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41話 5日目:昼 【第三王子】公爵令嬢

【続・クラウディウス視点】



 静寂を貫く女の声。

 声の方向を振り返ると、屋敷の中にはアナスタシア公爵令嬢。

 メイドをひきつれ、横にはマリアンヌ婦人の姿まで。


 な、なぜ彼女達が・・・

 二人は昨晩死んだはず・・・

 教団の屋敷ごと燃やして死んだのではないのか・・・


 広場にいる市民は何が起こったのか分かっていない様だ。

 屋敷の中が見えていないので当たり前だ。

 彼らに悟られてはいけない。 

 私が死んだと宣言した者が生きていれば、無用な混乱を生む。


 私は何事もないようにとりつくろい。


『皆様、お祈りありがとうございました。

 我が妹のセレステも喜んでいる事でしょう』


 感謝の言葉を告げて屋敷の中に戻り、後は進行役に任せた。

 



 私は現れた二人と向き合う。


「これはこれは、マリアンヌ夫人とアナスタシア公爵令嬢。

 お亡くなりになられたと聞いていたのですが・・・お元気そうで」


 彼女達は微笑を浮かべたままだ。


「はい。第三王子様。

 私達は生きております。死んではございません」


「それは良かったです。きっと騎士団が勘違いしたのでしょう。

 ですが、どういう事でしょうか?」


 公爵令嬢を見ながらニアを視線に入れる。

 『何が、どうなっている?』と視線で彼に伝えるが、ニアからの反応は無い。


「どういう事もありませんわ。簡単な事ですの」

「分かりませんので、聞いても宜しいですか?」


「勿論でございます」

「では、お願いします」



「私とお母様は、昨晩殺されかけたのです」



『なんですと』

『そのような事が・・・』

『本当ですの?』


 公爵令嬢の発言にざわつく会場。

 私達を囲んでいる貴族達が興味深く私達の会話を見守っている。

 彼女の生存と暗殺に心を惹かれたのだろう。 


 周りの反応とは反対に、私は内心苦々しい気分だ。


 公爵令嬢め・・・

 ここに一体何をしに来た?

 大人しく死んでいればいいものを。

 それに死んでいなくとも、日陰に隠れているべきだ。


 だがここは人前だ。

 全く嬉しくはないが、彼女の生還を喜ぶべきだろう。


「なんと!そのような事があったのですが。

 それは大変な事です。よくぞご無事で」


「ええ、とても大変でしたわ。

 ですがこうして私は生きています。

 暗殺者の方はあまり優秀ではなかったのかもしれません」


 公爵令嬢は私に分かるよう、視線をニアに向ける。

 視線を受けた彼は気まずそうに目を逸らす。


 まさか、ニア・・・

 暗殺に失敗したのか・・


 いいや、二人が目の前にいる以上、失敗は確定だ。

 暗殺の失敗は最早当然だ。

 後はどこまでばれているかだ。

 

 前日の王城の面談で釘を刺した以上、私の事を疑っているのはほぼ間違いないはず。

 まずいな・・・


 それなら直ぐに対応を変えなえなければ。

 とにかく時間稼ぎだ。動揺している場合ではない。


「しかし助かってよかったです。

 一体、誰の仕業なのか・・・犯人は捕らえたのですか?」

「いいえ。

 ですが誰が私を殺そうとしたかは分かっておりますの」


『まぁ、犯人は誰なのでしょうか?』

『さすが公爵令嬢さま』

『逞しいですわ』


 さらにざわめく会場。

 公爵令嬢が、自分を暗殺しようとした者の名前を言う事を期待しているのだろう。

 好奇心に囚われた視線が彼女に注がれる。


「それはそれは・・・幸運ですね」


 どうする気だ?彼女は。

 まさか・・・ここで私の事を犯人だと名指しする気か?

 いいや、そんな事はしないだろう。

 それは無謀だ。 


 彼女が言っても誰が信じる。

 私はただ否定すればいいだけだ。

 証拠も無いのに主張して誰も信じらないだろう。

 

 公爵令嬢と王族。

 会場の貴族がどちらの味方につけばいいのかは一目瞭然。

 窮地に陥るのは彼女の方だ。


 しかし少しでも危険性は減らした方がよい。

 彼女の狙いが何か分からないのだから。


「公爵令嬢、暗殺の危機におあいになった直後でしたら、さぞお疲れなのでは。

 部屋に帰って休んでいた方がお体のためかと」


「ご配慮感謝いたします。でも結構ですの。

 昨晩はゆっくりと休めましたので」


「そうですか。暗殺にあったわりには顔色はよさそうですね」

「はい。よく眠れましてので。枕がよかったのかもしれません」


 よく眠れたなどとふざけた事を・・・

 それに微笑を絶やさない彼女に不気味なものを感じる。


「それでは当初の目的通り。

 今回の慰霊祭で冥福を祈るのは、我が妹、セレステのみという事ですね」

「はい。私も第三王女様の冥福を祈っております」


 何食わぬ顔で応対する公爵令嬢。

 

 彼女は一体何をしに来たというのだ?

