俺は観念して溜息を吐いた
「あの、それで、トトのお墓はどこかしら。お菓子とお花を供えたいわ。」
「ありがとうございます。焼いて骨壺に入っていますが、まだ墓には埋めておりません。長い相棒で分身にも感じていましたから、私が死んだときに一緒に墓に入ろうかと。」
目の前の黒ローブで顔を隠したままの少女は唯一見えている口元を隠し、涙による嗚咽を俺から隠しきった。
俺はローブの下の彼女の全てを知っている。
銀灰色の美しい髪に青紫の透明な瞳、そして妖精のような華奢な肢体だが、つんと上を向いた乳首を持つ形の良い乳房に丸くてすべすべのお尻。
俺はそこでどうして逃げてしまったのだろうと、自分の浅はかさが情けないと両手で顔を覆った。
彼女から受けた真実の愛で元に戻ったと伝えて、彼女を騙す事も出来たではないか。
「まあ!お力を落としにならないで!」
「いいえ。俺が浅はかだった為に死んでしまった子ですから情けなくて。あなたに差し上げていたらあの子は長生きできたかもと後悔しきりです。」
「まあ、トトちゃんは本当に賢い子でしたもの。死んでしまったのはとても残念ですわ。でも、私はトトを頂く事は遠慮すると思います。だってあの子はちょっとエッチな犬でして、実は農場で羊を追う犬を捜している方もいましてね、そちらに譲る頃合いかもと考えておりましたの。」
俺は牛小屋に鎖でつながれて泣きわめく運命だったのか。
俺の視界は少し開けた気がする。
良かったな、俺は逃げておいて、と。
「ええと、あなたにトトの真実を告げられて良かったです。今後はお友達になって頂けませんか?」
「お友達?」
「ええ、お友達になって頂けるのならば、一緒にあなたと冒険ができるでしょう。回復魔法の使えないあなたと、攻撃魔法がほとんど使えない私、いい組み合わせだと思いませんか?」
「あら、どうしてあなたが私が回復魔法を使えないって知っているの!」
俺は失敗したと天を仰ぎ、とりあえず、トトの記憶からだと彼女に伝えた。
「あの子の記憶はあなたが全部見ることができるの?あの、ええと、私と一緒に暮らしていた時の事とか。」
俺は意気込んで答えていた。
俺は君を理解したうえで一生愛していけるという風に。
「はい。全て。」
リガティアは再び口元を覆って犬の俺の不在を嘆き、そして、俺が犬でなくて良かったと感謝するほどの心胆寒からしめる言葉を言い放った。
「あの助平な糞犬。生きていたらメテオでミンチにしていたのに!」
だが、とりあえず友人にはなれたようだし、彼女がフードを下ろして俺が見つめたかった彼女自身を見せて貰えたからそれでいいだろう。
俺は君に恋ができて幸せなんだ。




