美女と野獣
最終回、ちょっと長めです
◯プロローグ
むかしのどかな王国に、クソワガママなイケメン王子様がおりました。
その美貌で城の女をやりたい放題した挙句、趣味のジャグリングを見せつけて遊んでおりました
ある雨の日でございます。
しわしわババアが城門をたたき「一晩とめてくだされ」と、叫んでおります。
王子様はジャグリングしながら、ババアを見ます。
ババアのムキムキ筋肉、逆立ち髪、そしてやたら高い身長を、女としてありえないとボロクソののしり追い返そうと──
「んだとゴラァ!」
ババア、ブチ切れて、発光!
変身ッ! 金髪女神ッ! 絶世の美少女!
めちゃくちゃタイプの女の子ッ!
王子様はボールを落として大混乱ッ!?
美女がマッチョ? マッチョが美女?
金髪女神は城に超強力な呪いをかけて、王子様を毛むくじゃらの野獣の姿へと、変えてしまったのです。
呪いを解くには毎日の筋トレと、愛するもののキスが必要なのです。
長い年月がたち、王子様はすっかり希望を失ってしまいました。いったい誰が、こんな野獣を愛してくれるのでしょうか……
◯フランスの草原
美女「マッチョォォォォォ!!!
うおお、うおおおお、うおおおおおお!!!」
ああっと〜、美女が飛び出した〜ッ!
草が割れる〜、村へとダッシュだー!
草かさかさ
マッチョくん「今日もお美しい」うっとり
ランナーくん「ほらさっさと追いかけるよ」
こそこそ尾行
─────────
ダンベル屋
─────────
美女「ボンジュール!」
店主「ボンジュール!」
美女「新しいダンベルは?」
店主「まだだよ。90kgで我慢しな」
美女「ええー」
店主「無茶言いなさんな。600kgはえげつない」
──────────
プロテイン屋
──────────
美女「ボンジュール!」
店主「ボンジュール!」
美女「新しい味は?」
店主「まだだよ、ミルクとタマゴの2種類さ」
美女「まあいいわ。筋肉はつくもの」ぐびぐび
店主「残念、ここらにゃニワトリと羊ばかりさ」
────────
本屋
────────
美女「ボンジュール!」
店主「ボンジュール!」
美女「筋肉小説」
店主「ダメじゃ。行商人もお手上げじゃ」
美女「ええー。転生したらマッチョな少女
魔法世界で筋トレを重ねて怪力無双、
▼
美女「魔王たちをワンパンで粉砕して、それから
世界中の美少女たちをてごめにするのよ」
店主「それはニッチが過ぎるぞ」
美女は去る。暴風を巻き起こしながら。
マッチョくん、にょきっと登場
マッチョくん「今日もあの娘は絶好調、
ますます欲しく なってきた。
▼
マッチョくん「筋肉の趣味がわかるのは、村では
彼女、ただ一人。よーし今日こそ結婚だー!」
ランナーくん「うははは、100連敗中」
マッチョくん「うるさい」ボコ
美女が走る、朝日がキラリ
後を走る二人組、朝日がギラギラ
◯小高い丘
草原に美女、とても素早い腹筋運動中。
美女「シケてるわ。こんな田舎、
世界一のマッチョ女は、夢のまた夢
だけど一応ダンベルと、プロテインはあるの」
草にねそべり、腹筋ッ!
ブイィィィィィン♪
超高速、残像がみえるッ!
草かさかさ
マッチョくん登場
マッチョくん「ハッハァ〜 見てくれよこの、
胸毛の生えた大胸筋ッ!」
美女「おはようマッチョ、今日も立派な巨乳だね」
マッチョくん「腕もデカくなった!」モリモリ
美女「発酵したパン生地みたいに膨らむね」
マッチョくん「背中もッ、増量ッ!」
美女「森のオオカミが飛び出してきそう」
マッチョくん「そして結婚しよう!」
美女「だーめ」
マッチョくん「ぐわぁぁぁ」
ランナーくん「ア、アニキー」
草をごろごろ
マッチョくん「フラれたァー、101回目だァー」
ランナーくん「アニキーしっかりしておくれー」
マッチョくん「寝ながらセリフ考えたのにー、
うおおおおおー」岩粉砕
(しばらく馬鹿騒ぎ)
美女「いつも言ってるでしょ。私の王子様は、
人外クラスのモンスターだって
結婚したいのなら、力尽くでどーぞ」
マッチョくん「くそー、筋肉が足りないッ!
