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44話 5日目:昼 【第三王子】アダム

【続・クラウディウス視点】




 騎士に拘束されたアダム伯爵は、何が起こっているのか分かっていないようだ。

 彼がいつから部屋の中にいたかは分からないが。 

 これまでの話を全部は聞いていなかったらしい。


 騎士に連れられたアダム伯爵が私の隣に到着する。

 

 彼の手足は拘束され、口にも拘束具がとりつけられている。

 死刑台で余計な事を言わせないための対応だ。


「アナスタシア公爵令嬢、マリアンヌ夫人。残念です」

「何がですか?」


 アダム伯爵を見てか、やや気勢が弱まった公爵令嬢。

 彼女の弱々しい姿を見ていると満足する。


 今は私の方が立場が上であり、こちらは死刑というカードをもっているのだ。

 そもそも私は王族であり、彼女達は貴族。

 私が真面目に応対する必要もなかったのだ。


「とても楽しいお話でしたが、死刑の時間が来てしまったようです」

「そんな・・・」


「これより、予定通りアダム伯爵の死刑執行を行いたいと思います」


「な、何をいっているのですか?

 私は今この場で、第三王女様殺しの真犯人を述べたと思いますが」

「そうです。第三王子様。私の息子は無実なのです」


 公爵令嬢と夫人は不服そうに抗議する。

 だがもう遅い。

 アダム伯爵がくるまでにどうにかできれば結末は違っていたかもしれないが。

 

「悲しいことですが、死刑は審問で決まった決定事項です。 

 ここでのおしゃべりと審問では、比べるまでもございません」


 「まぁ!」っと口を押さえる公爵令嬢に。

 悲しみに震えるマリアンヌ夫人。


 彼女達の姿を見ていると、先程までの陰鬱な気分が吹き飛ぶ。

 爽快だ。


 これでこそ私だ。

 この国の人々は私の下にひれ伏せばいいのだ。

 王族たる私にはその資格があるのだから。


「第三王子様。自分の妹を殺して・・・

 よくもまぁ、そんなことが言えますわね」


 悲しいかな・・・負け犬の遠吠えか。

 彼女の言葉に対しては何も感じない。

 先程までは、私を倒さんばかりの勢いを誇っていたのに。


「公爵令嬢。妄想も大概にして頂きたい!

 あなたのお話は楽しかったのですが、民衆が死刑を望んでいるのです!」


「それは話しが・・・」


 私は彼女の話をさえぎる。

 最後まで聞く必要も無い。


「ここまで民を集めておいて、何もなかったではすみません!」

「今日は慰霊祭なのでは?死刑執行日ではなく」


「違います。民が望んでいるのは死刑です。

 民衆の罪人の死刑を望んでいるのです!」

「そんな事・・・」


「その願い、民意を今実現するのです!」


 キッときつい目で睨んでくる公爵令嬢。

 彼女の視線を笑顔で受け流し。

 

