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bad end

作者: たっつーのペペロンチーノ
掲載日:2017/11/26

        bad end

坂本 達也

プロフィール

      松野 壮士  明るくまっすぐな性格 

             英語が大の得意

      大山 恵梨香 純粋

             断れない性格

             かわいい

      神田 リア  ハーフ

             少し太っている


第一話 二年前


幼馴染だった俺たちは、夏休みだということで海に来ていた。

海は三年ぶりだ。いま中二になる。

「うっひょー、久々の海だぜー!やっぱ、海は最高だなあ。」

やっぱりテンションが上がる。温かい砂浜を歩く感じ、最高だ。

「そうだね。壮士君。私も今年もこうやってみんなと来れて楽しいよ。」

恵梨香は真っ白な水着姿で肌も白い。こちらに笑顔で話しかけてくるのがなんともかわいい。

「ぼ、僕もみんなと、こうやって来れて楽しいよ。」

リアは少しお腹が出ているのを気にしているのか、時より、自分の腹の肉をつまんでいた。でも楽しそうだ。

近くに一匹の白い貝がいた。

「わあ、かわいいー。」

恵梨香が貝に近づき、触ろうとする。しかし、俺はその貝が毒をもっていることを知っていたから、

「危ないっ、」

と言い、踏み殺してしまった。踏んだ後にはぐちゃぐちゃになってしまった貝の姿があった。

「うわあ、可哀想・・・。」

自分の危険には目もくれず貝の心配をする恵梨香。

(やっぱり、そういうところもいい。)

「この貝はね、毒をもっていたんだよ。」

必死に俺は弁解した。まだ、恵梨香に嫌われたくはない。

「でもね、壮士君。毒を持っているからといって、殺してはいけないよ。この世には生態系ってものがあって、それを壊しちゃうとみんな死んじゃうって本に書いてあったから。」

恵梨香は勤勉なのか、時より本で見つけた知識を披露するときがある。

「そっかあ、ごめん恵梨香、今度からは殺さないようにするよ。」

「うん、そうしてあげてね。」

そのあとも、海で日が暮れるまで遊んだ。

そうやって、今年もまたそこそこの夏を送れたのである。


第二話 終わりの始まり


中学を卒業した俺たちは、三人一緒の高校に入学した。「地方だから遠くに行ってもしょうがない」という理由で、近い学校を選んだのである。小さな門を抜けると先生が一人立っていた。どうやら、クラスのメンバーが書かれた紙を配っているらしい。

「はい、どうぞ。」

「ありがとうございます。」

俺は一礼し受け取った。新しい場所なのでどうもかしこまってしまう。自分の名前を見つけ、リアと恵梨香も一緒だった。運がいい。

「壮士君、この紙。見た?」

「見たよ!恵梨香とリア、高校最初の年で、一緒のクラスになるなんて最高だな!もしかしたら俺たち、運命で結ばれているのかもな!」

「うんうん、そうだったらいいよね!」

恵梨香は高校生になり、かわいいというより、うつくしくなった。当然中学校では、男子たちから絶大な人気を誇っていたが、誰とも噂になったことを聞いたことがなかった。純粋なので、そういうのにも、気づかなかったのだろうか・・・。

「僕も、またよろしくだよ。」

リアは最近やたら腕時計や服がかっこよくなり、どんどん変わっている。今年でもう、腕時計は三つ目だ。しかしまだ、そのお腹は少し出ている。

この先も、そこそこ楽しい人生が待っている。そう感じた。そんなクラスの最初のホームルームが始まった。

恵梨香は中学校からの唯一の女子友達である林道さんと話していた。

「はいっ、じゃあ委員会決めまーす。」

新任教師の小島先生が勢いよく声を上げる。

「じゃあ、まず学級委員から。」

「はーい。」

「はーい。」

最初に手を挙げたのは林道さんと城詰さんだった。学級委員はすぐに決まり、そのあとも続々と委員会は決まっていった。そして学校は午前だけの授業を受け、その日は終わった。

帰り道


俺たちは三人で帰っていた。

「これからあそこで始まる高校生活、楽しみだな!」

まだ三人が一緒のクラスになれたことに気分が高揚している。

「そうだね!どんなクラスになるのかなー?」

恵梨香は首を傾げ、スカートは風にたなびいている。

「ねえ、この前のあのゲームやった?」

リアはいつも関係ない話を突っ込んでくる。まあ、会話が途切れなくていいんだけど・・。そんなたわいもない会話をしながら三人はゆっくりと家に帰った。

次の日も午前授業だったが、友達はたくさんできた。友達思いの角谷に、優しい岸村、変態な串田、まだよくわからない田中に、すごく話が面白い渡辺、自慢が凄い井上など、ちょっと変わったメンツもいるが、みんないいやつだ。このメンツならそこそこ面白い一年が過ごせる。そんな矢先だった。

学校が始まってから一週間がたった時、突然クラスの人から、無視をされたのだ。リアや、数人からしか話しかけられなくなった。恵梨香ですら話しかけてくれない。

「リア、皆どうしちゃったんだよ。」

(とりあえずリアに聞いてみよう、何か知っているかもしれない。)