来月こそ、サプライズしてやるからなー」
ランナーくん「覚えてろよー」
美女「はいはーい」
二人、森へダッシュ
おや、空にグレーの雲が……
美女「あいつら、傘も持たずに……まあいいか」
◯雨の森・ぬかるみの道
☔️ざぁぁぁぁーーー☔️
マッチョくん、ランナーくん、ジョギング中
泥水がはねる。
マッチョくん「しまったぁ! びちょぬれ」
ランナーくん「風邪ひくよぉ、道に迷ったよぉ
雨宿りしたいなぁ」
マッチョくん「それもそうだな。靴が水吸って
気持ち悪いぞ」
ランナーくん「木ばっかり、小屋なんてないよ」
マッチョくん「うーん、あッー! 城だァー」
急に空を指差すマッチョ
ランナーくん「え、どこどこ」
マッチョくん「行くぞー」
走り出すマッチョ
ランナーくん「ちょっとぉー」
狼「ガオー」「ガオガオ」
マッチョくん「えーいうっとおしい」ぺちん
◯野獣の城・門の前
⚡️ビシャーン⚡️
そびえる城、魔王城のごとし。
マッチョくん「やっと雨宿りできるぞ」
ランナーくん「待って待って待って
いかにもな危険地帯だよ、地雷源だよ」ぎゅ
マッチョくんに抱きついてみるが、
逆に引きずられる。ずるずるずる
マッチョくん「はっはっはー、
筋肉があれば、なーんでもできるッ
おじゃましまーす」
ドアばーん!
マッチョ×100
一斉にこっち見た!
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ「うおおおおおおお!!」
マッチョ婦人「うおおおおおおお!!」
二人「「うえええええ??!??!?」」
抱き合っでおびえる!
マッチョの群れ、迫るッ!
迫るッ 迫るッ 迫るぅぅぅッ!
マッチョ「お客様ァーーッ!!」
マッチョ「ようこそキャッスルジムへ」
マッチョ「歓迎するマッチョ」
マッチョ「腕がなるぜー」
おしよせるマッチョ
ランナーくん「え? え? どういうこと?
理屈は分かるけど、理性でわかんなーい?」
マッチョくん「何を言っている、喜べッ!
マッチョが歓迎しているぞッ! うわーい!」
両手をあげるマッチョ
マッチョ「ダンベルあるよ、可変式!」
マッチョ婦人「プロテイン、よりどりみどり!」☕︎
マッチョ「図書館もあるッ!」
マッチョ「ほら見て、この広い空間」
マッチョ「なーんでもあるよ」
キラキラひかるジム
マッチョくん「すごいッ! すごいッ!
すごすぎる〜ッ!!」
すごいマッチョ
ランナーくん「ああもうダメだ、絶対あぶない
俺は村に帰らせてもらうからなッ!」
回れ右ッ!
前傾姿勢で猛ダッシュ!
橋を渡って森へと消えた……
マッチョくん「なんだ意気地のないやつめ」
マッチョ婦人「あら残念」
マッチョ「ようこそ」
マッチョ「ようこそ」
マッチョ「キャッスルジムへ」
マッチョ「おためし無料!」
マッチョくん「歓迎ありがとー!」
マッチョたち「「「どういたしましてー」」」
マッチョ婦人「お茶をどうぞ」
マッチョくん「うまいっ!」
みんな「「「「ワハハハハ〜」」」」
ブツッ 暗転
マッチョくん「な、ななななんだッ!?」オロオロ
野獣の声「グオオオオオオオオォォォォォ!!!」
マッチョくん「うわぁぁぁ!??」
野獣、登場ッ!
