王都−02
「どうやら突然の召喚に混乱しているようだな、少し休憩が必要だろう。退室を許す。この者を特別休憩室まで案内せよ。」
「「はっ!」」
王の言葉の特別休憩室のところで騎士達が微かに反応したのが分かった。
(隠語、暗号?みたいなものかな?周りも納得したようなのを見ると。…さあ。いよいよだな。)
鱒太に詰め寄る6人の騎士達は皆、顔に怒気を孕ませ掴みにかかった。
とても案内するという行動ではなかったが、今の言葉に拘束して連行しろという意味が含まれていたのかもしれない。
「があっばばばばあ!」
「ばぎっぎぎぎぎい!」
『バチチチチン!ドゴガシャン!」
先んじて鱒太の肩と腕に手をかけた2人の騎士が痙攣してふっ飛び、後ろにいた騎士とぶつかり合い一緒になって倒れ込んだ。
「っおい!どうした!…おま、お前その手!」
背中でぶつかられ倒された騎士の1人が痛みに顔を歪めながらも、首を起こし自分の上に乗る同僚を見ると両腕の先、手甲から煙を出して気絶している姿だった。
隣を見れば同じように腕の先から煙を出し気絶する先輩騎士と、その下敷きになって呻く後輩の姿があった。
何が起こったのか分からなかったが、その事態を起こしたであろう者へと睨みつけ見ると、そこでは巻き込まれなかった騎士の2人が槍と剣を青年に向け構えたところで、自分も急いでそこに参戦する為に同僚の身体を押し除け、脚を抜きかけたとき。
部屋に響く聴き慣れない声が聞こえた。
『無礼者がー!貴様らが誰か知らないが、この俺様にここまでの狼藉!許されんぞ!次は消し去ってやる。かかって来い!」
「「「!!?」」」
「お、おい。喋ったぞ。」
「あ、ああ。だがそれよりも…」
「何が起きたんだ?腕から煙が出ているぞ」
一連の出来事に唖然としていた貴族達も鱒太の怒鳴り声に、気を取り直した者達がまた騒ぎ始めた。
(よし。とりあえずは上手くいったかな?ここから優位に持っていかないと。でも話し方がな〜王侯貴族相手だとめんどくさいしな。違う世界の違う国って事で納得してもらおう。なんか俺って適当言う者って感じだな。)
一瞬前まで驚きに固まっていたドベデス王がそこで声を出した。
「貴様は何者だ?!」
鋭く睨みつけ見下すその姿は鱒太が想像してきた王の姿に近いと思った。
「貴様こそ何者だ?俺を誘拐した奴らの頭だよな?」
「誘拐した奴らの頭?何を言っ…誘拐?」
「自分のした事も分かっていないのか?俺を誘拐し、武器を向け罵声に恫喝、其処の者達をけしかけ、拘束させようとしていただろう。」
「何を言っている。これは由緒ある英雄召喚であり、呼び出された者は英雄となれるのだぞ?先程はこちらに返答もせずに無礼な態度だった者が何を言うか!」
「まだ言葉が通じない相手に何を言っていた?授かった能力でようやく理解できるようになったのも今だ。身勝手な言い分に納得すると思ったか?しかもその相手に武器を向けるのがこの国の意思なんだろう?」
「…もう良い。武器は下げよ。」
「し、しかし…」
同僚を傷つけられ黙っていることが出来ず、食い下がろうとする剣を構えた騎士。
そこにも突っ込む鱒太。
「なるほど、アンタの言葉も軽く見られて、指示も反論で返される程度なのか。」
「っ!」
目を見開き唇を噛み締め下がる騎士を横目で見つつ、ドベデス王に向き直る。
「あまり調子に乗ると後悔するぞ?」
引き攣りつつも唇だけで笑ってみせるドベデス王。
そんな脅し文句に怯むことなく応える鱒太。
「先ずは謝罪だろう。調子に乗ってんのはお前だ」
この時右側後方の壁際にいた貴族から飛び出す者がいた。