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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

妹と兄とのハードボイルドコネクション

作者: 雪河馬

「お兄ちゃん、起きてよ〜。」

俺は布団越しにのし掛かってくる柔らかい感触に目が覚めた。


「もう、起きないと遅刻しちゃうからね。」

目をこすりながらベッド脇をまさぐる。


「ああ、わかったわかった。わかったからちょっと離れてくれ。」


あった。

俺は妹の胸を掴み、突き飛ばす。


「きゃあ、なにすんの?お兄ちゃんのエッチ〜。」

「エッチなのはお前の方だろうが、寝込みをおそいやがって。」


俺は右手に持ったコルトガバメントの銃口を妹の額に向け、ぶっ放す。

轟音とともに妹の身体は後方に吹き飛び、壁に脳漿を飛び散らかした。


「お・・・に・・・い・・・ちゃ・・・ん・・・。」


妹は右手を俺の方に伸ばし、這いよろうとする。

そいつの頭部を狙い、俺は続けざまに全弾を打ち込む。

硝煙の匂いが部屋に充満し、息苦しくなる。

妹は動かなくなった。


俺は窓を開け、新鮮な空気を吸いこむ。


「まったく・・・・。俺はひとりっ子だっつうの。」


部屋が汚れちまったな。

俺は警視庁異星人対策課に電話する。


「もしもし、妹を始末したんで清掃お願いします。こちらの住所は・・・・。」


これでよし。

俺は外出することにした。

いくら異星人とはいえ、死体と一緒に待つのは気持ちの良いもんじゃない。

帰ってくる頃には対策課の職員が綺麗に清掃してくれてるだろう。

俺は銃をホルスターに納めて上からジャケットを着る。

銃は手放せない。

外出の際も、いつ妹に襲われるかわからないからだ。


5年前に異星人が地球侵略にやってきた。

やつらはゲリラ戦を得意とし、地球人そっくりに化けて内部から襲いかかる。

信用させ、油断したところを襲うのだ。


地球侵略にあたって、やつらは地球文明を調査し、風俗や習慣を綿密に調査したのだが・・・・。


大規模侵攻が始まったが地球側の被害は局地的で限定的だった。

異星人は壊滅的な被害を受け、地球の危機は去った。


やつらにとって不幸だったのは、モニタリングしたのが秋葉原だったということだ。


いったいどうすればそんな変な間違いをしでかすのだろうか。

地球人は妹に弱いという誤った情報の元、奴らは大量の妹軍団を送り込み敗れたのだ。


いや・・・、確かに犠牲は出た。

日本の将来を担うべき自宅警備兵たちが多数犠牲になったことは否めない。


そのあたりも誤解があったのだろう。

日本語は異星人にとっても難しいようだ。

日本の最強の兵士は自宅警備兵だとやつらは思っていたようだ。

自衛隊と自宅警備、似ているが精強さが全然違うのだが。


いずれにしても、大規模戦闘は地球の勝利に終わったのだが、局地戦は主に日本で続いている。

そのため特別立法で妹たちが狙うであろう未婚の若者は銃を持つことが許可された。


俺は電車に乗り、郊外の駅で降りた。

少し公園でも散歩したい気分だった。


公園には子供を連れた母親たちがいた。

平和な光景である。


ふと前方を見ると、1人の少女がうずくまっていた。

足から血が出ている。

怪我をしたようだ。

俺は駆け寄って少女に声をかけた。


「どうしたの。足を怪我してるみたいだけど。」

少女は泣き顔で言った。

「塾に遅れそうで、急いで走ってたらそこでつまづいちゃったの。」

「たてるかい?」

少女は首を横にふった。

「じゃあ、手を貸してやろう。さあ掴まりなさい。」

少女は泣き止んで微笑む。

「ありがとう、()()()()()。」


スマートウォッチの警戒装置(アラート)が赤く点滅し、ブザーが鳴った。

俺はジャケットを跳ね上げてホルダーから銃を取り出し、素早く安全装置をはずして銃をぶっ放す。


「ふう、危ないところだった。やつらも巧妙になってきたな。」


公園を散歩する気が失せてしまった。

ゆっくりと寛ぎたくなり、俺は実家に帰ることにした。

しばらく家族とも会っていないし、一晩泊まっていくか・・・・。


電車を乗り継ぎ2時間かけて地方都市に向かう。

駅を降りてからさらに1時間、バスに揺られて山間部にある実家に到着する。


「ただいま・・・・。」

返事はない。皆出かけているのだろう。

俺はジャケットを脱ぎ、ホルダーごと銃をはずして、居間に投げ出した。

スマートウォッチの電源を落とし、ジャケットのポケットに放り込む。


俺は居間の畳の上に大の字になって寝転んだ。

畳というものは良いものだとしみじみと思う。


ガラガラっと扉が開く音がして、足音が近づいてくる。

帰ってきたようだ。


「おかえり、お兄ちゃん。」

セーラー服姿の少女が俺の顔を見て嬉しそうに微笑んだ。

「おかえり、今日はどこか行ってたのか?」

「うん、ちょっと隣町まで行ってきた。」


俺は眉をひそめた。

「おい、危ないことはよせよ。お前みたいな女の子が1人で出歩いちゃ危ないんだぞ。」

少女は嬉しそうに膝に擦り寄ってきて甘える。

「もう、お兄ちゃんたら心配症なんだから。でも、そんなところが大好きだよ。」


俺は妹の髪を優しく撫で、妹は俺の腕を枕にすやすやと眠った。

疲れたようだな。


俺は妹が大好きだ。

妹はこいつだけでいいんだ・・・・。


すいません。

すいません。すいません。すいません。


きっと疲れてたんです。

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