回想−02
(気持ちは決まったけど、幾つか聞いておきたい事がある。まず、直前まで乗っていた車はどうなったんだ?)
(「きちんと駐車場所に入れてありますよ」)
(いや。それだと駐車料金がかかるじゃないか。)
(「その辺りはうまいことやっておきます」)
(うまいことって…できれば住んでいた所に戻しておいてもらえないか?神様的なアレで。)
(「うまいことやっておきましょう」)
(なんか不安だな…つ、次に……俺は死んだ…のか?)
(「違いますよ。ただそちらの世界は人1人が忽然と消えても色々問題もありますからね。…ではこうしましょう。戻ってくる際には同じ時間同じ場所なら良いでしょう。」)
(確かにそれなら車も何も心配しなくて済むな。)
(「そうでしょう?」)
(何となくドヤった気がするけど、後からの思い付きだよね?まあ、いいけど。)
(「ただ気を付けて欲しいのは何十年もしてから戻ってくると、精神や身体の年齢が齟齬を起こしますからね。」)
(気を付けるよ。ちなみに戻るときは?どうするんだ?)
(「向こうに送る時に胸に印を残しておきます。そこに手を当てて強く願って下さい。1度だけですが、ここを経由してあなたを元の世界に戻してあげられます。」)
(今までも同じ方法で戻していたのか?準備がいい気がするんだけど)
(「そうですよ。全く同じではないですが。強大過ぎる魔物や、同時期に数種類大量に発生した魔物。思想を誘導する魔術で近隣の国に手当たり次第攻め込ませた魔族など。これらを抑えてもらい、落ち着いた時期に人知れず戻ってもらいました。長くても5年もいなかったでしょうか。今回は次回までの期間が延びますから、滞在の期間を長くお願いしたいのです。」)
(6〜7年位でもいいのかな?)
(「構いませんよ。6年以上であれば。特に強制ではありませんので。」)
(わかりました。あと魔法の知識を基本だけでも知りたいですね。)
(「根源に関してはお教え出来ませんが、世界に広範囲で影響する力で想いや環境でも変化するものです。初めは筋力や知力の補助、環境に対応する手段多種多様な変化の為の創造でした。それしか無いという魔術や魔法は無いですよ。強く具体的に思う事で様々な魔法が出来るのです。想像だけでは上手くいきません。」)
(ふんふん。なるほど。火を発現させても、熱くもなく燃えもしないって事かな。)
(「向こうで色々と試してみて下さい。今迄の方達も毎回楽しんで使っている様子でしたので。」)
(そりゃな〜。ああ。後、向こう行って直ぐ無力だと相手にいい様にやられそうだし、ある程度は力を使えるようにしておいて欲しい。)
(「いいでしょう……後の事は少しだけ、知識としてあなたの中に入れておきますね。」)
(少し急いでいる感じがするな…問答無用じゃ無いだけ助かったのかな?)
(「それではお願いしますね」)
「あ!あああああ〜……」
後ろ向きに更なる謎空間に吸い込まれていく鱒太だった。
そして召喚の間へ