47話 5日目:昼 【第三王子】事件の真相
【続・クラウディス視点】
数日前。
私は夜の噴水広場にいた。
物陰から、奇麗に着飾ったセレステを見ていた。
月光に輝く乙女。
天女の様な美しさ。
何かを期待する雰囲気。
彼女は美しかった。
まさに天使だった。
夜空に煌く星のようだった。
しかし。
その美しさは自分に向けられているものではないと思うと。
途端に殺意に変わった。
セレステは私のためではなく、あの男のために着飾っているのだ。
あんなどうでもいい男のために・・・
初めから呼び出して殺すつもりだった。
あの男に取られるぐらいなら。
永遠に時を止めて私のモノにしたかった。
セレステの美しい姿は。
その決意を強く後押しした。
私はローブをまとう。
あの男、アダム伯爵がつけている香水をまとって近づく。
虫唾が走る匂いだったが、これは必要な事だった。
セレステと話すためには。
最後のチャンスを彼女に与えるためには。
「だーれだ?」
薬品で声をかけて後ろから声をかけ、彼女の目を塞ぐ。
昔。
私がセレステと遊んでいたときにかけた、言葉と仕草。
それと全く同じ動作。
彼女なら。
セレステなら・・・
きっと私の正体に気づいてくれると信じていた。
昔の様に。
「お兄様」「お兄様」といって、雛鳥の様に私を求めてくれると。
だが・・・
セレステはアダム伯爵が来たと思ったのか。
嬉しそうな声を上げる。
「もう、ビックリしましたわ。
いじわるいしないでください。
待ちくたびれていたのですよ。
あなたが来ないのかと思って。
城から抜け出すの大変だったのですから」
私は深く悲しんだ。
落胆した。
そしてますます殺意を強めた。
私に気づかず、あろうことかアダム伯爵と思ったのだ。
ここで私の事に気づけば。
殺す事をためらったのに。
昔の様に「お兄様」と慕ってくれさえすれば・・・・
たtだ、それだけでよかったのに・・・
一瞬。
ショックで意識を止まってしまうが。
瞬時に首筋に注射器で薬品を混入する。
体の動きを止める薬だ。
もう、彼女は変わってしまったのだ。
雛鳥のような彼女はいなくなってしまった。
ならば容赦する必要はない。
さっとセレステは振り返り。
私の顔を見る。
その顔に浮かんだのは驚愕。
「な、なん・・・で」
小さな声が聞こえるが。
だんだんと消えていき。
彼女の体から力が抜けていく。
まるで眠くなってウトウトする子供の様に。
私の腕に中に納まるセレステ。
かわいい彼女を手にかけるの忍びないが。
やらなければならない。
そうしなければ私の気持ちが治まらない。
彼女がこれ以上汚される前に、美しい姿で留めるのだ。
私はセレステを銅像につるし。
磔にした。
彼女に釘を打つのはつらかったが。
やらなければならない。
必要な事だから。
一本一本に私は気持ちを込めた。
私の真心を彼女の体の中に注ぎ込んだ。
彼女の体に私を刻み込みたかったのだ。
通常の方法では想いは伝えられない。
誰も彼女にした事がない方法で想いを伝える。
彼女に初めての体験を与える。
強い刺激と共に、私の想いをセレステに刻み込む。
セレステとアダム伯爵の関係を知ってから。
私はずっと心を痛めてきたのだ。
セレステが変わっていく度に心をえぐられた。
嬉しそうにしている姿を見ると虫唾が走り。
深く傷ついた。
その想いを全て注ぎこむ。
彼女にも同じ想いを感じて欲しかったのだ。
同じ想いを感じてこそ、二人は結ばれるのだから。
あの男ではなく。
セレステと心で強く結びつくのは私でありたかった。
この世をさる最後に感情を抱く相手は。
私であって欲しかった。
その想いがどんなものでもかまわない。
愛情でなくとも、恨みでも構わない。
ただ、何も感じて貰えないのはイヤだった。
人は死ねは止まる。
だからこそ。
最後の想いが大事なのだ。
想いが強ければ強いほど。
尚よい。
彼女が止まる瞬間に想いを抱く相手は。
私であって欲しかった。
私を想って止まって欲しかった。
セレステなら悪霊になって私にとりついてもらってもかまわない。
いいや。
それの方が嬉しい。
なぜなら。
それだけ強く私を想ってくれている証拠だから。
全ての釘を打ち終えると。
私は自分の腕にナイフを突き立てた。
セレステだけに痛みを与えてはいけない。
私も彼女と同じ痛みを味あわなければいけない。
たとえ少しだけだとしても。
それは必要だった。
この傷がセレステとの絆になるのだから。
私と彼女だけの印だ。
気分が高揚していたためか。
ナイフで腕をさほど傷つけても痛みは感じない。
心地よい刺激だ。
私は腕の刺激を感じながらも、変わり果てたセレステの姿を見た。
銅像に磔に去れ、血まみれの少女。
天女は堕ちたのだ。
堕天した。
しかし。
ある種美しくもあった。
血で穢れた彼女はこれまで以上に美しかった。
これが正しい姿だったのかもしれない。
彼女には相応しい姿なのだ。
こんな彼女の姿を見たのは私が初めてだろう。
それに。
セレステを最後に劇的に変えたの私で。
もう、誰にも彼女を変える事はできないのだから。
永遠に私だけの彼女になった。
彼女を止めて永遠に変えたのは私だ。
自分が成し遂げた偉業に、深く満足した。
これまで行ったどんな行為よりも満足した。
心が洗われる気分だった。
今まで味わった事のない爽快感。
フワフワとした浮遊感まで感じる。
まるで神になった気分だった。
そう。
私は今神になったのだ。
生まれてから。
最高の夜だった。
◇
記憶から戻ると。
途端に世界は灰色に満ちてきた。
新しく生まれかわった。
私が新しくこの世に誕生したと思ったのは勘違いだったのかもしれない。
私の意志は徐々に弱くなり・・・
なんだか眠くなってきた。
薄れいく意識と、閉じるまぶた。
全てがまどろみの中、ゆったりと進んでいく。
機能を停止していく私の体。
曖昧としてきた私の世界。
最後に視界に映ったのは、真紅にそまった空だった。
私は炎に焼かれながら意識を失った。
最後に脳裏に浮かんだのは、セレステの笑顔だった。
新連載始めました。
↓
「彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。」
※ページ下部にリンクがございます。
※完結まで毎日投稿です。