ジャグリング中
身長3メートルッ!
野獣の声「何者だ」超低いボイス
マッチョくん「マッチョだ」
野獣の声「何をしに来た」
マッチョくん「筋トレ」
野獣の声「ここで筋トレをしてはならぬ!」
マッチョくん「なんでだよ!」
野獣の声「マッチョは嫌いだッ! そしてここは
俺様の城だッ! 不法侵入だッ!
出て行け、この城から、、、(深呼吸)
野獣「でぇーてぇーいぃーけぇ〜〜!」
咆哮、そして
ダンベル投げッ!!
豪速球、時速180キロ!
マッチョくん「危なッ! ダンベル投げとは
マッチョの風上にもおけんッ、よーし」
ファイティングポーズ!
野獣はジャグリングの玉を追加!
マッチョの戦いが今、幕を開けたァー!
◯雨の森
野獣の声「グオオオオオオオオォォォォォ!!!」
ドガァァァァァン!
ランナーくん「ヒィッ! やっぱりヤバいよ」
ランナーくんは、長距離ランナー、
時速20キロ、一定のペースで、
村へと帰りつきました。
◯村・美女の家
ふっふふ〜ん、美女の鼻歌。
木の床、雑誌とタオルが散乱ッ!
そして中央、半裸の美女が……
美女「すぅ、ハーッハハハハハハハハハー」
謎ステップだッ!
おそろしい速さッ!
残像、広がるッ!
家中残像まみれッ!
美女「筋トレ筋トレ筋トレ〜〜〜
負荷が足りないなら速度で補うまでよォォォ
すーはーすーはー」ブンブンブンブン
扉ガチャ
ランナーくん「大変だー 大変だー
マッチョのアニキが のわぁぁあ!?」ドゴォ
(ぶつかった)
美女「あ、ごめーん!」
ランナーくん、気絶中、
ゆさゆさ
ガバッと起床!
そして説明
美女「ワァオ、ファンタスティック!」
ランナーくん「え??」
美女「ダンベル、プロテイン、強いラスボス!
行くよ行くよ、今すぐ行くよ! HUUUUUU」
走るッ! 風のようにッ!
ばひゅーーーーん
ランナーくん「え、えええ……どうしよう」
◯野獣の城・ロビー
マッチョ「大変だー」
マッチョ「ご主人様が御乱心だー」
美女「ボンジュール」
マッチョ「んん? マッチョだ」
マッチョ「ママー、マッチョだよ」
マッチョ婦人「あら待って、今取り込み中なの」
美女「わかった、秒で鎮圧するね」ブゥン
消えたッ!
◯城・2階の廊下
ダンベルが舞う!
壁が壊れる 石像が砕ける。
マッチョくん、必死に避けて、ローリング
野獣もダッシュ、マッチョもダッシュ!
野獣「グルァァァ、くたばれ筋肉ダルマめ」
野獣走る、ダンベルジャグリング中。
豪速球を連打するッ!
マッチョくん「だめだッ、足がもたないッ」
反復横跳びで、回避!
だが少しずつ
追い詰められるッ!
壁際ッ!
野獣「しねぃ!」
マッチョくん「スキありッ!」パンチ!
不意うちッ! アッパー! 顎ヒット!
しかし硬いッ、ビクともしないぞッ!
マッチョ腕プルプル……
野獣「その程度か」
マッチョくん「……まるでヒマヤラ山脈を、
一点集中したような顎…勝てるわけがないよ」
マッチョくん、悟って、膝をつく。
窓から光、腹筋が明らかにッ!!
凶悪にうねるグレネードボム!!