「し、知らないのか?」

俺はリアから一通のメールを見せてもらった。


新入生へ

一年五組 クラスカースト


一軍

   小田 真樹 おだ     まき

   城詰 優  しろつめ   ゆう

   林道 杏子 りんどう   あんず

   ・・・以下三名。

二軍

   青木 信也  あおき  しんや   松本 雄介 まつもと ゆうすけ

   井上 春香  いのうえ はるか   峰  将司 みね   しょうじ

   内田 凛香  うちだ  りんか   森  英恵 もり   はなえ

   大山 恵梨香 おおやま えりか   森口 雅子 もりぐち まさこ

   神崎 猛   かんざき たける   森野 敬  もりの  たかし

   霧島 陽花里 きりしま はなえ  吉野 拓三 よしの  たくぞう

   岸村 葉香菜  きしむら はかな  渡辺 俊介 わたなべ しゅんすけ

   角谷 小次郎  かくたに こじろう 渡辺 茉優 わたなべ まゆ

   桑原 彩    くわはら あや

   串田 雅也   くしだ  まさや

   小山 花    こやま  はな

   坂元 広大   さかもと こうだい 

   桜井 久佐   さくらい くさ

   鈴木 俊也   すずき  しゅんや

   鈴木 雄介   すずき  ゆうすけ

   須藤 隆    すどう  たかし

   背広 勇気   せびろ  ゆうき

   ・・・以下二十五名。


三軍  赤野 舞    あかの  まい

    小鹿 慎之介  おが   しんのすけ

    岸田 太郎   きしだ  たろう

    神田 リア   かんだ  りあ

    鈴木 海羽   すずき  かいと

    船頭 麻衣   せんどう まい

    田中 半蔵   たなか  はんぞう

    竹内 摩理   たけうち まり

    松野 壮士   まつの  そうし

    矢口 加奈   やぐち  かな

    ・・・以下十名。



クラスカーストの特権


一軍は二軍以下に生命に関わることでない限り命令を下すことができる。

二軍は一軍に逆らってはならず、三軍に命令を下すことができる。


尚 これはなにか変動がある場合には諸連絡を行う。


以上


「なんだよこれっ、だれが信じられるかっ!ふざけんな!」

俺は昨日からメールを確認していないなかったから知らなかったのだ。思わず怒りの声を上げた。

「しょ、しょうがないよ・・おとなしくしとけば、なにもされないんだから。」

「確かにそうだけど、こんなことしていいはずがない。」

「ま、まあそうかもしれないけどお。」

誰が考えたのかもわからないカーストにも関わらず、みんな信じている。これだから集団心理は恐ろしいと思った。

しかし、これはよくできている。杏子は成績優秀だし、リーダー性もある。城詰は、優しいし、イケメンで、女子からモテモテだ。加えて、真樹は、スポーツ万能。男子はこの二人をトップに二つに分かれている。そういったことが軍に反映されているのは素晴らしい。何故俺が三軍なのかはよくわからないけれど・・・。

五時間目のチャイムが鳴った後小田が前に立ち、しゃべりだした。

「皆は知っていると思うけど、昨日のメールのクラスカーストには従ってほしい。誰が作ったかは知らないが、よくできているからな。もし反逆するというなら構わない。が、このクラスは優と俺が引っ張っている。そのことを忘れるなよ。」

小田がいきなりそんなことを言っている中、優が意見を言った。

「ぼくはそんな手荒な真似をするつもりはないよ。命令も出さないし、勢力が二つある以上は好き勝手にできないよ。みんな心配しなくていいからね。」

優はやっぱりモテそうだ。

「まあ、そういうことだな。それぞれの気持ちはわかるが、男子だけでもしょうがない。女子もそれでいいか。」

小田は女子の意見を求める。

「ええ、そうね。面白そうだからやってみましょう。」

女子一軍の林道杏子さんが答えた。

先生は、その日帰りのホームルームに来ることはなかった。

放課後のチャイムが鳴り、皆帰宅する。

今日ずっと無視をされた恵梨香も放課後なら返事をくれるだろう。

「恵梨香―。」

「・・・。」

「恵梨香!」

「おいおい、よせよ。俺が今日から一緒に帰るんだぜ。」

突然後ろから恵梨香の肩に手を寄せた男が話しかけてきた。

「お前は、確かー熊谷?」

熊谷壮、純粋でまっすぐな奴という印象しかない。

「そうだよ。お前の気持ちはわかるけどな、俺も中学のころから恵梨香のことが好きだったんだ。確かに、お前には悪いが、俺たちは付き合っているから邪魔しないでくれ、ごめんな。」

(悔しいけど、三軍の俺にはどうすることもできないのか。畜生。でもまあ、熊谷なら恵梨香を幸せにできるかもしれないし、信じよう。)

「じゃあ、俺らは行くんで、じゃあな。」

「ばいばい・・・。」

二人は付き合い始めで緊張しているのか。微妙な距離感で帰っていった。

俺はその日の帰り、塾で、英語の先生にカーストの話をしたが、まったく相手にされなかった。

「先生、こんなのが出来ちゃってて。」

俺は携帯のメールを見せた。

「うーん、なになに、クラスカースト、か。なんだか最近の高校生は大変そうだねえ。」

先生は興味津々みたいだ。

「からかわないでくださいよ!これで今大変なんですから。」

「こんなすごいの誰が作ったの?」

「それがわかんないんですよ。一軍ではなさそうだし・・。」

「多分これをやったひとは寂しかったんだろうなあ。まあ、時期に終わるさ。」

のんきな先生には少しあきれたが、塾を出て、帰ることにした。

「やあ、壮士君元気かい?」

突然後ろから熊谷に、声をかけられた。

「お、おう熊谷。隣にいるのは?」

「ああ、こいつ?俺の彼女。」

「は?放課後言っていた事とちげーじゃねーか!」

「放課後?ああ、恵梨香のことか。あいつはただの金づるだよ。お前の名前をだすと、なんでもしてくれるぜ。」

「く、くず野郎め・・。」

思わず本音が出てしまった。

「はい?なんか言いましたー?三軍君は黙って家にかえりましょうねー。」

全然学校で会った時とは違う姿。裏の顔はこんな感じなのか。

俺は怒りに震えたが、このまま手を出すと奴と同類になると思い、家に帰った。

玄関に帰りお茶を飲み、人はこうも簡単に崩れてしまうのだなと思い、悲しくなった。(とりあえず、リラックスしたい。風呂だ、風呂に入ろう。)

風呂から出たその時、携帯が鳴った。メールだ。


テンテンッ♪


送り主 恵梨香

今日は一緒に帰れなくてごめんね。実はね。熊谷君が、俺と付き合えば壮士君を二軍にしてくれるって言ってくれたんだ。だからもう少しの辛抱だよ。辛いと思うけど頑張って!


