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禁断症状

「愛美、酒ぇ」

「メグちゃん、出してぇ。メグちゃ~ん」

「酒くれぇ」

「くすりぃ、くすりぃ」

 納戸からは、二人の叫びが絶えず聞こえてくる。

「黙れジャンキー共」

 私は納戸のドアを蹴り上げた。ものすごい音と共に中は静まり返った。

「さけぇ~」

「くすり・・」

 しかし、しばらくすると、またぼそぼそと声が聞こえ始める。

「うるさい」

 私は再び扉を蹴り上げた。

 水とお粥を差し入れるため、ドアを開けると、ぐったりとした二人が私に哀願するように足元にすがりついてきた。

「メグぅ、メグぅ、」

「愛美、酒・・」

「薬・・」

「甘えるんじゃねぇ」

 私は足首にしがみついて来る二人の手を蹴り上げ、払いのけると、お盆を置いてドアを閉めた。

「出してぇ、出してぇ」

「出してくれぇ」

「出してぇ、出してぇ」

 日数が経つうち、禁断症状がきつくなってくるのか、二人の叫び声は絶叫に近くなってきた。

「出してくれぇ」

「出してぇ、出してぇ」

 叫び声は近所中に響き渡った。毎日のようにご近所のおばさんやらじいさんやら、警察やら何やらが私の家にやって来て私に詰め寄った。

「お宅はいったい何をしてるんですか」

 向かいの隣りの佐藤さんのおばさんが、私にその大きな顔を押し付けるようにして言う。

「なんでもありません」

 私は毅然として答える。

「うるさいんですよ。毎晩毎晩。不気味で子どもが怖がっちゃって困るんですけど」

 隣りの加藤さんの奥さんが子どもを抱きながら私に迫る。

「関係ありません」

 私は澄まして答える。

「もし、何か病気を抱えている人がいるなら、精神病院に連れて行きなさい」

 若い警察官が間に入ってきた。

「その精神病院にボロボロにされたんです」

「でもねぇ、ご近所に迷惑でしょ」

「警察は民事不介入」

 私は最後にぴしゃりと叫ぶと、思いっきりドアを閉めた。

「おい、いい加減に金返せや」

 借金取りも再びやって来た。

「ねえもんはねえんだよ」 

 私はドスを利かせ、やって来たチンピラもどきの借金取りどもを睨みつける。

「か、金・・」

「うるせぇ」

「ま、まあ、もう少しまってやる・・」

 私の剣幕に借金取りは、捨て台詞まがいの言葉を残してすごすごと帰って行った。

「お前もいつまでもストーカーやってんじゃねぇ」

 ついでに電柱の影にいた桐嶋を、私は電柱の影から引きずり出し、往復ビンタを食らわせた。桐嶋はもう昔の面影も無くぶよぶよに太り、後頭部にハゲまで出来ていた。

「しっかりしろ」

「ああ、ああ」

 言葉にならない呻きのような言葉と共に、桐嶋は逃げて行った。

「まったく、どいつもこいつも」

 私は、両手をパンパンと叩き、ほこりを払うと、家に戻った。

 

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