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悪女と言われ婚約破棄されたので、自由な生活を満喫します  作者: 水空 葵
第1章

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35/100

35. お祝いされています

「グレン様がこんな形のパーティーを思い付くだなんて、驚きましたわ」

「言い出したのはカチーナだ」


 気恥ずかしそうに視線を彷徨わせるグレン様。

 なんだか可笑しくて、私は笑みを浮かべてしまった。


「本来は私達のような領民が豊作などを祝う時にするパーティーなのです。

 奥様が喜ばれると思って、このような形を提案してみました」

「本当にこれで良いのか疑問だったが、喜んでもらえて良かった」


 このパーティーを提案したのはカチーナだったらしい。

 グレン様がこんな形のパーティーを考えつくとは思えなかったから、事情を聞いて納得する私。


 けれども、裏話にはもう少し奥があるみたいで、アンナがこんなことを付け加えた。


「旦那様が、奥様や私達が一緒に楽しめる祝い方を知らないかと質問してくださったので、カチーナが提案したのです。

 旦那様の言葉が無ければ、このような形にはならなかったでしょう」

「そうだったのね。

 グレン様の提案だとは思わなかったわ」


 ほとんど顔を合わせていないから私の好みなんて把握していないと思っていたけれど、どこかで私の好みを知ったのね。

 もしかして、グレン様は私の好みに興味があるのかしら?


「それに、私達が参加できるようにと、旦那様がお屋敷の仕事を手伝って下さったのです」


 グレン様がお屋敷の仕事を手伝った……!?

 本当に何があったのかしら?


 突然すぎる変化に、グレン様が何を考えているのか分からなくなてしまうわ。


「そんなこと、今は気にしないで今は楽しんで欲しい」


 けれど、グレン様からそう言われたから、余計なことは考えないでこのパーティーを楽しむことに決めた。




 それからは、使用人さん達ともわいわいとお話を楽しんだり、色々な料理を楽しんだりして過ごした。

 

「可愛い~!」

「もう離したくないわ」

「私にも触らせて!」


 ブランは……侍女達に囲まれていたけれど、嫌がってないみたいだから、そのままで大丈夫そうね。


 でも、パーティーが終わると侍女達は仕事に戻ったから、ブランは解放されて私の肩の上に乗っている。

 大きさを自由に変えられるって、便利だわ……。


「奥様、私も白竜様に触れたいのですが、宜しいでしょうか?」

「ブラン、良いかな?」

「もちろん」


 そう言って、肩から飛び降りると両腕で抱えられるくらいの大きさになるブラン。

 大きな竜の姿の時は立派な鱗に覆われているのに、小さくなると羽毛でモフモフになるのは(ずる)いと思うのよね。


 この羽毛のお陰で使用人さん達の心を掴んでいるのだから恐ろしいわ。


「あったかいです……」


 カチーナの心も無事に奪われてしまったわ。


 私?

 とっくに羽毛の(とりこ)になっています。




 ……それは置いておいて。

 魔道具を作る準備を始める私。


 今から作るのは、火魔法でも炎を出さずに熱だけを出す魔道具と、風魔法を起こす魔道具の二つ。

 これを組み合わせた物もアルタイス邸で作ったことがあるのよね。


 ちなみに、今回は魔道具にするための鉄の筒と木の棒も用意してあるから、今日中に完成させられると思う。


「奥様、今日はどのような魔道具を作られるのですか?」

「髪を楽に乾かせる道具よ。今は魔法調整して使っているけれど、その手間が無くなるわ」

「そんな物も作れるのですね! 完成したら火魔法が使えない私でも奥様のお世話が出来ますね!」


 今は湯浴みの後、自分で髪を乾かしたりしているのだけど、カチーナは何もできない自分が許せなかったらしい。

 そこまでしなくても良いのに……と一瞬思ったけれど、乾かしながら髪を整えた方が時間の効率が良いことに気付いてしまった。


 それに、自然に乾くのを待っている人は頭がかゆくなり易いと聞いたことがあるから、他の使用人さんも使えるようにした方が良さそうね。

 一応、みんなの健康にも役立つ魔道具になるはずだ。


 だから、四角の板に魔法陣を刻んでいって、魔力を流す。

 今回は初級魔法より少し難しいものだから、普段よりも魔法陣を描くだけで時間がかかってしまった。


 もう一つの風を起こす魔道具の方は円に切り抜いてある板に魔法陣を描いていく。


「魔法陣をこんなに細かく描いているところは初めて見ました……。

 奥様は手も器用なのですね。裁縫などもお上手なのですか?」

「裁縫も出来るわよ。

 破れてしまったワンピースを直したりしていたもの」


 これが終わったら、久々に刺繍でもやってみようかしら?

 そんなことを思いながら、もう一枚の板にも魔力を流していく。


 あとは持ち手の部分から魔力を流せるように調整して……。


「形にはなったわ」

「すごいです! 暖かい風が出せるなんて、夢みたいです!

 これを大きくして、魔石を大量に用意したら……暖炉がない部屋でも快適に過ごせるようになりますね!」


 無事に組み立て終わって魔力を流すと、狙っていた通りの暖かい風が出てきた。

 周りが暑くなってしまう欠点はあるけれど、窓を開けていれば気にならないと思う。


 冬ならカチーナの言う通り、暖炉の代わりになりそう。

 今は真夏だから、冷蔵庫と冷凍庫を作るべきだったかもしれないわ……。


 もう遅いけれど、少しだけ後悔した。

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【あらすじ】
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