王都−06
悲壮感を漂わせながらも何かを決意した顔になったドベデス王は鱒太を正面から見て言った。
「覚悟は決まった。やはり私が責任を負おう」
「「「陛下……」」」
言い切った時には眼に力が戻ったドベデス王に声をかけた者達も言葉は続けられずにいた。
「そうか。その覚悟忘れるなよ。じゃあ…まずは…」
鱒太が手を翳すと先程消えた宰相が同じ位置に現れた。
顔は疲れ切り座り込んではいたが。
「「ナガール宰相!」」
「ナガール!無事か?!」
(今は真面目な…とこなんだ…ニヤけるなよ俺え…)
周りの声に名前を思い出し腿をつねる鱒太。
「…ここは!私は、戻ってこられたのか?…」
少しの間呆けていたナガール宰相も戻ってこられた事に気付き、1つ息を吐くも視線が鱒太に向くとギクリと体を震わせた。
「とりあえずお前は後回しだ。先にあっちだな。」
ナガール宰相に言い終わると鱒太は後ろに歩いて行き、気絶した騎士達と飛びかかってきた者のそれぞれ順に手を当てて 回復のスキル を使った。
(あれ。これかなり腹減る?ん?)
次第に目を覚ましていく騎士達を見て、またいきなり襲っては来ない事を確認した鱒太は、部屋中を見渡し最後にドベデス王で視線を止め、それでいて全員に聞こえるように話し出した。
「今回俺はある存在に頼まれて、自らの意思でこちらに来た!そして、言葉も理解した今、重要な事を伝える」
「!?」
「とりあえず最後まで聞け。そもそも召喚の儀とか呼んでいるものは、人の魔力で魔法陣を使って呼び寄せる為のものじゃ無い。この世界を創り見護る存在に危機を訴えて、願いを届けるものだ。その結果必要な力を授かった者が送り届けられるに過ぎない。だが今回はそうじゃなかった。傲慢で怠惰で邪な願いが何度も届き続けていた訳だ。そこで俺が、た・の・ま・れ・て来たというわけだ。ある意味で使者というべき立場でもある俺に対する数々の言動、態度…今ならこの意味分かるよな?」
話の途中でもう青ざめ失神している者もいたが、話終わりと同時に全員が一斉に平伏した。
ドベデス王も平伏しながら震えた声を出す。
「か、かか数々の御無礼、大変まことに申し訳御座いませんでした!」
(召喚されて直ぐの俺が色々知っているので信憑性が増したかな?)
「今も見ていると思うぞ。言葉も、行動も、心の中も、な。」
「「!!」」
(何人もブルっとしたけど心当たりがある奴らだろうな)
「今この場にいる者、この話は他言無用。私の立場、身分についても最小限にする事。後は私が判断する。」
「畏まりました。しかしながら…身分に関しては…理由を聞かせては…」
「ああ。ここでやるべき事が済めば地方もあちこち見てまわるから。偽装や演技をした所を見ても本音は出てこないだろうしな。」
「了解致しました!」
ドベデス王が返答と同時に頭を下げると、それに倣い一斉に更に頭を低くした。
それを見届けた鱒太は手を打ち鳴らし
「はい。じゃあ全員立って。今ので話はとりあえず終わりって事で。後は普通にしてくれて良いから。」
「………」
(はいそうですかって立ち上がれる雰囲気じゃ無いよね)