なにを言っているんだ。恵梨香・・・、そいつは嘘だよ。あいつにそんな気はない・・。しかし、これを伝えても、何も変わらないだろう。じゃあ、どうすれば・・今はとにかく熊谷が憎い・・。熊谷を・・・。


  つ  ぶ  し  た  い


俺はネットで昔見つけたある記事を思い出し、リアに電話した。

「おいっ、協力してほしいことがあるんだ。お金貸してくれないか?」

「い、いいよ・。実は僕のパパがアメリカでおうりょう?して大量にお金があるんだ。いくらでも、つかっていいよお。」

「それは、ありがたい、とりあえず十万。明日俺の家に持ってきてくれ。事情は後で話す。」

「分かったあ。」

ガチャ

 

翌日


ピンポーン

「よう、リア。例のあれはちゃんと持ってきたか?」

「あ、あるよ。こ、ここにほら。」

「よし、ちゃんと十万あるな。ここにもう一人、女性に手伝ってもらう。」

「ええ、なんでえ。」

「まあ、おれはな、この金で熊谷に痴漢冤罪を仕掛ける、女好きのあいつには申し分ないやり方だ。」

「ええ、なんでそんなひどいことするのお?。」

訳を話すと、リアも渋々了承してくれた。

その日俺は家に帰ると、痴漢冤罪業者に電話した。

「もしもし。」

「こんばんは、こちら痴漢冤罪業者の立川と申します。今回はどういったご用件でしょうか?」

「ええ、一人仕掛けてほしい人がいまして。」

「なるほど、一人でしたら十万円になりますがよろしいでしょうか?」

「はい。」

「では後程振り込んでいただきます。ターゲットの顔と日時、どの電車に乗るかをファックスでお送りください。」

「わかりました。」

「では、失礼いたします。」

ガチャ

これで明日決まるんだな。


第三話 バランス


次の日、俺はたまたま熊谷と一緒の電車に乗った。

「よお、松野。一昨日は気を悪くしたか?」

こいつは明らかにからかった感じで尋ねてきた。

「あ、ああまあな。」

まあいい、時期に熊谷は痴漢冤罪で捕まってしまう。最後の会話ぐらい楽しく話したいものだ。

しかし、そのあと何の会話があるわけでもなく、数駅が過ぎた。

「きゃあ//。」

後ろの女性が突然悲鳴を上げた。その瞬間女性は熊谷の手をつかみ、この人だと言い張った。熊谷は気が動転していた。

「ひ、人違いです。」

次の駅に着いた。彼は警察に連行されていく。

「ち、違うんだ。この女が勝手に・・な。なあ、松野お前だって見て・・。」

ヒュー。ガッシャン。

その瞬間ドアが閉まった。後はどうなったか俺にはわからない。少しの罪の意識を感じた。

学校に着くと、珍しく熊谷が休んだということで、ちょっとした話題になっていた。

しかし、先生は熊谷が休んだ理由をはなそうとはしなかった。


テンテン♪

通達


熊谷壮 三軍降格


以上

   

「う、うまくいったみたいだね、壮士君。」

早速リアが話かけてきた。

「ああ、お前のおかげだよリア、ありがとな、リア。」

「やっぱり、そういうことだったのか。」

後ろを振り返ると、優がいた。

(やっばい。聞かれていたか。)

「お前らのやったことは、大体わかった。熊谷から休んだ理由も聞いているからな。お前ら。よくも俺のグループの二軍メンツをやってくれたな。」

「い、いや、そ、その・・・。」

(終わった・・・。)

「まあいい、覚えとけよ。」

俺らはその帰り道、今までにないゆっくりとした足取りでリアと二人で帰った。恵梨香はクラスカーストができてから、結局一緒に帰ってはくれてない。

「ど、どうしよう。壮士君。」

「どうしようって言ったってどうしようもないだろ!あいつが何してくるかわかんないし、しかもよりによって一軍だ。あいつは自分の手を汚さなくたって何でもできる。」

「そ、そうかあ。」

家に帰った後も、好きなテレビを見ても、あんまり気分が上がらなかった。

暫くしたのちに、携帯が鳴った。ん?誰だ?リアからだ。

「もしもし、リアか?なんかあったのか?」

「いや、面白いネットの記事を見つけてさ。社会的抹殺って調べてみてくれないか?」

なんだかリアが生き生きしている。いつもは必ず最初の言葉で閊えるはずなのに。

にしても、社会的抹殺って怖いこと調べるなあ、リアも。

「どれどれー?社会的抹殺っと、んー、ここのトップに出てる社会的抹殺屋のこと?」

「そうだよ!ここに五万円払うと一人に対して複数人が低周波のレーザーをを浴びせて脳に異常をきたすんだって!」

「そんなことってあるのか?」

「わかんないけど、やってみる価値はあると思う。」

「誰にやるんだ?」

「優だよ!このままだと僕たち何されるかわからないよ?」

「まあ、そうだな。」

「じゃあ、また明日ね。」

確かに優は俺たちに何してくるかはわからない。けど、本当にこのままでいいのだろうか。優は、熊谷の表の顔しか知らないから・・・。こんな脅迫じみた言葉を言ったかもしれない、と思いながらも寝床についた。