そして、
怖い顔
野獣「見たな 死ぬがよい」ガシっ
マッチョくん「うわぁあああ」
野獣、振りかぶるッ。
マッチョを投げ──
壁ドガシャーンァァァァァん
美女、派手に登場
美女「ダンベルを、投げるなァーッ!!!」
野獣「誰だッ」
美女「くらえダンベルの怒りッ」腹パン
野獣「ぐふっ」
ワンパンで沈む。
暗転、目の前が真っ暗になった。
……
美女の声「腹筋すごーい! なにこの野獣♪」
◯野獣の城・寝室・ベッドの上
野獣「うっ、ここは?」全裸
美女「うふ、うふ、うふふふふ〜♪
王子様、腹筋、私の王子様、すりすり
腹筋だいこんおろし、あたし擦り下ろされちゃう❤︎」
野獣「うわあああぁぁぁぁぁ、なんだこれッ!」
美女、筋肉にメロメロ
野獣、ドン引き
野獣「やめろ、マッチョは嫌いだ」
美女「口ではそう言っても腹筋は──」ピクピク
野獣「うひゃひゃひゃひゃ」
どうしてこうなったッ?
どうしてこうなったァァァッ!?
↓ひそひそ声
マッチョ「逃げるなご主人様」
マッチョ「受け入れて、カップル成立だよ」
マッチョ「真実の愛はよ」
マッチョ「はよはよはよ」
マッチョ「ママー、真実の愛ってなに?」
マッチョ婦人「大きくなったらね」ちゅっ
◯朝食のテーブル
美女「うふふ〜」もみもみ
野獣「おいやめろ、触るな」顔面パンチ
美女「うふふふ」にこにこ
野獣「な、なんだよ気持ちが悪い」
そして飯を食う
美女「」バクバクニコニコ
野獣「」もぐもぐ不機嫌
美女「っしゃー、筋トレじゃー!」ダッシュ
野獣「ふんっ」ダンベルジャグリング
こうして、奇妙な暮らしが始まった。
美女「ふぉぉぉ! トレッドミルだよ!
マシン完備! プロテインも300種類!
図書館も、広ーい! まるで魔法みたーい」
マッチョ「ようこそキャッスルジムへー」
マッチョ「喜んでくれる、夢みたい」
マッチョ「ようやくお客様、掃除した甲斐が…」
美女「ここは素敵なパラダイス」
マッチョ「「「ようこそ素敵なお客様」」」
マッチョ婦人「紅茶をどうぞ」
美女「すぅ……ソイプロテイン紅茶味!」
マッチョ婦人「味が分かるの!」ウウッ
美女「分かるよ!」
「「うううおおおおおおおーーーーー」」
「「「「「HAHAHAHAHA〜」」」」」
野獣「はっ、おめでたいら奴だ。……いいな、
……みんな楽しそうにして」
美女「野獣ー、筋トレしよー」
野獣「やだね」
美女「じゃあマッスルポーズ」
マッスルポーズ講座、開始
美女「はいポーズとってー」
野獣「触るな」
美女「腕はこう、はい力んで」
野獣「いやだ」
美女「強情だな」グギ
野獣「あたた」
美女「ナイス野獣!
「肩メロンパン
「上腕二頭筋ピレネー山脈
「胸がココナッツみたい
「腹筋でマカロン焼けそう
「背中にクリスマスケーキが宿ってる
「脚がシンデレラ城
野獣「なんだその、奇妙なセリフはッ……」
美女「ほらもっと魅せて、引き締めて!」ワキワキ
野獣「……ふん、あっち行け」ぷい
美女「こちょこちょ」
野獣「ちょやめ、あははは、あーははははは」
こうして3日くらい過ぎ去った
◯雨の森・泥のぬかるみ
マッチョくん、走る
泥の一本道、オオカミの死体が並ぶ
マッチョくん「ダメだダメだ、こんなんじゃ
野獣の骨の一本も、砕けやしない、勝てやしない」
と、グーパン。
オオカミ吹っ飛ぶ。死体の山が積み上がる。
ここでババア登場、死体の山から
ババア「ヘイそこのマッチョ」
マッチョくん「なんだいマッチョ」
と振り向く ババアの顔!