 狙いがなんにしろ、とりあえず早く追い出さなければ。


「しかし夫人、公爵令嬢はこの場にいてはつらいのでは?」

「何故ですか?」


「これからアダム伯爵の死刑を執り行うところなのです。

 お二人にはつらい場面になるかと思います」


「まぁ!そうなのですか?」

「はい。急遽決まりました事なので、十分に情報の周知が行われていなかったようですね。

 お帰りになるのでしたら、王城の者に案内させますが」


「いいえ、大丈夫ですわ、第三王子様」

「本当にいいのですか。公爵令嬢にとっては元夫。

 夫人にとっては息子だと思われますが」


「違うのですのよ、第三王子様」

「はい?」


 公爵令嬢も夫人もアダム伯爵の死刑に対して動揺しているところが見えない。

 公爵令嬢はともかく、夫人まで無反応とは。

 おかしい。どういう事だ・・・


「おつらくはないのですかな?」

「もし死刑になるのでしたらつらいでしょう」


「公爵令嬢、どういうことですかな?」

「第三王子様、アダムは死刑にはなりませんの」


 んん?


「ははは、何をおっしゃっているのですか?」


 この女・・・どうする気だ?

 死刑を覆す事などできるはずがないのに。


 だが嘘をいっているようにも思えない。


「アダムは死刑になりませんわ。第三王子様」


 再度強く宣言する彼女。

 隣の夫人も強く頷いている。

 

 どうする気だ?

 いいや、狙いが何であろう死刑は行われるのだ。

 妄言はたしなめなければ。


「公爵令嬢。元夫を救いたいのは分かりますが、今日はセレステの慰霊祭です。

 この場で不適切な発言は控えて頂きたい!」


 私は強気に出る。

 ここで弱気になってはこちらにアダム伯爵の死刑が揺らぐ事になる。

 

 大儀はこちらにあるのだ。

 セレステの死を冒涜するような言葉には堂々と反発すればいい。


「あら、第三王子様。

 私は第三王女、セレステ様の事を思って言っているのです」


「どういうことですかな?」

「自分を殺していない人が死刑に処されるのは、第三王女様にとってはつらい事なのでは?」


「ほほう。まるで真犯人でも知っているかのような口ぶりですね」

「ええ、知っていますの」


『まぁ、なんてこと』

『アダム伯爵ではないのですか』

『一体、どういうことかしら』


 さらにざわつく会場。

 自分を暗殺しようとした犯人だけでなく、王族殺しの犯人まで知っていると言っているのだ。

 騒がない方がおかしい。


 この女。

 まさか・・・気づいたのか。

 確かに、この女なら気づく可能性もある。

 審問でアダム伯爵を犯人にしたてあげたのはこの女だからだ。


 だが、ならなぜそれを今この場で覆そうとする。

 わざわざ自分で夫を死刑に追い込んでおいて。


 理由が分からない。

 一体、何が狙いなのか・・・


「公爵令嬢。審問でアダム伯爵が死刑になったのですよ。

 その決断に異議を唱えるのですか?」

「はい。そうなりますね。

 真犯人が別にいれば、判決を覆す事も可能だと思います」


「それはそうですが・・・」

「第三王子様。

 お聞きしたい事があるのですが、宜しいですか?」


 なんだ?急に?


「この場でですか?」

「はい」


 周りを観察するが、貴族達は興味深そうに私と公爵令嬢のやりとりを見ている。

 会場の中の目が私と彼女に注がれている。

 この先の行方を知りたくてたまらないようだ。

 

 危険性がある会話など今すぐ切り上げ、この場を後にしたかったが・・・


 まだ死刑が終わっていない以上、この場から退散するわけにもいかない。

 それに考えてみれば、私は逃げる必要など無いのだ。

 公爵令嬢が何を聞きたいのかは知らないが、王族である私の方が有利な立場にいるのはかわらない。

 超えられない身分差がある。


 それならさっさと話を付けて会話を終わらせよう。

 下手な疑念は断ち切るべきだ。


 アダム伯爵の死刑の前座にはちょうど良いだろう。


「いいですよ」


「ありがとうございます。第三王子様」


 私に向って丁寧に頭を下げる公爵令嬢。

 仕草だけなら完璧な淑女だ。

 その礼儀正しさが逆に私の神経に障る。


「それではお聞き致しますわ」

「はい、なんなりと」


「不躾な質問かもしれませんが、ご容赦下さい」

「ええ、どうぞ」


「第三王子様のお慈悲に感謝いたします」

「そうですか」


 公爵令嬢はゆっくりと礼をする。

 笑顔で彼女に応対しながらも、まどろっこしい彼女の対応に首の後ろがジリジリする。

 

 ええい、早く言わんか。

 焦らしおって。


「セレステ様のためにも申し上げたい事があるのです」

「嬉しいですね。我が妹のためとは」


「はい。セレステ様は素晴らしい人でした」

「彼女は皆に愛されていました」


「さぞ、第三王子様はおつらいでしょう」

「お気持ちありがとうございます」


 いつまで焦らす気だ。

 

「それでは、お聞きします」


 やっときたか。


「遠慮せずにどうぞ」


「第三王子様」

「はい」


 公爵令嬢は僅かに口元を緩め。

 観衆の注意を引くように、たっぷりと間をためてから。



「何故、第三王女様、セレステ様を殺したのですか?」



 その言葉が放たれた瞬間。

 会場は息を呑んだ。

 周りの貴族、全員が唖然とした音が聞こえてくるのだ。


 会場の空気が凍りついた。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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