リガティアさんから返事が来たよ!
リガティアから返事が来た。
彼女は最近ギルドを脱退した。
それも誰もが語り継ぐほどの華々しくも格好の良い辞め方だ。
困っている老人の為にギルドを切り捨て、だが、その老人が伝説の賢者であったというおまけまでつくのだから彼女には凄いの一言しかない。
助けた狼がこのルーパート・グリフォン様という過去だってあるじゃないか。
俺はそこでがっくりと落ち込んだ。
俺は失敗したのだ。
アイシュ・アイア達には深手を負わせたが、ただの殺人狂でしかなかったノッド・レイリーがアイシュ・アイアによって不死身に近い肉体を持っていた事には気が付かなかったのである。
つまり、二人同時に息を止めねば同調している彼等は再生しあってしまうのだ。
「うふふふ。私の肉と内臓のいくつかを、ノッドの肉と内臓と取り換えっこしたのよ。私達はいつも一緒。私はいつだってノッドの肉体を守ってあげれる。」
「ハハハハ。俺だって愛しいアイシュを守ってやるさ。俺達は二人で幸せなんだよね。俺が切り刻んだブタの悲鳴はアイシュのディナーだ。」
「うふふ。私に肉を啄まれるブタの悲鳴こそ、ノッド、あなたの好物じゃ無いの。」
俺は召喚魔法で人を喰らう魔界の植物を呼び出したが、彼等の命を完全に握り潰す前に彼等はそこからするりと逃げてしまった。
だが、あの植物は狙った獲物を逃した事は無く、あの植物が彼等を追い続ける限り、彼等は今までのように時間をかけた殺しなど次々と出来ないはずだ。
それでも止めを刺せなかった俺は自分の不甲斐なさを呪うしかなく、そしてその鬱憤を癒してくれるだろう相手、俺の愛しのリガティアに手紙を出すという暴挙をするまで俺の心は追い詰められていた。
そして、返事が来ない事に鬱々と落ち込んで、毎日情けなくもギルド支店の自分専用レターケースを覗いては返事がない事に落ち込み、もう死んだ方が良いのか、また空の皿を咥えて公園をとぼとぼと歩き回った方が良いのかと思い詰めた頃、俺の元に返事が舞い戻ってきた、ということだ。
住所も書いていないのに、出したい相手には必ず手紙が届くという、リガティア特製魔法付きの封書である。
そうしてその中身を読んでの俺のため息だが、俺は彼女の本性も忘れていたと頭を抱えることになったのである。
彼女は魔女だ。
魔女でしかない。
「お手紙ありがとうございます。
あなたの住所どころかあなたのことがわからないので、
あなたの手紙からあなたのお住まいを手繰らせていただきました。
その時に新しい魔法を思いつく事が出来たの。
絶対に届くお手紙機能!
おかげで素敵なお友達が出来たのよ!
ありがとう、あなたのお陰ね!
それからトトですが、私はあの子の不在を悲しんでいませんので、そこは大丈夫ですから気になさらないでください。
お礼もいりません。
では、あなたにはいつも幸運を!」
俺は何度も読んで覚えている文面を頭の中で反復し、絶望という世界に意識をダイブさせるしかなかった。
トト、ああ、可哀想なトト。
そんなに可愛げが無い奴だったか?
犬は三日飼えば手放せなくなると言うではないか。
俺は犬以下だったのか?
俺は本気でトトに戻って公園をうろつきたい思いに駆られたが、次に彼女に見つかったら、きっと容赦なく自宅に追い返される事は明白だと涙を流した。
「どうしよう、俺。」