ババア「ずいぶん荒れてるね、マッチョ
アタシでよければ 話を聞こうじゃないか」
マッチョくん「彼女が俺を捨てて、浮気したんだ!
思い出しただけで、腹が立つッ!」ムキー
ババア「イーッヒッヒッヒ」ジャラッ ジャラッ
右手に錠剤、チラつかせる。
マッチョくん「え、それはまさか、巷でウワサの
マッスルサプリメントッ!」
ババア「その通りさ」
マッチョくん「ドーピングじゃないよな」
ババア「筋肉の成長促進薬さ」
マッチョくん「そうか……んん、くれ!
その薬、バケツいっぱいおくれ!」
ババア「ヒッヒッヒ、あいよー」ジャラジャラ
マッチョくん「いえーい、ありがと……あれ?」
ヒュー…
魔女はもういない。
ランナーくん「おーい、いたいた。ん、なにそれ」
マッチョくん「筋肉の薬だ」
と、しかめっ面をするのであった。
◯玉座の間・フカフカの玉座
野獣、ジャグリング中
野獣「よくわからぬが、俺様は好かれている
だけど彼女は生理的に無理ッ!
せめてもう少し、細身だったらイケるのに」
マッチョ「よっ、大腿四頭筋が歩いてるッ!」
マッチョ「見違えるほどデカくなりましたな」
野獣「うるさい! どっか行けマッチョ」デシデシ
と、じひびきを起こす
野獣「彼女、顔はいい。悪い気はしない。
しかし乱暴で、肉肌がゴリゴリ、強すぎる
俺様には、ちょっと身にあまる」
マッチョ夫人「あんな一途な女の子、
他にはいませんよ。内面を見るのです」
マッチョ「それで、キスはどうなったの?」
野獣「知らぬ! 俺様に指し図するな!」ドスドスバタン
と、部屋にこもってまた、
一人ジャグリング。
野獣「はぁ、ダメだ、あの魔女の、雄叫びが、
耳にこびりついてやがる……くそッ!」
ダンベルを投げつける。ガシャーン
窓ガラス、飛散
野獣「……ダメダメダメだ、こんなんじゃ、
心の臓まで毛むくじゃら、ダメ人間だ、
勇気を出せ。王子様だろ。やれる、やれるんだ!」
と、目が鋭くなる。
立ち上がる。
ドアを強く押す。バタン
◯城・バルコニー
美女、野獣、向かい合う。
ジャグリングは自重
野獣「おい」
美女「なあに?」
野獣「あー…えーと…」
美女「この本のこと?『婚約破棄されてギロチン処刑された悪役令嬢は筋肉パワーで華麗に復活して筋肉革命を巻きおこしますっ!』」
野獣「それはどうでもいい。えっと、その……」
美女「んふふ、もしかして、ちゅーしたいの?」
野獣「んなっ、誰がおまえなんかと」
美女「いいよー」
唇、急接近
野獣「ちょっと待て待て やっぱり止め──」
美女「うっさいヘタレ」ぶちゅー
野獣「んっ、んんん〜〜〜❤︎」
ちゅ〜〜〜〜〜〜〜〜❤︎
野獣、ヘナヘナ、腰が抜けてしまう。
目がとろん、ふにゃり
美女「んふふ、ごちそうさまでした〜」
野獣「はあ、はあ、はあ、なななな、なんだ今の
知らない、あんなキス知らないうわああああ」
ジタバタ ジタバタ
野獣「……それより呪いッ が……あれ?」
美女「どったの?」
野獣、手足をさする。
毛むくじゃらのまんま。
野獣「そんな、真実の愛で、呪いが解けるはず…」
美女「ん、真実の愛? なにそれプロテイン?
私の愛はね、【筋肉の愛】だよ」ムキッ
野獣「な、ななな、ナンダッテー!」
マッチョたち「「「ナンダッテー!!!」」」ガタッ
まさか美女、愛しているのは、筋肉だけなのかッ!?
これはひどいぞッ!!
