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進撃の魔王様

時代は安寧と平和を得ていた。人々は安らぎの中で生まれ、祝福の中で朽ちていく。そんな誰しもが幸福である世界だった。…あの日までは…。


「軍勢確認。あれは…プリマヴェーラ王国の旗ですね。」


10代前半の容姿をした少女が報告する。ここはとある砦の外壁の上。下の荒野には赤い鎧や甲冑来た兵士がこちらに向かって歩いて来ている。ここを突破されたら俺達の城まで、妨害するものは何もない。つまりこの場所は最終防衛地点なのだ。


「はっ!随分刺激的じゃねぇか。朱李(あかり)。花火の用意は?」


敵の進軍状況を眺めながら、俺はその少女に確認を取った。(とどろき) 朱李(あかり)。俺達の軍の作戦参謀。この軍の脳みそにして、元人間でありながら人であることを辞めた同志なのだ。


「手はず通り、派手なものを準備しております。」


金髪の少女はそう答える。片腕がそういうのだ。期待してて損はないだろう。


「はっはっはー。魔王殿、敵が来ましたぞ!数は5000と言った所でしょうか。王国軍にしては少ないですなぁ!」


手でシルクハットを抑え、杖を左手に掛け、タキシードを着た中年男性が声高々に報告してきた。


「わーってるよ。アリステル。これは様子見だ。俺達の力がどんなもんか、確かめに来てんだろ。」


「はっはっはー。随分と舐められたもんですなー。我々に対してたった5000とは!ここは吾輩が蹴散らしてご覧入れましょうか?」


アリステル・ルチアーノ。超一流の人形師だ。彼1人で何千何万もの人形を操れる。人呼んで人形軍(ドールフォース)。彼ならばこの程度、蟻の群れを踏みつけるようなものだ。ちなみに彼は最初から人間でないらしいのだが、何の種族かは誰も知らない。アリステル自身も人形ではないかと、まことしやかに囁かれている。


「いや、ここは俺1人でいく。」


だが、本筋はもう決まっている。ここは単騎で打ち破ってこそ、俺達の価値が上がるというものだ。


「なんと!我らが王1人で向かわれるのですか!それは幾ら何でも無茶ですぞ!」


「大丈夫だ。策はある。人形部隊は後詰のため待機だ。合図を出したら総員出撃。雑兵共を飲み込め。」


そう言うとアリステルは「ははー。」と言い、深々とお辞儀をした。まったく、相変わらず演技がかった言動をする奴だ。

それはともかく今はこの戦いに勝つことを考えよう。この戦いに勝利して俺達の名前を世界に響かせるんだからな。


「じゃあ始めるとするか!朱李、俺が走り出したら仕込みを起動させろ。」


彼女は「承知しました。」といい準備に取り掛かった。ならばこちらも行動開始だな。勢いをつけて外壁から飛び降りる。そしてそのまま着地。たかだか10mくらいの高さだ、もちろん無傷である。体制を整え、一気に駆ける。すると突如地面が盛り上がり、溶岩が噴出し始めた。


「ははははは!朱李の奴、最高に刺激的な花火を用意しやがって!いいねぇ。やっぱ戦いはカオスとカオスが無くっちゃなぁ!!」


地上が地獄絵図になろうとも走る勢いは止まらない。いやむしろ、速くなってきている。しばらくすると敵の軍が慌てふためく様が細かく見えてきた。距離にして100m。


大軍を単騎で攻めるならば今だ。手に自分の武器。漆黒の大剣、《ヨルガナレーン》を召喚する。魔王剣とも呼ばれるその黒塊を握り、一息で間合いを詰めた。大きく振りかぶり、敵に切りかかる。一振りで100人単位の人間が吹き飛ぶ。数十人は上半身だけが飛んでいた。これが魔王のみが握ることを許された剣の力である。