その夜


「もしもしー、こちら社会的抹殺屋ですけども、どうされましたか?」

「消えて欲しい人がいるんだ。」

「そうでしたか、こちら前払いとなるんですけども、お支払い頂けますか?」

「うん、金は十万払う。ターゲットはこの人だ。よろしく頼んだよ。」

「はい、かしこまりましたー。ほとんどの方は一週間以内、長い方でも一か月以内に成果が出てくると思います。」

「わかりましたー。」

ガチャ


次の日

「おいっ、昨日はゆっくり眠れたか?」

(げっ、また優か、まずいなこりゃ。)

「う、うん眠れたよ。」

「そうか、それはよかった、昨日は言い過ぎたと思ってな。」

(な、なんだ結構優しいじゃん)

「まあ、また仲良くいこうや」

「う、うん」

「なあ、リア。優もこう言っているしこの作戦やめないか?」

「ううん、やめない。」

(まあ、まだ優にも何も起こってないし、多分大丈夫だろう。)

その日は安心してよく眠れた。

三日後

「な、なあ、壮士君!大変だよ。僕と壮士君の机が・・・。」

そこには、犯罪者や死ねといった誹謗中傷を表す文字がたくさん。俺とリアの机に書かれていた。誰がこんなひどいことを・・・。

「優か、優だな。やったのは!」

リアが大きな声で叫ぶ。昔はこんなこと絶対になかったがどうやら興奮しているらしい。

「ハハッ、そうだよ、俺がやったんだよ。俺が皆に命令した。みんな簡単に動いてくれたよ。この一軍様に命令されちゃあ仕方ないよなぁ。お前たちが大好きな恵梨香も服従してくれたぜぇ。そう、皆俺の駒、ざまぁねえな。これから一生地獄を味わうんだな!キャハハハハハハハハハハ。」

こいつ狂っている、熊谷のためかもしれないがいくらなんでもこれは、優のする言動じゃない。やはり、脳に異常が。

リアのほうを見ると、静かに席に座り、マッキーで書かれた文字を見ながら微かに笑みを浮かべていた。

次の日も、状況はあまり変わらなかった。机の文字にはいくつか言葉が追加されていたが、昨日と似たような言葉しか書いていなかった。でもそこに「負けないで。」と恵梨香が書いた文字らしきものも追加されていたので、心がほっこりした。一方のリアというと、また微かな笑みを浮かべているだけで少し気持ち悪かった。

そして、お昼になった。クラスカーストのないころは恵梨香も一緒に食べていたが、今はリアと二人で食べている。


テンテン♪

「あっ、メールだ。」

リアが食い入るように見る。


通達


城詰 優 二軍降格


以上


突然の通告に、リアは、小さなガッツポーズをした。これで、俺たちへのイジメはなくなる。そう、思ったのだろう。そう思うと、俺も小さな安堵を得た。またどこがで、「作戦通り。」と言う者もいたが、どうせ、中二病をこじらせた男子だ。気にしなくていい。

しかし、喜んでないものもいた。城詰優と、そのグループの男子たちだ。

「な、なんで俺が二軍に・・。ただイジメていただけじゃないか。そんな・・。」

落胆している城詰に、城詰グループの男子たちが、詰め寄る。

「優君、どうするんだよ!このままだと小田のグループに負けちゃうよ!リーダーが二軍だったら、どうすることもできないよ!」

「そうだよ!」

「どうすんだ!」

今まで優のグループについていた男子が悲鳴をあげている。

よくよく考えれば彼らの言っていることは正しい。今まで、小田と優のグループが均衡を保っていたので、お互いがむちゃぶりをすることはなかった。しかしこうなった以上、二軍に命令を下せるのは小田と杏子のみ。杏子は成績優秀なので、あまり目立った行動しないが、小田はスポーツ万能で、自分より下の人を見下す傾向がある。つまり、小田は今最強、そして小田のグループの二軍も、小田に頼めば命令を下すこともできるため、実質今、城詰グループは三軍同等なのである。

「お、俺だってどうしたらいいか、わかんねーよ!そもそも誰なんだ!こんなゲーム始めた奴は!出て来いよ!」

声を荒げ、顔をまっかにする城詰。

でも、城詰の言った通りなのだ。いきなり現れたクラスカースト。最初はこの学校のしきたりとか思っていたが、そうでもなく、今ではその恐怖に包み込まれ、それが全てとなっている。いったい誰が始めたのだろうか・・。

「こ、これは壮士と、リアが、やったに決まっている!あいつらをこっちに連れて来い!

最近、夜中うるさいのも、母さんが怒るのも、家にハエが沢山いるのも全部お前らのせいだ!くたばれ!」

仕方なく、城詰グループが俺たちのところに来た。

「おい、やめろ。」

みんなの視線が一斉に声の主の方向に向いた。

その男は小田だった。

城詰グループの動きがピタリと止まる。

小田が命令を下したのは初めてだ。

「おい、何やっているお前ら。この城詰優様が命令しているんだぞ!」

「できないよ・・。」

「お、おれも。」

「ごめん、優君。」

「はあ?ったく、どいつもこいつもこんなルールに縛られやがって!絶対復讐してやるからな!」

そういうと、城詰は放課後まで独り言をぶつぶつ言って帰っていった。


帰り道

「なあ、リア、あれでよかったのか?ますます悪い方向に傾いている気がするんだけど・・・。」

「う、うん。確かにそうだけど命令する人がいなくなったし恵梨香とも一緒に帰れる日は近いと思うよ。」

「それはうれしいけど、あいつ復讐とか言っていてちょっと怖いんだけど・・・。」

「そうだね。じゃあ、これあげる。」

「なにこれ?」

「睡眠導入剤。」

「え、待ってこれって致死量じゃ・・・。」

「そうだよ。だけどいざとなったら使いなよ。これ高かったんだからさ。」

「分かった。一応受け取っとく。」

家に帰って風呂から上がるとまた一通メールが来ていた。

(また、だれか落とされたのか?)


