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『悪役メイド』になります

 乙女ゲームというのは多種多様である。

 童話モチーフであったり、戦国や幕末系であったり、学園物、アイドル。キラキラした王道を行く作品もあれば、ドロドロヤンデレもの、ピンク要素の強いもの。はたまた滅茶苦茶やっているやつなど、様々だ。


(新シナリオ、やっぱちょっとキャラ崩壊気味だよね……。こういう不安がないからコンシューマーのが好きなんだけど)


 待ちに待った、贔屓にしているアプリの2部配信。それにあわせたイベントもあり、貫徹もしながらポイボは全取りし、あとはランキングのキープ。

 そこまでは良いが、肝心の2部のメインシナリオでキャラ崩壊。


(モチべだだ下がり……。違うんだよ、おネエならおネエ貫いて欲しいんだよ。『女性』である『彼』が好きなわけなんだよ)


 おネエキャラが、突如主人公を男として落としにかかってくる。それもうあるあるというか、シナリオ上仕方ない面もあるのかもしれない。

 だが、彼女のしているアプリは『乙女ゲー』とは明言されていないのだ。リズムゲーム+育成といった感じのアプリで、『女性向けのキャラゲー』というのが一番しっくりくる表現かもしれない。そのようなゲームで、突如おネエキャラに夢要素をぶちこまれても、正直困ってしまうのだ。


(まぁ、ランボ、推しキャラじゃないし良いんだけどさ、完凸させなくても)


 そうは思いつつも、曲は好きなため、音ゲーをプレイする。人がいないのを良いことに、少々ヘッドホンの音量を上げる。そして、サビに差し掛かる頃。


『キキィー!』


 耳を劈くような音が、ヘッドホンを貫いて聞こえてくる。スマホから顔を上げ、周りを見渡そうとした瞬間、彼女は意識を失った。

 それから、どの程度の時間が経ったのだろうか。


「……リー、……ミリー」


 ぼんやりと、聞き馴染みのある声がする。重い瞼を薄っすらと開けようとするも、眩い光で上手く開けられない。


「エミリー、起きたの? 大丈夫? 魘されてたわ」


 不安そうな顔で覗き込んできたのは、エルピディオだ。まごうことなき、一番好きな乙女ゲームの最推しである、エルピディオ・アルバラード。

 彼の顔を見たことで、一気に目が開く。


「……さっきまでのは、夢……? ん……? これが夢? あれ。え、うん……? んんん?」


 がばりと勢いよく身体を起こし、あたりを見渡す。西洋風の建物が立ち並び、とてもじゃないが新潟とは大違いな景色が広がっている。そして、思うに、先ほどまで推しに膝枕をされていたようだ。恐る恐る推しの方を見やれば、「大丈夫?」と声をかけてくれる。


「だ、大丈夫です。大丈夫ですから、全然! 元気です」

「そう? なんだか様子が変よ、エミリー」


 エミリー。その名前にハッとする。エルピディオのメイドで、ルートによってはお助けキャラとして出てくることもあれば、恋敵キャラとして出てくることもある子だ。


(母さん……、どうやら私、乙女ゲーに転生したようです。悪役令嬢ならぬ悪役メイドです……!)

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