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第78話 解放

 「右足を動かすときは、こうです」

 体の動きを俺に教えてくれるコグモ。

 

 「左足はこう」

 ゆっくりと動かして教えてくれるので、神経の信号の走り方が、実に分かりやすいい。

 

 「では、やってみてください」

 教師の様に、俺に課題を振ってくるコグモ。

 

 左右の足を動かしつつ、体重移動は、反射神経を使って……。

 「……こうか?」

 

 俺が見事に歩かせてみせると、コグモは「おぉ~」と、子どもらしい驚いた表情を見せてくれた。

 

 「これで満足したか?満足したなら、拘束を解いて欲しいんだが……」

 リミアに操作された事はあるのだろうから、そう珍しい事でもないだろうに、未だに、体を動かし、感覚を確認しているコグモに、お願いする。


 「……そうですね。このまま拘束していても、貴方が私の動かし方を覚えれば、いつでも逃げられてしますからね……。はい、解けました」

 そう言いながら、彼女は俺の拘束を解く。

 

 「やっとか……」

 日が陰り始めた頃、やっと俺は解放された。

 無理な体勢で縛られていた為、体の繊維に変な癖が付いている様な感覚がした。

 

 「ん~~~!」

 俺はそれを背伸びで伸ばしつつ、改めて、コグモの顔を見た。

 

 「これからどうするんだ?」

 俺の問いに、コグモは迷わず「まずは獲物を探しましょう」と、答えた。

 俺と話している間にも、色々考えていたのかもしれない。

 子どもっぽいのは、その見た目だけの様だ。

 

 「私は何故か、異常にお腹が減っています。家を探して放浪するよりも、食糧を確保し、余裕を生み出す事が先決と考えます」

 コグモに感心していた俺を、何も理解できずに、呆けているバカだと思ったのか、丁寧に説明してくれる。

 ……まぁ、確かに、理由までは、俺も考えなかったけどね……。

 

 それに、異常にお腹が減っているのは、多分、俺のせいだ。

 俺より小さい子から、黙って栄養を吸い取っている俺。なかなかにクズだ。

 ……でも、良い物を食べているのか、美味しい……。

 

 「……?どうかされましたか?」

 その幼い表情を傾げて質問してくる彼女。

 こう、改めて、立ち上がって彼女を見てみると、やはり小さい。その見上げる視線が、幼くて、可愛い。そして、俺は今、この子の……。

 

 「いや!何でもない!獲物探しだよな!頑張ろう!」

 俺は黒髪メイド服幼女から顔を逸らすと、感覚糸を一気に放出し、暗くなり始めた周囲を探索し始める。

 

 「お!あそこに、ゲジゲジが!」

 俺は巻き散らかした感知用の糸で、葉の裏に隠れていたゲジゲジを見つけ、コグモに報告する。

 

 「……貴方が捕まえれば良いじゃないですか」

 俺を見上げながら面倒くさそうに呟くコグモ。

 彼女の言う通りである。

 言う通りではあるのだが……。

 

 「いやぁ……!俺、今、お腹減ってなくてさ!しばらく何も食べないでも、大丈夫な体なんだ!」

 人間で言えば通じない言い訳だが、様々な種類の生物がいるこの世界だからだろうか?

 彼女は「そうですか。では、失礼して……」と、言うと、小蜘蛛達と共に、俺が教えたゲジゲジが隠れている場所へ向かって行った。

 

 「……ふぅ。お前から栄養を吸ってて、狩りもできないクズなんです。とは、流石に言えないよなぁ……」

 俺は、一人、沈みかける夕空に、ため息を吐いた。

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