表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/94

41話 5日目:昼 【第三王子】夫人

【続・クラウディウス視点】



 極寒の緊張感が場を支配する中。

 私は歯軋りをし、内心怒りに震えていた。


 何を言っているのだ・・・

 この女は・・・

 よりにもよって・・・

 セレステの冥福を祈る場で、あろうことかこの私を殺人犯扱いするなど・・・


「ははは。公爵令嬢。この場ではにつかわしくない冗談ではないのですかな」


 私が率先して笑うことで、周りの貴族を釣られて頬を緩める。

 

『なんだ。冗談ですか』

『そうですわね』

『第三王子様が・・・ありえません』


 凍りついた空気が溶かれていく。


 私は笑いを維持しながらも。

 目の前の女、公爵令嬢に対して疑心暗鬼に襲われていた。


 この女・・・

 やはり気づいていたのか? 

 そのような気配などなかったはずなのに・・・

 それに証拠など無いはず。


 公爵令嬢は私の心の内など知った事が無いように、微笑を浮かべたまま。

 

「いいえ。私は本気ですよ。

 第三王子様。何故セレステ様を殺したのですか?」


 和んでいた会場が再びシーンと静まり返る。

 公爵令嬢の声のみ響く。

 

 貴族達は私と公爵令嬢のやりとりを戦々恐々と伺っている。 

 一体この場がどうなるか恐ろしくてたまらないのかもしれない。

 自分達に被害が飛んでこないか気が気でないのだろう。


 だが一部の貴族は彼女の言葉を信じ始めているのかもしれない。

 疑念はまずい。つきまとえばいつか責め口になる。

 こうなれば徹底的に否定するしかない。


 それに王族たる私に対して今の発言、これは看破できない。

 ここで反論しなければ私の権威が落ちる。


「公爵令嬢、無礼であろう!

 一度ならずも二度までも。

 あろう事か私を犯人扱いするなど!

 そこまでいうのであれば、何か明確な証拠でもあるのだろうな?」


 どうせあるまい。

 私に繋がる証拠など無いはずだ。

 

 ユヌス教団からは、私の血がついた服は引き取って処分済だ。


「第三王子様。無礼をお許し下さい。

 しかし証拠ですか・・・勿論ございます」


 なんだと!

 そんなものあるはずがない。

 はったりに決まっている。


「あるのなら、今見せてもらいたい。当然この場でだ!

 それができるのであろうな?」


 どうだ。

 はったりで疑惑を貴族に植え付けるだけならここで終わりだ。

 どうせ証拠無しに私に言いがかりを付けに来たのだろうが。

 物的証拠がなければ誰も信じまい。


「分かりました。では、お見せいたしましょう」


 んん?

 馬鹿な!


 本当に用意しているのか? 

 そんな事できるわけがない。

 一体何を持ち出す気だ!

 

「カミラ、お願い」

「はい。アナスタシア様」


 公爵令嬢のメイドが大きな袋を持ってくる。

 中には何か入っているようだ。


「何かなそれは?愉快な手品でも見せてくれるのかな?

 そのような娯楽では私の機嫌は収まらんぞ」

「残念ながら違います。

 しかし、皆様は同じように驚かれるかもしれません」


「ほほう。公爵令嬢。

 もし十分な証拠を示せなければ、自分がどうなるか分かっているでしょうね?

 私に嫌疑をかけた罪は軽くは無いですよ」


「分かっておりますよ。第三王子様」


 ちっ。

 まるで脅えることが無い。


 彼女はメイドに目を向けると。


「カミラ、お願い」

「はい」


 メイドが袋を取ると、現れるのは一枚の絵。

 


 これは・・・



 何故この絵がここに。


 現れたのは裏面にセレステが描かれた絵。

 私の部屋に飾っている絵画だ。


 これがここにあるという事は・・・


 この女・・・私の部屋に入ったな!

 そのような狼藉が許されるとでも思っているのか。


 それより、何故この絵を?


 まさか・・・まずいぞ。

 まずい。

 もしこの女、この絵の秘密に気づいているのか・・・ 

 

 いいや、大丈夫。

 彼女が気づくはずなどないはずだ。

 王城の私の部屋のことなど知るわけが無い。


 それにこの絵だけでは私を追い込めまい。

 ただの絵なのだから。

 

 逆にこの事は彼女を責める材料に使える。


「公爵令嬢。この絵は私の部屋にある絵ではないのですか。

 もしや、私の部屋に無断に入って持ってきたのですか?」


「はい。やむおえぬ理由がありまして。

 第三王子様のお部屋から拝借いたしました」


 全く悪びれる様子が無い彼女。

 さも当然かの様に述べるその姿は、盗人猛々しい。


「自分が何を行っているのか分かっておいでか?

 たった今、王族の部屋に盗みに入ったと告白したのだぞ」

「その件については後ほど」


 いいだろう。 

 彼女が何を言いたいかは気になるが、今ので彼女は完全な墓穴を掘った。

 

 公爵令嬢の没落は必須だ。

 これならアダム伯爵と一緒に死刑に送れるかも知れんな。

 元夫婦で一緒に天に召されるのなら本望であろう。


「それで公爵令嬢。この絵がどうしたと言うのですかな?」

「第三王子様?」


 彼女が私を絵の間で視線をいったりきたりさせる。


「何だ?」

「この絵はお好きですか?」


 んん?

