ハーレムエンドなんて、お断りです。
こんにちは。
初めて書いてしまいました。。
以前から、乙女ゲームを舞台にした小説を見かけ読んでいたのですが、ふと、ギャルゲーを舞台にした転生系はないのかな?と思い立ち創作してしまいました。
ほぼ、勢いのようなものなので違和感を感じられる箇所があったりするかもしれませんが
暇潰し程度でご覧ください。
プロローグ
私は姿見の前へ立ち、自身の顔をまじまじと見つめた。
目はくっきりと頰はほんのりと赤く、唇は小さめで厚い。鼻筋はしっかりと通っておりシミひとつない肌は
白く透明感に溢れていた。
制服の下の身体は細く手足も引き締まり華奢だが、出るところは出ているため、男を引きつける色気が溢れ出ていた。
そしてそれらを引き立たせるような、黒くて長い髪は
彼女が動くたびにサラサラと流れる
その度に周囲は息を呑んで彼女へと注目を向けるのだ。
その目は、期待 憧れ 崇拝 思慕 といった感情が孕んでいるのだ。
綺麗な人
完璧な人
超人的な人
天才な人
そんなレッテルがタグのように何重も張り付きなんとなく、息ができないような。
姿見に立つ少女は、思わず目線を伏せて哀愁を漂わせた。
「....あと、10秒前。」
9,8,7,6.......
声に出してカウントをしながら、自室の窓の方へと
歩いて行くと、ガラリと勢いよく開けて隣の家へと目を向けた。
見慣れた家は今日も同じく、少女の目の前に立ちはだかり我が物顔で待っていた。
ー図々しい人。
その様子に一瞬、顔を歪ませるがなんとか取り繕うと
きっといまも寝ているだろう少年に聴こえるように
大きく息を吸い込んだ。
「ゆうくーーん!朝ですよー!学校始まるよーー!」
周りに響く声量で声をかければ、何十秒間が空いたのちにスッとカーテンが開かれた。
現れたのはこちらも見慣れている、少年で目を擦りながらおはようと声を掛けてきた。
ーなにが、おはよう。よ
そんな悪態を飲み込んで、私はちょっと怒ったような顔をする
「おはよう!ゆうくん。その様子だとまた寝坊したみたいだね?
もう、寝坊はダメって言ったでしょう。」
「別に、してねーし!てかっ朝っぱらから叫ぶなよ」
「しょうがないでしょー!?ゆうくん起こさないと
起きないんだから。」
「まぁ、そうだけど!...ありがとうな」
「今日は珍しく素直だね〜」
「うるせ」
「はいはい。じゃあ、早く着替えちゃって!
もう、お弁当作っておいたからね。
いつものとこで待ってるから」
「へーい」
いつも通りのパターン化したやりとりを終えて
気だるげな少年はさっさと着替え始めれば、私は窓を閉めた。
ー次にやることは、なんだったかな。
学校の準備は終わったし、朝ごはんも食べた。
ゆうくん専用のお弁当も作った...
「....あっ、今日は確か転校生が来る日だったような」
ピンと思いつくと、いそいそと鞄の中から
ピンクの手帳を取り出す。
そこにはびっしりと女の子の名前が書いてあり
特徴 行動パターン 数字も補足でついている
その中から、お目当の項目を探すが、見つからなくて唸る。
「。。うーん、、転校生の情報はないか。新キャラ?だよね。多分。
まぁ、流れからすると必然的に絶世の美少女だ思うけど。
ツンデレ系?真面目系?は...もう綾瀬さんと西園寺さんがいるか。
ベタなのは、昔、結婚の約束をした設定か、今日の朝
なんらかのイベントが発生した際の関わった女の子。
」
ーとなると...通学中に遭遇イベントがあるかも。
ある種の可能性を思いつくと、パタリと手帳を閉じた。
そして、バタバタと部屋から飛び出せば一階に降りて
ゆうくんのお弁当を手に持った。
ちなみに、私も、裕司も両親が海外にいる
関係で自室一人暮らしであるため
何をしても文句言われることもない。そう、ナニをしてもだ。
だだっ広いリビングを横切り、玄関へと到着すれば
スリッパからローファーへと履き替える。
「これで、大丈夫か..あ、忘れてた」
私は大事な自身のポイントである真っ赤で大きな
リボンを鞄から取り出すと後ろ髪へと取り付ける。
いかにもメインヒロインというような主張の物を
いますぐに引きちぎりたい衝動に駆られたが、それが許されるはずもなく、むざむざと型に嵌るのだ
ー今日も、なんとか乗り切ろう。
ふっと深呼吸して、心を駆り立てれば
玄関のドアを開いた。
勢いよく、照りつける朝日に目を細めながらも広がる光景を甘受する
