王都−05
「それじゃあ先ず俺を元の場所に返す事が出来るのかを聞こうか。簡潔にな。」
「……無理だ。」
「返すつもりの無い誘拐か?それじゃあ、俺に何をさせようとした?」
(全部知ってて聞くのもなあ。まあ、仕事仕事。)
「過去に召喚された英雄達は、この世界で最高峰の剣技や魔法の使い手にまでなり活躍したと記録がある。それに倣い魔物や魔族の脅威から民を救うべく力を貸してもらおうと…」
「つまり、使い手になる迄は手を借りなければならないくらいに、最初は力を持っていないと知っていた訳だ。なのに武器を構え囲んで?身分も素性も知らないのに見下し、状態も分からず話しかけて答えろ?更には命を賭けて戦えと?!何処まで傲慢なんだ!」
「……」
因みに脅威の度合いは?被害とどんな対策をした?」
「…それは…昔から魔族は人の領域を狙っていて油断のならない相手なのだ。魔物も強く、多い地方では開拓も進まないでいる。」
「大した対策もせず、魔族に面と向かって敵対されたわけでも無く、大きい被害が出たわけでも無く。…完全な思い込みと決め付けで召喚した奴を扱き使って侵略してやろうとしただけの様だな。」
「……」
「もうどうしようも無いクズの国じゃねえか。やっぱ頭すげ替えるべきだろ。」
そんな最後通告とも取れる言葉を発した時だった。
居並ぶ貴族の間から大声を上げ前に進み出てくる者達がいた。
「「待ってください!」」
左右から1人ずつ現れて、2人は互いに顔を見合わせ驚くも意を決した表情になると
「「私が代わりになります!」のでどうか!」
と叫んだ。背の低いまだ20才にもなっていないだろう若い茶髪の男と、背も高く顔立ちも整った口髭の、30代半ば位といった金髪の男だった。
(いるじゃん。まともな人達。そりゃ全員悪人な訳無いしな)
「…他にはいないのか?」
鱒太の問いかけに手前の初老の男が手を挙げた。
「若者達にさせるわけにもいくまい。私が代わろう。」
それを聞き止める声が挙がる。
「な、何もイワノフ侯爵が代わらずとも…」
「そうです。それならば私が代わりましょう。」
その会話を聞き鱒太はドベデス王に向き直り言った。
「だそうだ。これだけいる中から4人も忠臣が身代わりを申し出てくれて、よかったな?」
鱒太の皮肉にもドベデス王は既に声に力無く。
「これだけいて4人か…いやそれが私の価値を認めた者達なのだろうな…」
俯きそう呟くのだった。