 私の失言でも狙っているのか、公爵令嬢は。

 アダム伯爵ならともかく、そんな策にひっかかる私ではない。


「部屋に飾っているのです。それなりに好きです」

「そうですか。良い絵ですものね」


「そうだ」

「ですが、第三王子様の部屋にしてはいささか地味ではないでしょうか?」


「公爵令嬢とは絵の趣味が違うのでしょうな」

「趣味の問題ではないのですよ」


「どういう事でしょう?」

「この絵一見普通の絵画に見えますが、本来の用途は裏面ですの。

 裏返すとこの通りです」


 メイドが絵画をクルっと反転させると、セレステの姿が現れる。


「第三王女様が描かれているのです」


 僅かにざわめく観衆。

 だが、裏面に絵が描かれている事に驚いただけであって。

 そのざわめきは私の容疑を強めるものではない。


「それがどうかしたのですかな?

 家族の絵が部屋にあっても問題ではないでしょう」


「勿論です。

 家族の絵は私の部屋にもありますから」

 ですが、この絵の場合はどうでしょうかね?」

 

 意味深に絵を観察し、絵の中のセレステに触れる公爵令嬢。


 その姿が気に障る。

 私のセレステに、汚い手で触りおって。


「何が言いたい?」


「実はこの絵には切れ込みがありましてね。

 表の絵と裏の絵の間に一定の空間があるのです」


 公爵令嬢は、絵を愛撫するかのように触ってから。

 絵の隙間から紙切れを取り出す。

 


 紙を見てギクリと胸が震える。

 見覚えのあるその紙。


 まずい、ばれているのか・・・

 あの事が・・・


 公爵令嬢は、私の方を見て微笑んでから。


「これは恋文です。

 第三王子様が第三王女様に向けて書いたものです」


『なんですと』

『そんな』

『でも、お二人は兄弟で・・・』


 ざわめく観衆。

 口々に色めきたつ貴族達。

 彼らは控えめながらも私を見ている。

 私が彼女の言葉を否定することを期待しているのであろう。



 だが、その紙は本物なのだ。

 私が夜な夜な彼女の絵を見ては、届くの事の無い思いを込めて手紙を書いていた。

 我が妹、セレステに対する愛情を。

 

 筆跡を調べられれば、私が書いていた事は必ずばれる。

 ならば否定しても意味は無い。

 違う方法で逃れなければ。


「アナスタシア公爵令嬢。誤解なさっているのでは」

「なんのことですか?」


「その紙に書かれているのは、家族愛です。

 恋文と勘違いされては困ります。兄が妹を想うのは当然でしょう」


「家族愛・・・

 とてもそうは見えませんでしたわ。

 読んでいると、女心がときめく程でしたの・・・」


 生娘の様に、わざとらしく胸を抑える公爵令嬢。

 トキメいて胸を痛めて、貧血にでもなったようにふらつき、メイドが彼女の体を支える。 

 

 大げさな彼女達の動きが苦々しい。

 

 だが怒りを抑えて。


「公爵令嬢。先程から何を言いたいのですかな?」

「言いたい事は一つですの」


「てっきり我が妹、セレステ殺しで私を追及していると思ったのですが・・・

 間違いですかな?」

「間違いではございません。

 これらは第三王子様が第三王女様を好いていた証拠なのですから」


「好くのと殺しでは、正反対なのではないですか?」

「似た様なものです。それを今から証明します」


 なっ、どうやって。

 証明などできるわけがない。


 公爵令嬢が隣に目をむけ。


「お母様、お願いします」


 それまで黙っていたマリアンヌ夫人。

 公爵令嬢の影に隠れていた彼女が一歩前に出る。


 取り囲んでいる貴族達を見回し、最後に私を見る。

 彼女は公爵令嬢とは違いこのような場には慣れていないようだ。


 私達に軽くお辞儀をした後。



「皆様。第三王子様。

 この場で発言をさせてもらってもいいでしょうか?」


 貴族達の視線が私に集まる。

 皆に聞いている風だが、許可を出せるのは私しかいない。

 

 それにこうなってしまえば、この場で発言の拒否は出来ない。

 そんな事をすれば疑いを認めるようなものだ。


「勿論です、夫人。さぞ重要なお話しなのでしょう。

 この場で言わなければならない程に」


「ありがとうございます。第三王子様」


「それで夫人、話と言うのは?」


 夫人は私に敬意を払いながらも。

 腰を低くしながらも、重い口を開く。


「第三王子様。

 大変申し上げにくいことなのですが・・・」


 そこで黙り、私の方をチラチラ見る夫人。


「いいのですよ。遠慮せずいってもらって」


「はい。感謝いたします。

 その・・・私は見たのです。見てしまったのです」


 再び私をチラチラと伺う夫人。

 とてもいいにくい事があるようだ。


「何をですかな?」

「その・・・」


 夫人は目線を下げ、続きを言うのを迷っているようだ。


「構いませんよ。言ってもらって」

「はい。ありがとうございます」


 恭しく頭を下げる彼女。


「それで、何を見たのですか?」

「私が見たのは・・・」


「見たのは?」



「第三王子様が、セレステ様を殺す場面です」



 なん・・・だと。



 私は驚愕に震えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
拍手ボタン設置中。なろうユーザーでなくても、一言感想を送ることができます。

 

連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