送り主 大山 恵梨香


リア君に告白されちゃった どうしよう


え、嘘だろ。リアも狙っていたのかよおおおおおおお。

この場合、どうしたらいいんだ。落ち着け、確かにリアは親友だ。でも俺も恵梨香のことは好きだし。・・・ああああああああああああああああああ!

 

テンテン♪


送り主 大山 恵梨香


リア君。詳しいことは明日はなすって。必ず好きにさせてみせるって言われた。どうしよう・・・。


どうしようじゃねえよおおおお、こっちがどうしようだよ、全く。でもなんでそんな自信満々なんだ?リア。お前そんなタイプじゃねーだろ。とりあえず考えたってしょうがない。

ネットして寝よ。一時間ぐらいたった後、母さんがパソコンを閉じに来たので寝ることにした。

次の日


リアとは登校中に一回は会って、会釈をするのが決まりになっていたが、きょうはそれがなかった。やっぱりリアにとって、朝は苦手なのだろうか。

学校につくと相変わらず席は黒かったが、新しい落書きはなく、いじめは終わったようだ。そこにはリアもいた。リアの机はなぜか新しい。


テンテン♪


通達


神田 リア 二軍に昇格


「やったー!」

リアが雄たけびを上げていた。俺には何が起こったのか理解できなかった。なぜこのタイミングなのか。このクラスカーストの主は何を考えているのか理解できない。なにしろランクアップは初だ。

「リアなにかしたの?」

「うるさい、三軍。」

「は?どうしたんだリア?」

「まあまあ、落ち着けよ、松野、今日からこいつは二軍なんだから、嫉妬したい気持ちはわかるけどよお。折角、親友君が二軍に上がったんだ。ほめてやれよ。」

「お前の差し金かあ!小田ぁ!」

「ちげえんだよ、松野。リアとは契約をしたんだ。」

「契約?」

「そうさ、昨日の件、不思議に思わなかったか?俺が神田に言ったんだよ、城詰を一軍から落としてくれたら二軍に上げてやるってな。」

「それで、あんなことを?」

「そうだよ。すぐ乗ってくれたさ、食いつくようにな。それで俺は一軍ただ唯一の存在になり、リアも二軍に昇格。最高じゃないか。」

「でも、優は人格がぶっ壊れたんぞ!最後はもう、人じゃなかったじゃないか!」

「確かに、そうだがそんなことはそうだっていい!俺はこのクラスのトップになり、すべてが俺の命令通りに事運ぶ。そうなるためにはあいつが邪魔だった。だから消した。何が悪いんだ?さらにはリアには財産もある。金と権力が同時に手に入ったんだよ!」

「は?ふざけんな!お前は人殺しだ。お前の命令なんか誰が聞くか。そんなやり方だったら金だって手に入らないし、権力だって手に入らない!」

「ハッ、それはどうかな。面白いもの見せてやるよ。いいぞ、好きなようにやれ、リア。」

「ありがとう、小田君。」

「リア、その前に封筒よこせや。」

「あ、ああこれかい?はい。」

なにやら分厚い封筒だ。

「なんだそれは?」

「これか?まあ、簡単に言ったら百万だな。」

「っ・・。下衆野郎。」

「これで分かっただろう?これで俺は完全無欠なんだよ!」

「さあ、リア望みを言え。」

彼は笑みを浮かべ、冷静な声で言う。

「僕は、恵梨香と付き合いたいです。」

「いいぞ、恵梨香。お前は今日からリアの彼氏になれ。わかったな。」

「・・・・はい・・・・。」

恵梨香の肩は小刻みに震えている。

「みんな、カップル誕生だ。祝え。」

みんなは、これでもかというぐらいに拍手をしている。これが独裁者の力なのか。暴走し、誰も逆らえない。当然俺もだ。みんなこの状況を変だと思わず、溺れていくのだ。独裁という波に。

「もう一つ、願ってもいいかな?」

「いいけど、もう百万ね。」

「わかったよ。はい、じゃあ願い言うね。」

俺は鳥肌が立った。何を言われるかわからない。もしかしたら俺が狙われるかもしれない。

「んじゃあ、恵梨香とキ・スがしたいです。」

「おお、キスか!やれやれ」

「キース!キース!」

クラスは最高潮に盛り上がっている。もはや狂気だ。恵梨香は震えを越え、もはや泣きそうだ。

しかし、そんなのお構いないしにリアは恵梨香に近づく。二人の唇は徐々に近づき、恵梨香も覚悟を決めたように震えが止まった。しかし、俺にはどうしようもできない。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

俺はなぜか声が出た。しかし、そんな声も歓声にかき消されてしまう。それを見て、小田は笑っている。

「おい、なんでもするから止めろよ、小田。」

「みんな、一回沈まれ。」

みんなの歓声が一気に止む。

「こいつがなんでもするってよ。してほしいこと募集しまーす。」

服を脱げだの、告れだの、非情な声が聞こえてくる。

(まだか、まだなのか・・・。)

その時、キスする直前だったリアの携帯が鳴った。

「なあに、パパ?」

電話を取ったリアは、みるみる顔が青ざめていく。

電話を終えたリアは、青ざめながら叫んだ。

「誰だ!俺のパパの会社の書き込みにパパの横領をリークしたのは!」

「小田。前言撤回する。俺は何でもしない。今はお前のその資金源ぶっ潰してやるよ!