「あ、慌てるな!!隊列を立て直せ!敵はたった1人だ!!」


部隊長らしき人物が指示を出す。しかし周りはマグマが吹き出ているのだ。固まってしまったら最後、まとめて蒸発という運命が待っている。混乱が混乱を呼び、そうしているうちに大量の人間が死ぬ。いつの間にか5000人の軍勢は100人程まで減っていた。


(そろそろだな。)


全滅されては俺達の名前を知らせる者がいなくなってしまう。合図を送り、朱李に仕掛けを止めさせ、アリステルに人形を出陣させた。


それを見た兵士達は完全に絶望した顔になった。もはや彼等に戦意はない。そう思い立ち去ろうとすると、その中の1人が俺にこう言ってきた。


「な、なんなだよお前たちは!なんでこんな無意味な戦いをするんだ!!」


俺はニヤッと笑い、彼に対し振り向きこう言った。


「俺達はゼーガリベリオン!!世界に刺激を与える、大いなる反逆者!!安寧という惰眠を貪っている人類の目を、拳によって覚まさせてやるのさ!!!」


兵士は呆気にとられ、言葉が漏れたかのようにこう発した。


「狂ってる…狂ってやがる!この魔王め!秩序を敵に回して勝てると思うなよ!!」


「ああ、そうだ。俺が魔王だ。以後よろしくな。」


勝敗は決した。これ以上は人形に任せても良いだろうと思い、砦へと戻る。途中魔道通信にて、アリステルには数名は逃がせという指示を出しておいた。俺と問答をした兵士が生き延びていたら都合がいいが、それは俺の運次第だな。


「お帰りなさいませ、魔王様。余興はお楽しみいただけましたでしょうか?」


砦では朱李が俺の帰還を待っていた。


「ああ、最高に刺激的だったぜ、流石は朱李だ。」


そう言い彼女の頭を撫でる。すると彼女は嬉しそう目を細め、「勿体なき、お言葉です。」と言った。


「他の戦線はどうだ?」


とりあえずは現状確認だ。今俺達は4カ国を相手にしている。さっきのプリマヴェーラ王国他に、エスターテ帝国、アウトゥンノ法国、インヴェルノ共和国の4つだ。というか俺達の本拠地がこの4カ国の国境が重なる地点にあるため、必然的にそうなっただけの話ではあるのだが。


「各方面の『七黒堕天(しちこくだてん)』から連絡が入っております。各国が幾度となく進行してきたそうですが、すべて撃退したとのことです。」


七黒堕天。このゼーガリベリオンの7人の幹部のことを指す。彼等は一人一人が並みの兵士では歯が立たない強者達で、そして俺に忠実に仕える仲間である。まぁ、いずれ裏切りそうな奴もいるにはいるのだが、そうなったらそうなったで、別に構わないと考えている。ちなみに朱李もアリステルも七黒堕天の1人である。


「まぁ、あいつらなら当然か。んー。よし、全員城まで来るように伝えろ。あいつらに話すことがある。」


朱李は「かしこまりました。」といい、各員に連絡を取り始めた。するとアリステルが俺の前に姿を現す。


「はっはっはー。流石ですな、魔王殿。あの軍勢を相手に汗一つかいていないとは。」


「そんなことねぇよ。溶岩が熱くてな。シャツがびしょびしょだぜ。」


「おや?そうには見えませぬが。乾燥魔法でもお使いならましかな?」


「いや、あまりの熱さに濡れて直ぐに乾いたんだよ。」


嘘である。熱さは魔力障壁で防いでいたし、この程度の運動は早朝のジョギングにも満たない。つまり本当に汗をかいていないのである。


「はっはっはー。流石は魔王殿。シャツまで規格外とは。このアリステル。感服仕りましたぞ。」


「ふん。言ってろ。あ、そうだ。七黒堕天を全員城へと呼ぶつもりだ。お前も準備しろよ。」


「はは!承知しました。しかし、それではこの砦はどうなさるおつもりなのですかな?」


「別に。それは朱李がやるだろ。それにここの兵のほとんどはお前の人形だ。何かあればお前が気づくだろ。」


「ふむ、それもそうですな。では監視用の自動人形を増やして置くことにしましょう。」


「ああ、頼んだ。」と言い、一旦アリステルと別れる。正直な所、城と砦はマーカーという繋がりがあり、ゲートという魔法を使えば一瞬で行き来できるのだ。なので非常事態が起きても瞬時に対応することができ、あまり厳重な警戒は必要ないと言える。