野獣「ふざけるなッ! 肉体目当てだったのかッ
最低だッ、見損なったぞー!!!!!」
美女「は? アンタこそ キスのとき
他の女のこと、考えてたでしょ。わかるよ」
野獣「なっ、今更そんな女なんて、ウッ」
ババアのトラウマ
野獣「うわああああああ」逃げた
(10分後)
野獣「最低だ、俺」ズーン
ベッドで自己嫌悪。ちーん
◯村・酒場
マッチョくん「彼女が野獣にさらわれたッ!」
村人たち「「「ナンダッテー!」」」
村人「急にいなくなったと思ったら」
村人「最近見ないから、心配してたのよー」
村人「助けなきゃ」
村人「でもどうやって」
マッチョくん「筋肉だッ!」ジャラジャラ
錠剤の山ッ!
みんな手を伸ばす! ゴキュ
村人「うおおおおおおおおお」ムキムキ
村人「パワーが、あふれるー」ムキムキ
村人「素晴らしきマッソー!」ムキムキ
マッチョの群れ、走り出すッ!
さあ、全面戦争だッ!
◯野獣の城・野獣の部屋
野獣、ベッドでまるくなる。
「こわいよー」「真実の愛」
「うーうーうー」「わからん」「やだー」
コンコンコン、音がする
美女「おーい野獣、いいこと思いついたよー」コンコン
野獣「うー」
美女「もしもしー」コンコンコン
野獣「放っておいてくれ」
美女「ウルァァァァァッ!!!」ドゴォォォォン
ドア粉砕
野獣「ヒッ!?」ビクン
美女「いーつまでウジウジしてやがる!」ガシッ
美女、野獣の胸ぐらを掴んで、真上へブンッ
天井、粉砕! 大空へッ!
野獣「ぐわゃあああああああ まーわーるー
城がちっちゃくなるぅぅゥゥ〜 うわぁぁぁ」
雲へズボッ。
……
ボズッと落下。
野獣「ぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!
ぐわゃゃーーーー、じぬー、じぬぅぅぅぅぅ」
城のてっぺん目掛けて顔面ダイブか!?
そこへ美女、お姫様だっこ。
美女「よっと。気が紛れたかい?」
野獣「………………ごあああああ、バカバカバカ
死ぬ、じぬところだったんだぞッ、バカ!」
と、顔まっか。
美女「あはははは、ごめんなさい、つい」
野獣「つい、じゃないッ、愚か者、バカバカバーカ」
と、ジタバタ、バカバカコール。
美女「ヨシヨシ、スッキリしたね?」
野獣「おい降ろせ」
美女「ところで」
野獣「ん?」
美女「真実の愛、考えてみたんだ」
野獣「ふん、どうせ俺様には愛が足りないと──」
美女「ババアをボコる」
野獣「んん? なぜだッ なぜそうなる」
美女「野獣の呪いをかけたのは?」
野獣「ババア」
美女「野獣にトラウマ植え付けたのは?」
野獣「ババア」
美女「全ての元凶は?」
野獣「あの筋肉ババアだッ!」
美女「そうだッ! 直接ボコればいいッ!
不死の薬でも、強奪すれば万々歳だッ!
愛など要らぬ! 筋肉だッ!」
野獣「それでいいのか」
美女「いいさ、アンタのために筋肉を奮ってやる
野獣「脳筋だろおまえ」
美女「脳筋は褒め言葉、行ってきまーす」
野獣「んが、もう行くのか?」
美女、空を走って消えていく。
美女「帰ってくるまでくたばるなよー」
野獣「うるせえバカ」
◯雨の森
村人はマッチョ、ズンズン走るッ!
集団で走る、木を薙ぎ倒すッ!