そうだよ、リア。俺がリークしたんだ。なにか言いたいことはあるか?」

「嘘だ!僕の父さんの会社はアメリカだぞ。会社にリークなんて出来るわけない!お前のせいでパパはクビ。さらにこれからは借金地獄だよ!」

「ああ、それは可哀想に。なぜ俺がリークできたかはなあ。俺は昔から英語が得意だったんだよ。アメリカだろうが関係ねーよ。」

リアは膝から崩れ落ちた。

「にしても、なんで俺が裏切るってわかった?俺のことが親友のお前にはこんなことができないはずだ。」

リアの口調はどんどん荒くなっていく。

「ああ、できないよ。前の自分ならな。でも今の俺は違う。お前のことが親友だなんてこれっぽっちも思ってない。恵梨香からメールが来たとき気づいたんだ。ひょっとしたらこういうことになるんじゃねえかなってよ。」

「ち・・畜生・・、恵梨香ぁ・・。」

リアが恵梨香に近づく。

「やめろ。」

小田が言った

「な、なんで・・。お前には二百万も上げたんだぞ。止められる筋合いはない。」

「金のないお前に興味はない。後三軍に下げろ。これは、命令だ。」

そう言って小田は席に着いた。続々とみんなも、席に着いた。リアも席に着いたが、授業中、彼が顔を上げることはほとんどなく、目が真っ赤になっていた。


通達


神田 リア 三軍降格


以上


第四話 犯人捜し


帰り道

俺はとうとう一人になってしまった。恵梨香もいなくなり、リアも消えた。このままでよかったのだろうか。いや、いいはずだ。俺のやっていることは正しい。はずだ。

そんな時声をかけられた。

「どうしたの?そんなに暗い顔しちゃって」

どうやら、杏子のようだ。からかいにでも来たのだろうか。

「知っているだろ?俺は二人も親友を失ったんだぜ。」

「それは、可哀想。じゃあ、私がそばにいてあげる。」

やはり、こいつはからかっているのだろうか。だとしたら趣味が悪い。

「そんなのはいいよ。にしてもなんか用があってきたんじゃないのか。」

「そんな冷たい言い方しなくたっていいじゃん♪今日の壮士君すごいなって思っちゃって、英語得意だったんだね。」

そんな急に褒められても困る。なにしろ俺は恵梨香以外の女子とあまりしゃべったことがない。体実の小山さんなら話したことがあるが。こんなことを言われると、少しではあるが、ぐっと来てしまう。

「いや、そんなことないよ。あれは、たまたまだよ。」

「ふーん。そうなんだ。まあ、いいや。今度英語教えてくれない?話したいこともあるし・・。」

「おうおう、いいよ。またー今度な。」

「んじゃ、私ここからバスだから、じゃあね。」

「分かった。またなー。」

(なんかー、英語を教えることになったぞ。これって二人きり・・だよな・・。どうしよう、まあ、気にしない。うん、俺には恵梨香がいるんだ。)

家に着くと、今日までのことをいろいろ考えたが、やっぱり、解決の糸口はまだ見えてこない。やはり、一番知りたいのは誰が、何のために、こんなクラスカーストなどという、ふざけたことを始めたのか、ということだった。

(とりあえず今日は寝よう。)


次の日


クラスの様子はいたって静かだった。変わったのは小田がトップということ。だが、彼は、自分の利益が大事なので、いじめとかそいうことはしないらしい。俺の机に何も変化がないのが何よりの証拠だ。もちろんリアはその日から学校に来ることはなかった。

「みんな、聞いてほしいことがある。」

みんなが小田の言葉に振り向く。

「皆には昨日知ってもらっただろうが、俺には三軍に誰でも落とす権利があり、二軍に昇格させる権利がある。」

その言葉に、全員息をのんだ。

「つまり、俺にはどうとでもできる権利がある。そこでだ。みんなには一日千円俺に貢いでもらうことにした。強制はしない。だが、その場合どうなるか。わかるな?。」

みんなは当然のごとく財布を取り出し、千円札を取り出した。そしてその金を小田グループの二軍である神崎が集めていく。

「よしっ、全員分そろったな。」

枚数を確認し小田はにやけていた。チャイムが鳴り、一時間目が始まった。

そんな日々が一週間ほど続いたのである。

その一週間後。杏子とようやく予定があったので、カフェで英語を教えることにした。

「ありがとう、今日は来てくれて。」

「いやいや、たまたま予定が空いていたからさ。」

やっぱり、恵梨香以外の女子と話すと緊張する。

「実は、相談したいことがあってさ。クラスカーストのことなんだけど・・・。」

(やっぱり杏子も気にしていたのか。)

「あれが出来てから皆変わっちゃったよね。」

確かにそうだ、あれができてから皆変わってしまったのだ。

「そこでね、犯人を捜したいと思うの。犯人のスマホかパソコンさえ壊せば、更新できなくなる。それで、小田になにかの命令を裏切れば、小田はその人のカーストを落とそうとする。それで更新されなければ、犯人特定ということよ。」

