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風呂場

 彼女は自分があの有名なリガティア・エレメンタインだとドレスを脱ぎながら俺に伝えた。


「幼い頃から大魔女よ。凄いでしょう。もう少ししたら大人の幻影を体に纏わなくて良くなるから楽になるわね。戦闘中に魔法が解けたらって考えると、最近はパーティを組むのも億劫なのよ。足手纏いは逆に要らないって感じ。」


 俺は彼女に対して思う事ばかりなので、とっても素直に犬座りをして、彼女が服を脱ぎながら俺に話しかける一言一句を漏らさず聞くことにしていた。


 それはもう、誰かが彼女の行動を止めようとするのならば喉笛に噛みついてやろうというくらい、俺は真剣に彼女を見守っていた。


 彼女は細く骨が浮き出すぎている所もあり、俺は彼女にもう少しご飯を食べさせたいと思ったが、彼女の小さな胸は形は良く、脂肪のない下腹部から脚にかけては小鹿のようで美しく可愛らしいと、眺めるうちに彼女はこのままでも良いと俺は考えを改めた。


 俺は堂々と覗き見をしているのだなと、自分を情けないと叱る良心もあったはずだが、良心は俺のものなので今は俺を咎める仕事をする気は無いようだ。


「さあ、お風呂場に行くわよ。」


 良心の消えた俺は久々の自由を謳歌し幸福に満たされた心のまま、意外と乱暴なリガティアに首根っこを掴まれて脱衣所から風呂桶のある所へと連れ込まれた。

 リガティアの家は俺の家と同じく、バルセイユ風の風呂場であるようだ。

 大き目どころか小型のプールのようなバスタブにはタイルの床に埋め込まれており、階段になった場所を降りて行って湯船につかるという様式だ。


 実は俺もバルセイユに行った時にこの風呂の形に憧れ、俺も自宅の風呂をこのように誂えたが、いかんせん湯舟を張るための湯を用意するのが大変だ。


「うふふ。素敵でしょう。私は自分の家をその時々で好きな場所に移動しているの。今は温泉が沢山出るバルキアね。突然廃墟になったから、いくらでもここのお湯が使い放題なのよ!」


 バルキアとはバルセイユの間隣となる国であるからして、バリセイユのように温泉に恵まれている場所である。

 そしてリガティアが自分の隠れ家を別空間に隠して移動させていると聞いて、俺はエレメンタインの魔力に恐れをなしていた。


 俺にはできない事だ。


 ただし、バルキアに風呂だけの隠れ家を作ってみるのも楽しいと考え、素晴らしいアイディアをくれたリガティアにキスをしようと上体をあげた。


わお!


 俺の鼻先は俺にお湯を掛けようとして屈んだリガティアの胸にダイブし、俺は自分の失敗に感謝しながら俺の目の前に迫った乳房の片方を舐めてしまった。


「きゃあ!」

「きゃいん。」


 俺の行為に驚いたリガティアが湯のたっぷり入ったタライを落とし、それがざばんがつんと俺の頭にぶち当たったのだ。


「もう!大丈夫?ほら、じっとして。これから石鹸を使ってごしごしするわよ。暴れて今度は目に石鹸が入っても知りませんよ。このスケベ犬!」


 今度はお湯だけがざっぱんと俺を襲った。

「くうん!」

 俺は彼女の侮辱に言い返せない身の上に嘆くどころか、物凄く良い思いが出来たと素直に彼女にごしごしと洗われることにした。

 彼女は乱暴でも心根がとても優しいと分かる洗い方だ。


 ああ、人間に戻れなくなったら俺はどうしよう。

 だが、今の俺の状態って物凄く幸せじゃないか?

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