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第10話

 そしてエグゾギアの内部から溢れ出てきたのは、それはまるで枯れ木のように痩せ細り朽ち果てた木乃伊! 人間の木乃伊であった!!


 ――これまでご苦労であった……!


 倒れ来るそれをザガンがしっかと抱き留める。その両腕で、全身で、朽ちてなお死せず戦い続けた真の大丈夫(ますらお)を抱擁する。その心まで!


 ザガンから零れた労いの言葉と一滴の涙が木乃伊へと落ちる。するとどうだろう、遂に役目を終えたのか木乃伊の全身がひび割れ崩れ始めた。やがてそれは塵となり、引き抜けた風に乗り自由の空へと舞い上がって――逝った。


 ぐすんとそれを見るバジラまでも涙ぐみ、鼻を啜った。

 そしてシュテンもまたエグゾギアの機能がなければ涙で溺れ死んでいたことであろう。それほどまでに涙していた。


「天晴れ! 何処までも天晴れである! ザガンよ、今こそ纏うのだ、そのエグゾギアを!! そして今一度相まみえようぞっ」


 堪らずと言った様子でシュテンがその拳を突き出し声高らかにザガンへと告げる。それを耳に、虚空を抱いていた両腕を解いたザガンが返す。


「応っ」


 ぐわりと展開していた装甲を閉ざした碧白のエグゾギアが跳び上がる! 宙で身を翻したそれは再び両腕両脚を広げ、五芒星をその身で描いたザガンの背後に着地!!

 エグゾギアが放つただならぬ気配を背に受け止めながら、血反吐の飛沫を上げ彼は込み上げる感情のままに叫ぶ――


 ――廻天! 碧羅白襖(ヘキラノシラアオ)!!


 ザガンが描く五芒星に沿うように手足をなげうったエグゾギアの全面が再展開! 内側より溢れ出した純白の輝きに照らされるザガンの五体をそれは抱くようにして包み込んだ!!


 ザガンの両腕を……


 ――碧!


 ザガンの両脚を……


 ――羅!!


 ザガンの胴体を……


 ――白!!!


 ザガンの頭部を……


 ――襖!!!!


 装甲と装甲を繋ぎ合わせる鍵が閉ざされ、バチバチと全身からそれは火花を散らした! 完全結合、完全密閉完了!!


 内部機構が装着者の遺伝子情報を読み取り認識! 肉体の傷を瞬く間に癒やし、特に重傷である腹部の穴には特性の粘液を付着させ凝固し止血。その脳に機能の全ての使用方法を伝送完了!!


 全機能の正常起動及び可動を確認後、装甲表面を碧の精力が這い回り動力の伝達を完了させる! そして二つの双眸に眼光が灯り、今こそ起動完了!!


「……鎧着完了!」


 ――碧羅白襖(エグゾギア)坐岩(ザガン)!!

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