さすがは、成績トップだ。ご明察どおり、それなら犯人が分かる。しかし・・・。

「それでも、誰が、小田の命令を裏切るんだ?」

「それは、私がやる。私は、一応一軍だから作戦がしてもカーストを落とすことはできないはずよ。」

「じゃあ、犯人のケータイは?」

「それは・・明日犯人らしき人を見つけて、その人の動きをみはっとくの。それでわかるわ。」

「たしかに、それならわかるね。」

「それで・・その監視役を、松野君にお願いしたいんだけどいいかな?」

「あ、ああ。それならお安い御用だよ。協力する。」

「じゃ、話は以上、また明日。」

と言い、帰ってしまった。英語・・なんもやってないや。

にしても、犯人はもうこれで決着がつくのだ。安心した。

次の日。早速、俺も犯人捜しを始めた。朝の千円回収から始まり、放課後まで見張った。

しかし、特に目立った人物は現れなかった。委員会の仕事で体育館の椅子を片付けているとき、裏側から声が聞こえてきた。

「これで、確かに三万九千円だ。」

「サンキューな。」

「なあ、これでこのまま俺は一軍としてやっていけるんだろうな?」

「ああ、もちろんだよ。金を払いつづけてくれれば君が降格することもないし、命令も下し続けることができる。」

「ありがとなあ。神崎。助かるよ。」

「ああ、これは契約だからな。忘れるなよ。」

「お、おう。」

俺は聞いてしまった。神崎が犯人だったんだ。あの集金係の神崎が、これで。きったああああ。このゲームは、


お   わ   る。


その帰り道、再び杏子に出くわした。

「どうだった?犯人見つかった?」

社交辞令のように問いかける。

「いやあ、見つかんなかったわ。」

「そっかあ。それは残念だったなあ。」

神崎が犯人だということは、口が裂けても言えない。いまなら自分で殺れる。こいつを巻き込みたくはない。

「んじゃあ、また明日も探すかな。」

張り切っているので放置しよう。どうせ、明日には終わるし。

そうやって家に帰り、寝床に着いた。明日には終わる。解放されるのだ。この地獄のような日々から。明日からは恵梨香とも帰れる。すべてが日常に戻る。戻るのだ。

次の日、俺はわくわくしていた。もうすべての準備は整っているからだ。あとはあいつが、それに気づくだけ。

「んじゃあ、今日も千円回収はじめるぞー。」

神崎が、一人ずつ集めていく。

「小田君、十人もでてないよ。」

なぜか神崎が震えている。ばれたと気づき、怖気づいたのだろうか。しかし、彼はすぐに席に着きスマホを開きだした。

「ええっと、金を出してないのは、青木、岸田、桑原、小林、近藤、坂元、須藤、松本、柳原、渡辺か。」

「命令。お前ら三軍いきだ。」

なにやら、神崎の忙しそうにスマホが忙しそうだ。当然だろう。十人も落とすなんて前代未聞だからな。

そしておれはゆっくり神崎に近づいた。

(これで、終わりだ。神崎。)

そしてやつのスマホを手に取り、窓の外へと放り投げた。

「なんてことするんだ、松野君。」

「なんてことする?おまえが犯人なんだろう?か・ん・ざ・き・く・ん。」

「ち、ちがう!ぼくは、そんなことやってない!」

神崎の顔は今にも崩れ落ちそうだ。

「面白い冗談だな、神崎。なによりこの十人の降格メールが来てないのが、何よりの証拠じゃないか。」

「うわあああああああああああああああああああああああああ!」

神崎は突然叫びだし、窓ガラスのほうへ突っ込んでいった。

「ばかっ、ここはごか・・。」

五階と言い終わるころには、神崎の姿はこの教室にはなかった。と同時に、鈍い音がした。最悪だ。そんなに追い詰めるつもりはなかったのに・・。馬鹿め・・。先走りやがって。

小田も絶望した様子だった。当たり前だ。もう彼に、地位もない。命令も下せない。

そう、神崎の死と同時にこのゲームは終了したのだ。

「お・おれの・・地位は?」

「そんなもんねーよ。」

静かに俺は言った。

「何故こんなことができた?俺には誰も逆らえなかったはずだ。なのに・・なのに・・。」

「そいつぁ、お前の検討違いだ。お前の命令に逆らうことなど簡単さ。」

俺は携帯を小田に見せた。


宛先 不明


明日このゲームから逃れる方法をお教えします。その為に、早朝の千円の回収をボイコットしてください。今参加者は十名程度です。


以上


「これを、十人に送ったんだよ。そしたら全員参加してくれてな。きっとみんな助かりたかったんだな。終わりだ。このゲーム!」


この言葉と同時に歓声が沸き上がった。泣いて崩れるもの。抱き合うもの。そう、この独裁政権が終わった直後のような盛り上がりだった。自由なのだ。もう俺たちは。

その時・・・全員のケータイが鳴った。


通達


小田 真樹 二軍 降格

松野 壮士 一軍 昇格

以上


血の気が引いた。


嘘だ。神崎は確かに、メールを送っていた。

あいつは・・・?

その時、誰かが階段を上がってきた。

ガラッ

ドアが開いた。先生だ。

「神崎が、みんなもう、知っているよな。なんか知っている者はいるか?」

当然だろう、鈍い音がしたんだ。先生が飛んでくるのも遅かったぐらいだ。

その時、俺は気づいた。みんながこっちを見ている。疑っているのだ。しょうがかったじゃないか。俺は悪くない。悪くないんだ。犯人が悪いじゃないか!さっきだって全員喜んでいたくせに、傍観者のくせに!

「松野、後で話がある。」

「はい・・・。」

先生との話は後日また聞くということですぐ終わった。


第五話  bad end


俺はまた結局何も変えられなかった。犯人は捕まらず、のうのうと生きているのだ。

許せない。もし今犯人が見つかれば、すぐに、すぐに、




コ ロ ス ノ ニ



そんな帰り道。またあいつに会った。杏子だ。のんきな奴だ。

「今日、残念だったね。」

「そうだな。」

「今日また英語教えてくれない?」

「いいよ。」

どうせまた英語は教えられる気はないくせに。今日は何もかも憂鬱だ。

カフェに入った。コーヒーのにおいがして、少し気分が楽になりそうだ。

「今日のことなんだけどね。ニュースに乗っている・・。」

「ああ、本当だ。」

パソコンのニュースを見してもらった。ああ、明日には捕まるんだろうか。ああ、憂鬱だ。

「トイレに行ってくるね。」

「あ、ああ。」

パソコンのニュースはいじめが原因と書かれていた。見終わったので、×を押し、ページを閉じた。デスクトップにクラスカーストと書かれたフォルダがあった。そこを開くと、今までのメールの内容が全て書いてあった。

