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習作2(警察官、ホログラム、タピオカミルクティー)

作者: ひじき

その道20年のベテランの銀行員にもなってくると、偽札を見ずともその手触りだけで見抜くことができるようになるという。男はその類の人種だった。就職から20年、その道のベテラン周りからは職人などともいわれているが、実際のところ窓口への勤続年数が長いだけなのである。同期はどんどん出世をしていったが、男はいつまでたっても窓口勤務。口下手で人が良いため絵に描いたような出世コースとは縁のない生活を送っていたのだ。

 本日もまた、自分のものでない紙幣を扱うのだ。極まれに指を湿らせて紙幣を数える際に違和感を感じることがある。そういう場合のほとんどがあまりよくないことが起こるのである。とある日は傘を電車野中に忘れ、またある日には自販機で買ったコーヒーをとらずに去ってしまった。今日はホログラム部分にやけに指が引っかかった気がした。

 案の定、事件は起きる。銀行の前に無造作に打ち捨てられたアタッシェケースを見つけてしまったのである。心あたりはある。ATMを待っている際にイライラした様子だった若い男性のものと思われた。彼はベンチャー企業といってはいたが何かと胡散臭い雰囲気であった。その時に、警察官が自動扉の向こうからやってくるのが見えた。今朝の始業時に振り込め詐欺に関連した用事で近所の派出所から警察官がやってくる。そんな話があったことを思いだす。彼が言うことには昨日逮捕された大規模な詐欺グループの引き出し役が併設のATMを利用している可能性があるとのこと。渡りに船だと思いアタッシェケースについて話す。警察官の立ち合いの下で事件の可能性があればいくら私物といっても開封してよいであろう。責任を押し付ける体のいい形になった訳だ。男は自分の予知のようなものが的中し内心ワクワクしていた。

 警察官がケースを開ける。男も警察官も目を疑ったその中に入っていたのは、寸分たがわぬ"タピオカミルクティー"であった。






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