表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/449

第113話

 「キャハハハッ!いっけぇ!ゴブリン!」

 河原に来ていた俺達。

 リミアはゴブリンの上に乗り、楽しそうに指示を出している。


 まぁ、糸で操っているという訳ではなく、ゴブリンも楽しそうにしているので、俺はそれを日陰から見守っていた。

 

 ウサギは日課だと言う水浴びをしている。

 夏だから、暑いと言うのもあるが、全身に毛が生えていると、汚れが付いたり、虫が付いたりで大変らしい。

 

 「シャァ……」

 俺の横では大ムカデが将棋の盤を見つめて、頭を悩ませていた。

 因みに相手はコトリ。そして、その盤はもう詰んでいるぞ、大ムカデよ。

 

 「……平和ですね」

 俺の横に腰かけていたコグモが、リミアたちを見つめながら、呟く。

 

 「平和だな……」

 俺も、それに落ち着いた声で答えた。

 

 「……お嬢様は、一体、どうされたのですか?」

 自然な雰囲気で話題を振ってくるコグモ。

 強く聞いてこない分、はぐらかすのも、何か違う気がした。

 

 「実はな……。俺が、お前を好きだって事が、バレた」

 俺が正直に答えると、コグモは特に焦る事なく「なるほど……」と、呟く。

 

 「それから、あいつがおかしくなっちまったんだ。……まぁ、今の方が良いし、多分、気まずくならない為の演技だと思うけどな」

 俺の言葉に、コグモは「そうですか……」と、相槌(あいづち)を打った。


 「………」

 静寂の中、川の流れる音と、遠くで、リミアたちのはしゃぐ声。

 心地よい風が頬を撫でる。

 ……このまま、コグモに寄り掛かっても、怒られないかな……。

 

 「……それだけ、ですか?」

 急にこちらを向いて、質問してくるコグモ。

 

 「そ、それだけって?」

 よこしまな事を考えていた俺は少し焦って答える。

 

 「お嬢様、他には何か、(おっしゃ)ってませんでしたか?」

 あ、焦った、その話か……。

 どうやら、まだその話題が続いていたらしい。

 

 「そうだな……。後は、おかしくなる寸前に、”なんで、私だって……”って、言っていた気がするな……」

 あれは、何だったのだろうか?

 俺をコグモに取られそうになった嫉妬だったのだろうか?


 ……全く。別に、好きな人ができたからって、子どもを捨てる訳が無いだろうに。

 いや、それが分かっているからこそ、子どもらしく振舞い始めたのかもしれないな。

 そう思うと、親として信頼されているようで、少し嬉しくなる。

 

 「そう、ですか……」

 しかし、俺の明るい思考とは真逆に、深刻そうな表情で呟くコグモ。

 

 「なんだ?何かやばい事でもあったのか?」

 コグモに詰め寄りながら、少し真剣に、問う俺。

 

 「い、いえ……。お嬢様がそれで良いと言うのであれば、今のままでも……」

 コグモにしては珍しく、はっきりとしない答えを返すと「私も遊んできます!」と言って、リミアたちの方に駆けて行ってしまった。

 

 「お嬢様~!ゴブリンさ~ん!待ってください~!」

 「捕まるな~!逃げろ~!」

 遠くで追いかけっこを始める3人。

 

 先程のコグモの態度は何か引っかかったが……。


 「まぁ、良いか」

 俺は、思考を放棄すると、ただ静かに、この居心地の良い空気に浸りこんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