やっと犯人を見つけた。俺は意外にも冷静だった。静かに彼女の水筒をあけ、リアから貰った睡眠導入剤を入れておいた。

「見ちゃった?」

その数秒後に杏子が帰ってきた。

「ああ、うん。でもなんで・・?」

俺は怒りすら感じない。もう殺したも同然だったからだ。何故このようなことをしたのか。そっちのほうが気になった。

「ばれたら仕方ないわね。恵梨香が憎かったのよ。あいつは純粋ぶって男に近づいて・・・。ぐちゃぐちゃにしてやりたいと思った。案の定あいつは、身の危険を感じてすぐにあんたと喋らなくなった。あんたの絶望する顔も面白かったし、あんたを三軍にして正解だったわ。そのあとの城詰君はさすがにやりすぎだと思ったから落としたの。これは私が考えたほんのゲームのつもりだったのよ。」

ゲーム感覚で作ったなら本当に恐ろしいやつだと思った。けれど、だとしたら杏子が負けで俺の勝ちだ。なにしろ俺は生きて、お前は死ぬからだ。そんなことを考えながら冷静に質問を続けた。

「ああ、じゃあ神崎は?」

「あいつは小田を支配しようとして偽メールを流していたの。最初は見逃してやるつもりだったけど、金までとるから、調子乗っているし邪魔だなって思ったわけ。それであんたがいたから、ちょうどいいと思ったのよ。」

「じゃあ、最初から犯人を見つけようとはしてなかったんだな!」

「ええ、そうよ。まさか飛び降りるとは思わなかったけど、自業自得だわ。」

「お・・おまえ・・こんなことして心は痛くならないのか?」

「まあ、確かに私も悪いけどあんたも一枚かんでいるのよ。あんたは最初に私が作り上げたピラミッドを崩した。そうなるともう、元に戻らないんだから!」

「ああ、そうか。」

「まあ、いいわ。もう好きにしなさい。壊れたピラミッドは基本総崩れなんだから。私を通報するなり、警察に突き出したり、ネットに書き込んだり何でもするといいわ。」

「もういい、おまえに言うことはなにもない。」

俺は静かに店を出た。

「はは。何やってるんだろ私、結局松野君は一回も振り向いてくれなかったな。中学校の頃から必死にアピールして。でもずっと恵梨香のこと見てた。だから、これを作って松野君を救って告る予定だったのに、やっぱ私、馬鹿ね。」

クラス成績トップの彼女はテーブルに伏せて泣き続けていた。

カフェを出たあと、俺の頭の中はもうよくわからない状態になっていた。こんな時恵梨香がいれば、恵梨香がいれ・・

「壮士君♪」

恵梨香の声だ。

「おう、恵梨香。どうした突然?お前いっつもこんな時間に帰ってんのか?」

「そうだよ。あのクラスカースト以来なんか帰りづらくなっちゃって(笑)本当はさ。いっつも寂しかったんだよ?」

「そうか、ごめんな恵梨香。心配な思いさせて。」

「ううん、いいよ!これからは一緒に帰れるし話せるんだもん。クラスのみんなは壮士君のこと一軍にはおもってないみたい。」

「まじかあ。明日の学校こわいなー。」

「でもね!もうこれで実質クラスカーストはなくなったし、明日からはないも同然だよ!明日からも、一緒に帰ろ、ね?」

「うん。」

これしか言葉が出てこなかった。不思議と涙は出てこなかったけれど、これで終わったんだ。これで俺のそこそこの日々は再開する。

「じゃあね、またね!壮士君!ばいばーい!」

彼女は微笑みながら、大きく手を振っている。やはり大人になったなあと感じた。

そんな彼女に俺も大きく手を振る。

「じゃあな!」

俺も微笑んだ後、家に向かって歩き出した。おそらく彼女も歩き出している。そんな時、もう一度彼女の美しい顔が見たくなり、もう一度振り返る。

「じゃあね、恵梨香!」

しかし、そこに彼女の姿はなく、ただ彼女が先ほどまで歩いていたコンクリートに、赤い液体がついているだけだった。

救急車から降りてきた隊員が急いで手当をしているみたいだった。

もう俺は数分間そこから動けなくなってしまった。だが、何故か涙も出ない。それどころか、「自業自得」という謎のワードが頭を駆け巡る。足は動けなかったけれど、道路にあるミラー越しの景色でようやく気付いた。そこには数人の男性がレーザーをこちらに向けている。その奥には少し太ったハーフの子の姿が。

「では、三週間ほどかかりましたが、任務を終了いたします。お支払い頂いたのは十万円ですので。ではまたの依頼をお待ちしています。」

「うん、ありがとう。松野、だれも勝ってねーよ、このゲーム。」



         bad end



「えー、只今入ったニュースによりますと、バスの中で倒れた急病人を救助しに向かった際に、誤って地元に住む女子高生を轢き搬送先の病院で死亡が確認されました。尚、バスの中で倒れた急病人も死亡した女子高生と同校であり、搬送先で死亡が確認されました。急病人の死因は睡眠導入剤の多量摂取であり、地元に住む男子高校生が事情を知っているとみて警察は捜査を進めています。以上臨時ニュースをお伝えしました。」


花言葉一覧表


アンズ       疑い


リンドウ      悲しんでいるあなたが好き


オダマキ      偽善者


シロツメクサ    復讐


クマガイソウ    見掛け倒し


エリカ       寂しさ


ダリア       裏切り


マツムシソウ    私はすべてを失った 

















  






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