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第99話 選択肢拡張作戦

 「お前は、生活に余裕が出来たら何がしたいんだ?」

 ゴブリンの肩に乗って移動中。

 子どもっぽい発想を見せないコグモに、俺は訊ねた。

 

 「生活に余裕が出来たら、ですか……?それは、勿論!もっと訓練して、もっと、お嬢様の役に立てるように、鍛えます!それこそ、ルリ様の様にゴブリンを使役出来る様になれば、それだけで、出来る仕事が増えますしね!」

 迷いなく、元気に答えるコグモ。

 何が彼女をそうさせるのか。彼女は、それしか知らないのだろうか?

 

 「そうだなぁ……。確かに俺も生活に余裕が出てきたら、糸の修復に専念したいな。……でも、そう言うのじゃなくてさ、こう……。もっと、自分の為にしたい事とかないのか?美味しい物食べたり、楽しい事したり」

 何とか、彼女のしたい事を引き出したい俺は、話を続ける。

 

 「美味しい物ですか?毎日、美味しくて新鮮なお肉を食べてますし、お仕事は楽しいですよ?」

 不思議そうに小首を傾げるコグモ。

 

 「う、う~ん……」

 俺もコグモと同じように頭を捻った。

 どうすれば、彼女に自分の為だけの楽しさを教えられるだろうか。

 

 例えば料理だ。料理なら自炊していた俺でも作れる。それを振舞って、食のすばらしさを教えるか?

 後は、ゲームだ。俺の昨日教えたオセロ以外にも、沢山のゲームを教えて、遊ぶ楽しさを教える。

 他には、綺麗な石や花を集めてプレゼントするとか?

 俺の糸や、辺りの物で、工作する楽しさを教えるのも良いかもしれない。

 ゴブリンに物を教えるのも好きそうだったので、生物飼育何て言うのも……。

 

 「ど、どうしたんですか、ルリ様?私、何か気に食わない事でも言いましたか?」

 首を傾げ続ける俺を見て、(あわ)て始めるコグモ。

 虫である以上、実質まだ、生後1年程度だろうに、こんなに人に気を遣って……。

 本当に良い子だ……。

 

 「俺は絶対お前を幸せにしてやるからな!」

 こんな良い子が、楽しみを知らずに生きて行くなんて、あって良いはずが無い!

 俺は思わず、その体に抱きついた。

 

 「は、はぁ……。ありがとうございます……」

 状況が飲み込めないのか、(ほう)けた様に、胸に抱き着く俺を見つめるコグモ。

 胸に抱き着いたことに対する、いつもの罵声は飛んでこなかった。


 「そうと決まれば、今日の訓練は、趣味探し(けん)、体験学習だ!」

 俺はコグモの胸元から離れ、元気よく宣言する。

 ゴブリンにも体験してもらって、色々な事を学んでもらおう。


 「お、お~!」

 コグモは未だに状況が理解できていない様子だが、行った掛け声を覚えていたのか、俺の声に合わせて、声と腕を上げてくれた。


 なんて記憶力が良くて、気も使える子なんだ……。

 

 その愛らしさに、俺はキュン死しそうになった。

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