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004 マルクとの交渉

 マルクの話によると、第二王女アレクシア様は、ロンバルト王国第二王子ベネディッド=ロンバルトと婚約させられたらしい。

 ベネディッドは無類の女好きという噂のぐうたら王子で、アレクシア様はどうしても婚約を破棄したいのだ。

 そして来月、第一王子の誕生パーティーがあり、アレクシア様はそれに招待され、初めてベネディッド王子と顔を会わせるそうだ。


「そこで、アレクシア様と見た目が似ているルゥナ、君が王女の替え玉となってロンバルトへ赴き、王子の交遊関係を調査し、婚約破棄の為の材料を集めてきて欲しいのだ。そして、出来れば向こうで破棄してもらいたい」


 マルクの訴えに、ユーリは顔をしかめ反論した。


「それって……。ロンバルトの王族を欺くことになりますよね。正体を見破られた場合、処刑されかねませんよね」

「その点は考えがある。一度、アレクシア様に会って欲しいのだ。それから決めてくれて構わない」

「お会いしたら無理矢理でも替え玉にさせられるのではないですか? ルゥナ。この話は聞かなかったことにしましょう」


 確かに、王族からの願いに逆らえる気はしない。

 ユーリの即決にマルクは焦りを見せた。


「まぁ。待て待て。無理強いして替え玉にしても、婚約破棄なんか出来ないだろう? アレクシア様は協力してくれる人材を求めていらっしゃるのだ」

「だから、無理強いはしないということですね」

「そうだ! それに、私はアレクシア様にルゥナを連れていくと約束してしまったのだ。ルゥナは心優しき少女だから、必ず力になったくれるだろうと、話してしまった」

「お人好しなルゥナの性格に漬け込もうとしたのですね」

「そう嫌味な言い方はよしてくれ。そうだ。アレクシア様に会ってくれるというならば、この店の商品を全て私が買い取ろう。それでどうだ?」


 店を手放すことになったら、在庫を抱えることは難しい。ユーリは倉庫の方へ目をやり、マルクへと視線を戻した。


「在庫も含めますと、ざっと金貨百枚分はありますが…」

「……うーん。大丈夫だ。出そう! ルゥナも、それぐらいの資金があれば、別で店を出すことも借金返済の足しにもなるだろう?」


 マルクの言う通り、王都の端なら店を構えることも出来そうな金額だ。ユーリは高額であるにも関わらずマルクが即断したことに少々面食らった様子で、ルゥナへこれがマルクの真意かどうか尋ねるように目を向けた。


「はい。それぐらい資金があれば、別の場所に店を構えて返済も待って貰えますし、商店会長さんのお話しも断れます。今後、どうにかやっていけそうです。ですが、その場合、王女様のお話をお受けしなくても良い状況になりますが、マルク様はそれで良いのですか?」

「ああ。私はルゥナを連れていくことを約束したまでだ。君の回復薬には何度も助けられてきたからな。あれ程良い商品は国中探しても見つからないだろう。その礼も兼ねて、君の力にもなりたいと思っている。そこは下心なしだ」


 ルゥナの回復薬は通常の薬師が作る物の数倍は効能が高い。それはモッキュがよい薬草を屋根裏部屋で栽培してくれているからなので、ルゥナひとりの力ではない。

 しかし、一般の人には無意味過ぎるほど効能が高く、マルクや体力のずば抜けた者しかルゥナの回復薬の性能を讃えてくれる者はおらず、マルクは貴重な収入源だった。

 きっとこの店の全商品を買い取ってくれると言ってくれるのも、マルクしかいないだろう。


「それなら、お話だけでも聞こうと思います」

「ルゥナ。本気か?」

「はい。今後の事を考えたら、やはりマルク様のご厚意を受け入れるべきです。王女様のところへ連れていっていただけますか?」

「よし。城へ案内しよう。途中、騎士団の駐屯所に寄ってくれ。商品の代金を先に渡そう」

「仕方ないですね。私もご一緒させていただきますからね」

「勿論構わない。では、鎖をほどいてくれ」


 ユーリは剣を納めると、渋々マルクの鎖をほどいた。


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