村人「ハハハハハー」
村人「イヤッホゥ!」
村人「パワーがあふれるー!」
と、目が血走っている。
マッチョくん「さあさあ城はもうすぐだッ!」
川ぞい、階段、泥の道、
切り立ったガケ、垂直落下
オオカミ倒して、一本道
大きなおおきな城の門
マッチョ「ぶっ壊せ!」
どーん
◯野獣の城・野獣の部屋
マッチョ婦人「ご主人様、侵略者です」
門が攻撃されています」
どーん
野獣「なんだとッ、このクソ大事な時期に」
どーん
マッチョ婦人「マッチョの軍勢です。総勢800」
どーん
野獣「さてはあのマッチョ野郎だな
潰せ、完膚なきまで叩き潰せッ!」
マッチョ婦人「イエッサー!」
ルンルルん、スキップだ
◯キノコの家・外観
美女「たのもー」家どーん
夜空 キランッ✨
ババア「随分と乱暴な客人だねぇ」
美女「森の魔女、故あってキサマの薬を頂戴する
愛する未来の夫のために、渡してもらおう」
ババア「あの時のクズ王子の嫁だね。小娘が……
……粋がるんじゃないよ」ゴクリ
と、錠剤を飲む
ゴゴゴゴゴゴゴゴ 地響きがする
筋肉が、肥大化するッ!
服が、破れ去るッ!
ついでに若返る。
そしてっ
巨大化、10メートルッ!
美女「デカいッ! あんなの見たことないよ」
金髪ババア「教えてあげよう、井の中の蛙、
世界の広さというものを! 覚悟しな、
砕かれて、薬の素材になる覚悟を!」
美女「望むところだ」
二人「「うおおおおおおおお!!!!!」」
大小マッチョがぶつかりあうッ!
森の木々が、次々と倒れていくッ!
勝つのはどっちだ?
美女の勇気が野獣を救うと信じて
◯野獣の城・ロビー
マッチョの大乱闘!
シャンデリアの下、叫び声!
マッチョ「あああああああああ」
マッチョ「うおおおおおおおお」
マッチョ「おおおおおおりゃあ」
>>>マッチョパーンチ!
>>>マッチョ天井に刺さる
>>>マッチョキーック!
>>>マッチョ壁に激突
>>>マッチョ首締め〜!
>>>マッチョ泡吹いて気絶
マッチョ「ウルァァァァァ!」
マッチョ「てやぁぁぁっっ!」
マッチョ「せいやっ」
マッチョ「わーははは」
マッチョ婦人「あーあああーーーー」
血湧き肉躍る戦い、ぴょんぴょんぴょん
◯野獣の城・廊下
レッドカーペットを歩くマッチョ
マッチョくん「野獣め、どこに隠れている
出てこい、臆病者め」
野獣「ここにいるぞ」
鉄球飛来ッ! ドゴォ
マッチョくん「痛っ、痛ーッ!!」
野獣「多少パワーを増したようだが、まだ俺様の
敵ではない。逆賊め、今度は命がないと思え」
と、鉄球でジャグリング。
マッチョくん「チッ、薬が足りない」ボリボリボリ
ムキムキムキー! 筋肉肥大化!
巨大化ッ! 野獣と同格!
マッチョくん「今は命を燃やすとき!
未来の輝き、この手で掴むためッ!」
野獣「……外道め、受けて立とう」
鉄球、ひらりと回避、連続パンチ、ひざげり、一旦離れて、インファイト
マッチョくん「オラオラオラオラ」
野獣「あたあたあたあたあたあた」
互いに傷が増えていく。
血が飛びちる
◯野獣の城・キッチン
小さなマッチョが震えている。
マッチョ「ふええ」プルプル
マッチョ「ぐへへ」
マッチョ「追い詰めたぜ」
マッチョ「タップリ可愛がってやる」
マッチョ「助けてママー」
マッチョ婦人「あーあーたたたたたーあたー」
圧倒的、百烈拳!
マッチョ「べぶ」
マッチョ「ぜべば」
マッチョ「るびゃー」
爆発四散
マッチョ「ママーありがとー」ちゅっ
マッチョ婦人「無事でよかったわ」ちゅっ
◯野獣の城・屋上
野獣「オラオラオラァァァァァ」ドカドカドカ
マッチョくん「オラオラオラッ」バキバキバキ
野獣「いい加減、諦めろッ!」
マッチョくん「嫌だー、愛のパワー!」
>>>メガトンマッチョパンチ!