というわけでゲートを使い、一気に何キロも離れた魔王城へと飛ぶ。リンク先にしている入り口前の庭にて、人影が一つ見えた。


「よぉ。リリアンテューヌ。早いな。」


「はぁん?あ、魔王様!」


リリアンテューヌ。人狼の女の子。彼女も幹部の1人で、古代の武将が使ったとされる、方天画戟を武器に敵陣へと突撃し、華奢な見かけによらない剛腕で無数の敵をなぎ倒す。

それ以上の彼女の長所と言える点は無限に近いスタミナだ。1日中ノンストップで全力疾走ができる奴は世界広しといえど、彼女しかいない。その特性を活かしてゼーガリベリオンの特攻隊長を任されている。今はほぼ人間の姿をしており、違う点と言えば、狼のような耳と尻尾が生えている所だ。本気になると完全に狼になるらしい。ちなみに巨乳である。


「魔王様!魔王様!あたしいっぱい人間を殺しましたよ!魔王様のためにいっぱいいっぱい殺しましたよ!ですから…その…。」


彼女は走ってこちらに近づいてきて、上目遣いで俺に何かをねだっている。これは恐らく…。


「ああ、良くやったな。さすがはリリアンテューヌだ。」


そう言い、彼女の頭を撫でる。すると彼女は嬉しそうそうに目を細め尻尾を振る。これで正解のようだ。


「まったく、はしたない雌犬でござるにゃ。」


突然声が聞こえ、思わず手を止める。この特徴のある語尾は…。


「はぁん?なんか文句でもあんのかルジーナ!」


「いや、別に。ただ、昼間から盛っている雌犬がいるなと思っただけでござるにゃ。」


ルジーナ。猫又の女の子。卓越した気配遮断と、身体能力。さらに夜目が誰よりも利くことから、隠密部隊の隊長を担っている。彼女の武器はその猫の如き身体能力と、長く鋭く伸ばすことのできる爪だ。この爪は鉄すらもバターのように切り裂くことが出来、しかも音がでないため、この爪にて幾多の要人を暗殺してきた。リリアンテューヌと同様に耳と尻尾が出ている。猫又らしく尻尾が2つあるのが彼女の特徴だ。あの語尾に関しては…今は触れないでおこう。ちなみに美乳である。


「はぁん!?それ喧嘩売ってんだよな。あたしに喧嘩売ってんだよなぁ?魔王様が撫でてくださっている最中に邪魔した上、その物言い…。よっぽど死にたいみたいだなぁ!」


尻尾を逆立てたリリアンテューヌは方天画戟を召喚し、その切っ先をルジーナに向けた。


「ふっ、突撃バカが某に勝てるとでも?返り討ちにしてやるでござるにゃ!!」


ルジーナもそれに呼応するかのように爪を伸ばす。不味いな。どうもこの2人は仲が悪い。犬猿の仲もとい犬猫の仲なのだ。恐らくその原因は俺かもしないのだが…出来ればそう思いたくは無いな。


「あー。ルジーナ。お前からの報告も聞こうか。」


2人が衝突するのを防ぐため、そう催促する。これで注意がこちらに向くだろう。ルジーナは爪を引っ込めて、俺の目の前まで駆け寄り、片膝をついた。


「は!某達『アンダーズキャッツ』は各国へ密偵を派遣し、情報収集に務めてますでござるにゃ。今の所有力な情報は掴めておりませぬが、いずれ王のご期待に添えるよう各員奮闘しているでござるにゃ!」