「公爵令嬢、夫人。ですが、あなた方にも情けをかけましょう」

「「えっ」」


 意外そうな顔をする2人。


「死刑までの余興としては十分な役割を果たしてくれたのです。

 その点を考慮してあげましょう」


 こちらを疑うような二人。

 私の言葉を信じていないようだ。

 だが、私の申し出を断る事はあるまい。


「アダムの死刑を延期してくれるのですが?」

「息子の罪を消してくれるのですか?」


 各々の希望を述べる彼女達。 


「いいえ、違います」

「それなら何なのですか?」


「アダム伯爵に最後の言葉があればどうぞ。

 その時間を提供すると言っているのです」


「それだけなのですか?」

「そんなぁ・・・」


 一瞬希望に満ちた彼女達の顔が曇る。

 とてもつもなく良い気分だ。


 やはり私はこうでなくてはいけない。

 自分の言葉で民を操る事に高揚感を感じるのだ。


「公爵令嬢、最後の時間はもう始まっていますよ」


 私を睨む公爵令嬢だが、しぶしぶと引き下がりアダム伯爵に近寄る。

 彼女達は口々に励ましの言葉をかけている。



 どうやら公爵令嬢は元夫、アダム伯爵に未練があるようだ。

 自分で死刑に追い込んだも同然。それに自分を裏切った元夫なのに。

 彼女の心はよく分からない。






 暫く彼女達を観察した後。


「では良いでしょうか。無事にお別れはすみせたと思いますので」

「待って下さい。私はまだ息子と話しが」


「時間ですよ」


 私の言葉で騎士がアダム伯爵を夫人と公爵令嬢から離す。


「それでは予定通り、死刑を執り行うとしましょう」


「第三王子様。無実の者を裁くのですか?」

「息子は無実です」


 公爵令嬢と夫人が死刑台への道を塞ぐ。


「やれやれ。死刑の邪魔をしないで頂きたい」

「アダムは無実です」

「そうです、息子は誰も殺していません」


「全く、死刑は国儀なのですよ。

 今すぐ道を空けてください」


「アダムは無実です」

「息子は無実です」


 どうやら話し合いは通じないようだ。

 さすれば仕方が無い。


「警告です。すぐに道を空けてください。

 華麗なご夫人方に強い手段はとりたくないのです」


「アダムは無実です」

「息子は無実です」


 同じ事を繰り返す彼女達。

 一歩たりともその場所を動きはしない。

 

 やれやれ。困ったものだ。 


「いいでしょう。衛兵。この二人を捕らえるのです。

 死刑の妨害。それにこの私に対する数々の暴言。

 このまま放置するわけにはいきません」


 ふふ。

 ここまでは面白かったが、最初から力づくで排除すればよかったな。

 武力を持ってすれば、小娘と夫人の一人や二人、造作も無い。 


 だが、騎士達は誰も動かない。


 んん?

 どうした?

 何故だ?


 どうして誰も動かない。

 私が命令を下したのだぞ。

 王族である私が。


「聞こえなかったのですか?今すぐこの2人を捕らえるのです」


 私の声は響くがどの騎士を動かない。

 おかしい・・・

 どうなってるのだ?


「おい、聞こえなかったのか?

 私、第三王子が命じているのだぞ!」


 シーンと静まり返った会場で自分の声だけが響く。

 皆が私を見ているが、誰も動こうとしない。

 

 一体、どうなっているのだ?

 何故誰も反応しない?

 ええい、今日は不思議なことばかり起こりおって。

 

 

 死刑台の道を塞ぐ公爵令嬢を見ると、彼女がニヤリと笑っているのが目に入る。

 いまいましい笑顔だ。

 だが何故笑っているのだ?

 これからアダム伯爵は死刑になるのだぞ。


 それに隣にいる夫人は、私ではなく、私の後ろを見ているようにも思える。

 アダム伯爵を捕らえている騎士も同じだ。

 

 何故だ?

 皆は一体誰を見ているのだ?

 私ではないのか?



 トントン



 トントン



 トントン



 どこからか足音が聞こえてくる。

 大理石の床に響く甲高い音。


 その音は私の後ろからで、部屋の入り口の方から聞こえてくるようだ。   


「全く情けないですね。兄上。

 よもや王族である兄上が、その様な無礼な行動をとりますとは」


 この声・・・

 それに私を兄上と呼ぶ者。


 そんな者は一人しかいない。


 私はとっさに振り返る。

 足音はさらにこちらに近づいてくる。

 姿は見えないが、貴族達を掻き分け向ってくる者がいるのだ。



 トントン



 トントン



 トントン



 まさか・・

 でも何故あいつがここにいる・・・

 いいや、あいつがこの国いるわけがない。


 この国は私の担当で、あの者には関係無いのだから。


 王族同士は互いの国に不干渉が鉄則。

 それを曲げてまでここに来るわけが無い。

 そうに決まっている。


 まさか、わざわざ争いでも起こしにきたのか。

 あいつが・・・

 あの男が・・・



 トントン



 トントン



 トントン


 

 すると貴族達を掻き分け、一人の男が登場する。

 

 私と同じ、王族専用の衣装を身にまとったその男。

 何人者を部下を引き連れたその男。


 見覚えのあるその男は、害のないような顔で、私を見てほっと微笑む。



「お久しぶりです、クラウディウス兄様。

 あなたの弟、レムリア王国第四王子、ティベリウスでございます」





ここまでお読みくださりありがとうございます。


感じていたかもしれませんが。


三日後。

完結です。

※明日もこれまで通り投稿します。

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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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