すれば、少し遅れたタイミングで向かいのドアが開かれ、少年が出てくる
いつもと同じような少し乱れた制服を着て、若干寝癖をつけながらこちらを向き右手をあげた
黒髪に平凡な雰囲気のどこにでもいるような少年は
中肉中背で、一見特徴がないように見えるが
よく見れば顔は整っていることがうかがえる。
ーキャラ紹介に"平凡"と設定されても、実際は顔面偏差値が高いのはあるあるよね。
遠い目をしながらこちら握りしめる駆け寄ってくる少年に微笑みかける
「よっ!」
「よっ!じゃないでしょ?もう、寝癖ついてるよー。ほら」
「まじ⁉︎気づかなかったー」
「制服も、ちゃんと着なきゃー。ほら、ゆうくんのお弁当」
「おっ、サンキューな」
「どういたしまして。、隈がひどいね」
「昨日、ちょっと、柊さんと電話してたんだよなぁ
なんか、盛り上がっちゃって寝るの遅くなった!」
「柊さんと?...仲良いんだね」
「そうかぁ?でも、柊さんっていい子だよな。こんな俺でも気にかけてくれるしな」
ー....これは?もしかして、言わないといけないフラグ?ていうか、わざとらしく自分を卑下するのやめてほしいのだけれど。
ベラベラと喋り続ける、ゆうくんを横目で見つつも
その時を待った
「あーあ。美咲にもいつも面倒かけてるし、いい加減しっかりしないとダメだよなー」
ー来た。
私はコホン咳払いしながらも何度目かのベタセリフを吐いた。
「.......私は...そんなゆうくんが好きだよ?」
「えっ?なんか言ったか?聞こえなかった」
「ううん!なんでもないよ!」
ー出ました。お馴染みの肝心な時は難聴になる仕様
(発揮されるのは主に告白の時)
そうかー?と呑気な返事をする、ゆうくんに青筋をピキリと浮かび上がらせながらも、淡々と通学路を
歩いた。
ー早く、着いてほしい....というか、やっぱり遭遇イベントはなかったから、昔、結婚の約束をした美少女設定で来るのかな?
今の所、何かが起こる様子はなく着々と学校方面へと進む足に、あー!あなたは朝に会った人⁉︎という清楚系美少女 設定路線を取り下げようとすると
隣のゆうくんがピタリと足を止めた
「ゆうくん?」
「美咲、今日の一限目数学だよな?」
「そうだけど....どうしたの?ゆうくん」
「数学で出された課題忘れた...」
「えっ!?」
「あの先生怒ると怖いんだよなー。....ごめん、美咲。
取りに行って来るわ」
「うん、わかった。先に行ってるよ?」
「そうしてくれ。じゃあな」
「遅れないでね」
焦ったように、家へと引き返す、ゆうくんを見送るながらも私は確信する
ーこれは、あー!あなたは今朝に会った人?!の清楚系美少女路線かな。
やっぱり、遭遇イベント発生するみたい
私は、通学鞄を地面へと下ろすと今朝のようにピンクの手帳を取り出し項目を追加する。
[??? 0 清楚系美少女?]
そこまで書き込むと、一番下まで目線を下げた
[三嶋 美咲 50 主人公の幼馴染。しっかりとした世話焼きな性格。主人公に昔から行為を寄せる一途な性格]
と表示されてある文字を無意識に握りしめる
そして、辟易とする気持ちを曝け出すように
顔を歪ませ、ポツリと呟いた。
「....元の世界に帰りたい」
自分が思ったよりも悲しく、重く響いた。
記憶の隅にあるのはいつもの光景。
黒のリクルートスーツを身につけて、髪を短く揃えた女性__私だ。
その姿は今よりも地味で美人の分類ではないが、
穏やかに笑っている。
多忙な毎日でも、隣には女性と同じくらいの歳の
男性が居て、寄り添ってくれた。そして男性も女性を
慈しみ愛おしそうに笑って居た。
とても幸せなワンシーン。
しかし次に迫って来たのは黒い物体。
無機質な甲高い音を聞きながら、傍観していれば
突如後ろから誰かに抱きしめられたのを感じる
__彼だ。
そう認識した途端に強い衝撃が身体中を襲い
吹っ飛ばされた。
全身に途轍もない痛みが迸りながらも、空中へと投げ出されれば、隣で同じく彼も飛んでいた。
そんな彼に手を伸ばそうとするもピクリともしない体は、どれくらいだろうか。短いような長いような。そんな体感の間落ちて行きしまいにはダァンッと地面に叩きつけられた。
そして、何もできないまま視界は真っ黒に染まった。
次にぱちりと目を開けるとこの世界に来ていた。
見覚えのない世界は私にとって恐怖の対象でしかなく、戦慄した。
日本。であることは確かだが町名も聞いたことがない。
ーどこだろうか?