隠密部隊『アンダーズキャッツ』は発足してから日が浅く、人員もさほど多くない。こちらとしても無理な行動されて、貴重な人材を失うのは避けたい。現状維持で問題はあるまい。


「いや、お前達はよくやってるさ。ルジーナ。部隊員には正体がバレないようにすることを徹底させろ。そのためなら収集に時間が掛かろうと構わない。」


「はっ!…ところで王…。」


ルジーナも上目遣いで何かを要求しだした。これはもしかして…。


「ああ、なるほど。ご褒美か。ほれ。」


と言い、彼女の頭も撫でる。するとルジーナは二本ある尻尾揺らし、気持ちよさそうに目を細めた。


「はぁん!盛ってんのはそっちじゃないか。とんだ雌猫だね!」


邪魔されたことに腹を立てているリリアンテューヌが、ルジーナに対し皮肉を言う。せっかく喧嘩を止めたのに、ここでまた火が着いたら元の木阿弥だ。ここは彼女も大人しくなってもらおう。


「リリアンテューヌもほら。」


といい、彼女の頭も撫でる。満足するかのようにまた尻尾を振った。2人とも大人しくなったので、これで万事問題無しなのだが、この状態を誰かに見られたらなんか不味い気がする。


「マオウ。ナニヲシテイル。」


そう声がかかり、後ろ見ると巨大な影がこちらを見下ろしていた。オーガのチルパニーだ。彼は3mを越える巨体と、それに見合った金棒を用いて戦う。鍛え抜かれたその肉体刃を通さず、その人間くらい金棒の前では強固な甲冑も紙同然である。まさに『戦鬼』の名に恥じない働きをする。リリアンテューヌが点による攻撃を得意とするなら、チルパニーは面による攻撃を得意とする。その趣向と硬い体から動く防壁としての役目を任されている。


「よぉ、チルパニー。来てくれて嬉しいよ。」


彼の方を向きながら、2人から手を離す。またしても邪魔されたのに彼女達は残念そうな顔をするが、露骨な敵意はチルパニーに向けない。やっぱり仲いいんじゃね?


「オレ、呼バレタ。ダカラ来タ。」


「そうだとしても、嬉しいことには違いねぇよ。聞いたぜ、アウトゥンノの連中を打ちのめしたんだってな。流石は戦鬼だ。」


そう褒めるとチルパニーは首を横に振る。


「オカシナトコロデ、撤退シタ。恐ラク、マタ攻メテクル。」


チルパニーの恐ろしい所はその力だけではない。実は頭もキレるのだ。ただ、攻めるだけではなく、時と場合によっては引くこともやむ無しと判断できるため、たった1人でインヴェルノ方面を任されている。


「なるほどな。お前が言うのなら間違いないだろう。だったら話しはなるべく早く終わらせることにするか。ほら、行くぞお前ら。」


王の間へと歩き出す。すると3人は後ろへ付いてきた。これで七黒堕天の紹介は5人。残り2人は…、招集に応じるかわからないな。

歩いていると侍女達がこちらに頭を下げる。この城には数多くの従者がいて、その中には人間も多数存在する。孤児、呪い持ち、犯罪者。ここ以外誰も受け入れてくれない者ばかりだ。そんな奴らを向かい入れて、俺達はここまで大きくなった。無論問題は絶えないが、ここにいる奴らは皆、俺の家族だと思っている。


重い扉を魔法で開け、一際豪勢な部屋に入る。ここは王の間。俺が偉そうふんぞり返っている場所だ。入って左側に誰かがいた。


「随分と早いな、フリード。」


「たまたま早く着いただけだ。俺の担当していた戦線は比較的、侵攻が少なかったからな。」


ぶっきらぼうに答えたのは竜種のフリード。本来の姿はチルパニーよりもでかく、10mをゆうに超えて城内に入れないため、謁見する時は人形に化けている。人の姿の彼は常にフードを被っており、ロングコートを着ている。これは自身の鱗を表しているらしく、フードは逆鱗だそうだ。


