。


「ありがとう。もし魔物に囲まれたら、後ろは任せるわ。

 いつ襲われるか分からないから、武器は抜いておいて」

「良いのですか?

 私が裏切るとは……思わないのですか?」

「……思わないわ。

 もしも裏切られても、負ける気はしないけれど」

「そんなに簡単に信用していたら、いつか騙されてしまいそうで心配です」


 カチーナの心配は別のところにあったみたい。

 でも、襲われそうな時はなんとなく分かるのよね。


 私がアルタイス家にいる頃、護衛を付けなくても襲撃に遭わなかったのは、この予感のおかげだったりする。

 眠っている時に襲われそうになっても気付けるから、護衛さんよりも頼りになるのよね。


 だから侍女に武器を持たせていても気にならない。


「襲われそうになったら分かるから、大丈夫よ」

「本当ですか?」

「ええ。そのうち証拠も見せられると思うわ」


 そう口にした時だった。

 天井の方から嫌な感じがしたから、防御魔法を使う私。


 直後、天井を突き破った魔物が私に襲いかかってきた。

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