見渡そうとすれば、はたと気がついた
小さいのだ。自分の手が、生前?よりも半分の大きさしかない手足に背丈。
まさか、そんな。
恐る恐る、鏡で自分を移せば美少女がそこは写っていた。
年は10~11そこらぐらいだろうか、ピンクのワンピースを着ていた。
目の前がクラクラする感触を覚えた。夢なのだろうか。夢であってほしい
そんなことを思いつつもそこから日々を過ごしていくたびに嫌でも現実であると再認識させられた。
「...まぁ、現実?というよりかは、ゲームの世界だけど」
そうなのだ。
それがわかったのは初めて、一ノ瀬 裕司に会った時
なんとなく見覚えがあるなと思っていた所
[トキメキ☆ハイスクール!~君と過ごす大切な日々~]の主人公だと思い立った。
そもそも、この[トキメキ☆ハイスクール!(略)]は
トレジャー株式会社のゲームソフトで
所謂、ギャルゲーというものだ。
設定はありきたりなものでどこにでもある平凡な主人公がかわいい女の子たちに囲まれてキャッキャウフフするものである
声優の豪華さやスチルの多さ、また作画がなんといっても綺麗すぎることから、話題になったゲームだ
私も、テレビやスマホで広告として見かけたり
私の弟(生前)がやっていたりしたため、なんとなく
話には聞いていた。
それが功をなしてか、自身がメインヒロインで主人公の幼馴染であること、そしてこれから高校入学する際には他の攻略対象に会うこともすんなりと理解した。
そこからは、早く、情報収集に熱を上げた。
主人公のこと
他の攻略対象であるヒロインのこと
そして、このゲームのエンディングなどを必死に思い出し手帳に書いていった。
今の所、私を含めてヒロインは五人。
どの娘も美少女で個性的な子達だ。
そして、エンディングはもちろんその娘たちの一人と結ばれるエンドが主流で、条件としては好感度を卒業までに90以上上げないと行けないということだ。
そうしないと、友人止まりとなりノーマルエンド直行となる。
基本的なざっくりとした説明は以上だが、最後にこのゲームには隠しエンディングがあるということが発覚した。
それは、ハーレムエンド だ。
ギャルゲーだけあって、隠し設定はあると思ったが
ハーレムエンドがあると知った時は心臓が掴まれる思いだった。
この ハーレムエンド はこのゲームソフトが話題になった大きな理由で、エンディング内容としては
卒業までに全員の好感度が90以上なった場合
主人公を取り合って、なかなか一人の人と結ばれないので、全員と同じ屋根の下、同棲するという
むちゃくちゃなものだった
この内容には私も思わず手帳をぶん投げたぐらいに私にとっては酷いものであった。
そして、同時に決心をするものでもあった。
ー絶対にハーレムエンドには行かせない、と
もちろん、私が主人公と結ばれるエンドもお断りだ。
目標は主人公が他の攻略対象と結ばれ、私は無事に
主人公の下へと離れ一人暮らしていき、そこで
元の世界に帰れる方法を探す。これがベストだ
そのため、今日もなんとか メインヒロイン としての役割をやりつつも、情報収集をして
なんとか、主人公を他の人にくっつけさせよう
と合作しているのだ
ーでも、主人公は見てる感じ、ハーレムエンドを目指してるっぽいんだよね
昨日も柊さんと電話をしていると言っていたが
好感度の狙いだろうと踏んでいた。
[トキメキ☆ハイスクール]にとって電話は好感度稼ぎになるし、主人公は一昨日は西園寺さん、三日前は
花園さんに掛けていたため、決定的だろうと思う
そして、着々とメーターが上がってきている
そんな様子を白々しく話す主人公には毎回、無性に腹がたつが私も元の世界へ帰ることを諦めたわけではない。
諦めるわけには行かないのだ。
彼に、謝らなければならない。そして、、一目でも会いたい。
「そのためには、私も他の攻略対象へと接触をしなければ__!」
意志の強い口調で再度、言葉にすれば私は鞄を持ち直し[トキメキ☆ハイスクール]の舞台となる{鳳城学園大学付属高校}の道へと急いだ。
今日。
9月 15日 。三島 美咲 第2学年 A組
卒業まで あと 一年と半年のことである
~キャラ紹介~
主人公 (25) 元
普通の会社に勤めていたOL。
生前は恋人と同棲しており、結婚秒読みだったが
ある日事故に遭ってしまった、不運な子。
現 三島 美咲 (17)
[トキメキ☆ハイスクール]のメインヒロイン
一ノ瀬 裕司の幼馴染。
周りが振り向くほどの美少女で世話焼きでお節介な性格。
一ノ瀬 裕司 (17)
平凡でどこにもいる少年と設定されている
しかし、顔はととのっている模様。
帰宅部で両親は海外へ住んでいるため、美咲と同様一人暮らし。