「いや、良くやっているさ。お前は居てくれるだけで、心強い。魔族の支配者たるドラゴンの中でも、頂点に君臨するお前が俺の味方をしてくれるなんて、奇跡に近いからな。」


心に思ったそのままの事を口にする。この世界におけるドラゴンは天災に近く、人の力では逆らいようもない存在だ。何しろ人間が使用すればその日はもう動けなくなる規模の魔法を、何発も連続して撃ってくるのだ。しかも鋼よりも硬い体に、不死身とも言える体力。普通のやり方では彼等に勝つのは無理だろう。

そのドラゴンにおいて、幻とまで言われた最強の龍、それがフリードだ。彼を仲間に出来たのは本当に偶然で、俺が誇れる数少ない出来事だと言える。


「ふん。褒めても何もでねぇよ。ただ…その…ありがとよ。」


そう言い、フードを目元まで下げた。あ、照れてるな、こいつ。後ろの方ではリリアンテューヌとルジーナが羨ましそうにフリードを見てた。やめとけ、あいつには勝てねぇよ。


そうして話に花を咲かせているうちに、朱李とアリステルも王の間に到着した。これで幹部は後1人。まぁ、無視でもいいかと、全員配置に付く。俺は玉座に座り、幹部達はその左右に縦に一列で並ぶ。「さて、と。」と話を始めようとした時、扉が勢い良く開いた。


「あら?妾が最後ですの?皆さん随分お早いようでして。」


派手な赤いドレスを着た女が入ってきた。


「遅刻ですよメアリーさん。魔王様がお話を始める時に来るなんて…。」


「あら、朱李さん。まだ話していないのでしょ?ならセーフですわ。」


とんでもない理論を披露した彼女は七黒堕天の最後の1人。吸血鬼の真祖、メアリー・ザ・ブラッド。『吸血鬼女王(クイーンヴァンパイア)』の異名を持つ彼女は自身の血を武器にして戦う。自分の体を切ったり切られたりして傷を増やし、そこから出る血を使って敵を倒すのだ。自身の血と返り血によって白い肌が紅く染まることから、『血染めのメアリー』とも呼ばれている。今年で1400歳のベテランヴァンパイアだ。ちなみにそれなりに大きい


「なぁに、構うことはねぇ。来てくれて嬉しいぜメアリー。お前の美貌が健在のようで何よりだ。」


「まぁ。何を当然なことを仰っていますの?妾は常に美しい。世界の常識ですわ!」


彼女はいつもこんな感じである。実力は幹部の中でも屈指なのだが、如何せん性格に難があってとても扱いづらい。とはいえ結構協力的で、今回の防衛戦ではフリードと共にアウトゥンノと戦っていたはずである。最初に着いた者と最後に着いた者が同じ場所から来るとはな…。


「あー、まぁ、あれだ。話を始めるからいつも位置に来いよ。」


そう言い、配置に付くよう促す。メアリーは頷き、コツコツと音を鳴らして自分の場所に立つ。何はともあれ全員揃った。魔王軍ゼーガリベリオン。その支柱となる7人の幹部、七黒堕天。俺の最強の仲間達、彼達に対して俺は言葉を投げかける。


「さぁ、七黒堕天の諸君。朗報だ。俺達は正式に世界の鼻つまみ者となった。」


全員がこちらを見る。


「なにを今更。あたし達は元から腫れ物扱いじゃないですか。」


「ああ、そうだなリリアンテューヌ。だが、今回は違う。奴らは俺達を完全に敵と見なしたのさ。そこらのゴミではなく、排除すべき敵と認知したのさ。結構なランクアップだと思わないか?」


