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食事

 犬と人間は食事は基本的に違う。


 大体は人間の残したものを犬に与えるだけであるが、やはり犬の飼い方を知らないリガティアは、自分と同じものを俺に与えた。

 その行為は崇高で優しさに満ち溢れているのかもしれないが、彼女は単に料理が下手でいつも作りすぎてしまうというだけである。


 しかし、彼女は自分で作ったものを自分で食べてもいるので、まずいが食べれないというものでもなく、もう少しだけ下ごしらえや味付けを工夫すれば美味しくなるだろうという希望だって見える料理でもある。


 俺が人間の姿であれば彼女に教えてあげられるものを!


 どうして、ハハハ、俺は狼の姿でいるのだろう。


 ……ハア、俺がリガティアの傍から離れられないからだ。


 ところがある日、リガティアは突然に料理に見ざめた。

 料理の本を手に入れる、という学習をどこでしたのか知らないが、彼女はレシピ通りに料理を作るという手順を手に入れたのだ。


 俺と同じスリーAランクのリガティアであるが、きっとレベルアップした彼女はそこに星マークだってついている筈だ。


 いや、ついていなくとも俺がスペシャルな星を付ける!


 だが、結果はランクダウンの黒星だった。


 ルバーブのパイは死肉が飛び出たミートパイのようであり、ワイン煮のはずのシチューは妙に甘ったるいヘドロのようになっていた。


「ああ、何よこれは!いつもの方がおいしいってどういう事よ!もう!ハルメニアの嘘吐き!」


 俺はリガティアが半泣きで床に投げつけた料理レシピの本を覗き込み、俺はリガティアが料理が下手な理由を理解した。


 彼女はここまで、という限度を知らないのだ。


 この本には隠し味としてシチューに蜂蜜やチョコレートを入れるアドバイスも書いており、ルバーブに関してはそのまま焼くだけで良いから簡単に一品が増えると紹介しているばかりか、なんとそこはおまけのようにして作り方がとっても簡素に書いてある。


 これは上級者向けの本であり、料理初心者のリガティアが読むべきものでないと本の表紙をひっくり返すと、俺は自分が狼であって良かったと胸を撫で下ろすしかない。


 著者は俺の知らない女性だが、本のタイトルはルーパート・グリフォンさんの好物と簡単レシピを聞いてみました、だった。


 俺は外見だけは自慢できるものであり、美男子狂いと有名なハルメニアに拉致監禁されかけたこともあるのだ。


 つまり、俺の知らない所で俺が女性達に持て囃されている事で、ギルドが勝手に俺の名でつまらない本を出していたという事だ。

 俺は怒りのまま本を引き裂いてかみ砕いた。



 そして、傷心のリガティアが眠った後、俺は彼女の作った料理を持ってハルメニアの領地へとテレポートしていた。

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