>>>野獣、みぞおちヒット
野獣「ぐはッッ、バカなっ」
マッチョくん「これが愛の力、燃え上がる命と意志」
と、筋肉大炎上!
野獣「ッ! まさかッ、まさかそれがッ
真実の愛だというのか、、、ウッ、胸が……」
ドクンッ!
呪いのタイムリミットである。
マッチョくん「スキありッ」炎の腹パン
野獣「ぐわあああああああ」
野獣、ぶっ倒れる
マッチョくん「やったか?」
野獣「……」ピクリ
◯回想
美女「帰ってくるまでくたばるなよー」
野獣「うるせえバカ」
(回想終わり)
野獣「グオオオオオオオオ!」
マッチョくん「まだそんなパワーが」
野獣「負けられぬ! 弱音は吐かぬ!
男の意地だ。命をはろう。たとえ虚勢でも、
大地に触れるは、二本の足だけッ!」
マッチョくん「俺だって、もう彼女しかいないッ
他の女にいくら筋肉を語ろうと、
豚に真珠、猫に小判、まるで手応を感じない」
野獣「意見が違えば、ただ一つ」
マッチョくん「殴り合いにて、雌雄を決しよう」
「「オラオラオラオラオラオラオラオラ」」
◯森
森に巨大クレーターが、複数。
美女、右手と左眼がない。
そして筋肉ババアの喉から声が、
ババア「限界を超え、勝利をつかむ、
その心、まさしく筋肉の愛」
美女「はあ、はあ、はあ、勝ったよ。
薬はいただく。案内してもらおう」
ババア「いいよ、不死の薬はある、持っていけ
だがお主の選択は、諸刃の刃、聞け、今まさに
愛する者たちが、傷つき倒れようとしている」
美女「なんだって!」
◯野獣の城・屋根
マッチョくん、パンチを繰り返す
野獣、くいしばる、不動の山のごとし
マッチョくん「オラオラオラァ!」
野獣「……」
マッチョくん「くたばれ」
野獣「……」
マッチョくん「なんとか言えー」
野獣「……ここで、倒れては、いけない。
帰ってくるまで、くたばるな。
帰ってくるまで、くたばるな。」
マッチョくん「さっきから、そればっかだな
いいか、キサマはもう、肉離れしている
彼女と筋トレすることは、できないッ」
野獣「帰ってくるまで、帰ってくるまで」
マッチョくん「返事をする元気もなくなったか
それじゃあ、くたばれーーーーー」パンチ
美女「そこまでよ」ビシッ
美女、足を上げる。指先でパンチを止める。
マッチョくん「あ、あああ、あ、あ、」ガクガク
美女「私のために、争うな」ズシャァ
右足一閃!
マッチョくん、首が飛ぶ。
美女「おい野獣、ババアをぶん殴ったぞ
もう怯えなくていいんだ」
野獣「あぁ、俺様、くたばってない、やったぞ」
美女「ああよくやった。それからほら、
不死の薬だ、飲め、たぶん治るぞ」
野獣「ありがとう、眠いんだ。おやすみ」
美女「野獣? 野獣ぅぅぅぅぅ!!!!!!!」
野獣、死す
◯冥界
冥界神ハデス「あーだる。24時間365日、
働きっぱなし。ん、マッチョの魂が大量……」
次元の裂け目
美女、登場
美女「ウルァァァァァ! その魂よこせー」
冥界神ハデス「なに? ぬわああああああ」
ドゴォォォォン
◯野獣の城・ダンスホール
マッスルダンス!
筋肉の舞い!
美女はマッチョ
野獣もマッチョ
ムキムキ ムキムキ
ちゅゅ❤︎
二人は幸せなキスをして、マッスルポーズ
終了!
終了! ご愛読ありがとうございましたッ!