「そうでござるにゃ。今まで某達は良くて荒くれ共の集まりでござったからにゃ。それが軍と見てくれるのならば、まさに僥倖と言えるでござるにゃ。」


「ルジーナ、そこまで卑下することはねーよ。お前達のすごさは俺がよく知っている。ただ、それが世界中に広まったと言うだけの話だ。」


「じゃあとうとう、アレをやんのか?」


「ああ、フリード。ようやくこの計画を実行に移すときが来た。」


「ウォォォォォォ!!オレ、戦ウ!ブッ殺ス!!」


「落ち着けチルパニー。今から興奮していたら、この先持たないぞ。」


「妾に似合う宝石があれば良いのですが…。」


「ああ、メアリー。きっとあるさ。いくらでもな。」


「はっはっはー。人形の作りがいがありそうですなー!どれ、ここらで新作を投入してみますかな。」


「期待してるぜ、アリステル。素材も大量に手に入るはずだ。出し惜しみはしなくていいぞ。」


「…どのような道でも。私はあなた様に付き従うだけです。」


「朱李…。お前のその智謀、俺のために使わせて貰うぜ。」


そうして七黒堕天全員と話をする。道は決まった。あとはただ突き進むのみだ。


「これより、世界に対して宣戦を布告する。戦力差は10億対3万。だが、数字などなんの意味もない!俺達は必ず勝てる!」


おー!という歓声が上がる。すると朱李は、


「まずどこから攻略いたしますか?」


と、聞いてきた。ふむ、どうせなら4つすべてを同時に攻めたいが、戦力が足らないか…。


「ならばまずはインヴェルノ共和国にするか。確かチルパニーの報告によると、また攻めてくる気配があるらしい。やられる前にやるとしよう。」


朱李は「かしこまりました。」といい、魔道コンソールを開き、作業を始める。とりあえずは彼女に任せて問題ないだろう。


「よし、じゃあ俺と共に出陣したいやつはいるか!?」


「リリアンテューヌ。いつでも行けます!」


「ルジーナ、常に王のお側に。」


「フリード。使いたければ何時でも使いな。」


「チンパニー。命令ナラバ行ク!」


「メアリー・ザ・ブラッド。美のためならばどこへでも行きますわ。」


この5人が名乗りを上げた。アリステルと朱李は、


「吾輩は今回は人形作りのため、待機でお願いしますぞ!」


「私は兵站の準備と兵糧の確認。長期的な戦闘に備えて、色々手回しをいたします。」


といい、今回はついて行かないらしい。理由は最もだし、必要な事なので仕方ないだろう。


「よし!ならばリリアンテューヌとチルパニーを連れていく。ルジーナはいつもの任に、他の者は各々の砦の守護に当たれ。朱李、悪いがエスターテ帝国方面砦の指揮を頼む。」


そう言うと呼ばれた2人は嬉しそうな顔をし、それ以外の者は真逆の表情を浮かべた。

エスターテ側の砦はリリアンテューヌと幹部ではない奴が指揮をしていたため、リリアンテューヌが抜けるのは少々痛い。プリマヴェーラはアリステル1人でも十分だろうから、朱李をそちらに回そう。


「かしこまりました。魔王様、派遣する部隊の編成が整いました。何時でも出発が可能です。」


さすがは作戦参謀。仕事が早い。


「サンキュー。じゃあ早速行くとしますか!リリアンテューヌ、チルパニー、準備はできてるか?」


「はい!」「オウ!」


「OK。じゃあ行くぜ!」


これは魔王の存在が世界に知られ始めたころの話。世界は未だ小さな芽にすぎなかった魔の王に何ら危機感を抱いて無かった。

直後にに人々は思い知らせる。永遠は存在しないと。誰しも幸せになれる方法などないのだと。刺激というスパイスは人を狂わせる毒なのだと。

これは世界を壊した大いなる反逆者達の物語である。


「さあ、刺激的な戦争の始まりだぜ。」


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