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40話 5日目:昼 【第三王子】慰霊祭

【クラウディウス視点】



 クラウディウス第三王子は、慰霊祭会場に来ていた。


 広場には第三王女の死を嘆く市民が集まり、セレステの絵が飾られた献花台に花を手向けている。

 花自体は広場の入り口で配布しており、市民はそれを受け取り台の上に置く。

 

 今目の前では、小さな女の子が花をそえていた。

 色とりどりの花が台を埋め尽くしていく。


 市民の中には自分で花を用意してきている者もちらほら。

 セレステの人気の程が伺える。


 そんな光景を窓から眺めていた。

 今私がいるのは、広場に隣接された貴族用パーティー会場。

 そこにも献花台が用意されており、出席した貴族が花を置いていく。

 

 王族への忠誠心を示すためか。

 競うように豪華な花が置かれるため、献花台の容量をそうそうに超えた。

 そのため一部の花は定期的に他の部屋に移されていく。


 私は王族専用の貴賓席に座り、何人かの貴族と顔をあわせた。

 皆、我が妹の死を嘆き悲しむ言葉を述べていく。

 内心はどう思っているか分からないが、表面的には皆が悲しみを露にする。





 貴族への応対が一段落すると。

 従者ニアが。

 

「クラウディウス様。

 そろそろスピーチのお時間です」

「もうか。時間が経つのは早いな」


 私はついさっきこの会場に来たばかりだと思っていたが。

 意外な程に時間が経っていたようだ。 


「主だった貴族は揃っておりますし、広場も市民で埋め尽くされております」

「時期は来た、という事だな」


「はは。そのようです」

「今日は晴れ舞台だからな。

 セレステのためにも良き日にしようではないか」


「はい。民衆がクラウディウス様の姿を心待ちにしております」

「動員ご苦労」


「いえいえ、クラウディウス様のご威光があってのものです」

「これだけ集めるのは大したものだと思うがね」


「当然の数でございます」


「それでは、民衆を満足させにいくとするか」

「はは」


 では参ろう。

 今回の催しは王族たる私の義務というものだ。

 その責務をしっかりと果たしてこようではないか。 





 建物のベランダに移動すると。

 眼下には広場を埋め尽くす市民の姿。

 皆が顔をあげ、私がいる場所を見、無数の顔が私に向けられている。

 

 観衆の一部には黒ローブの集団。

 ユヌス教団の姿だ。


 騎士団に囲まれているためか。

 それとも組織の長である司祭が捕まっているためか。

 彼らは大人しくしている。


 数はいるようだが、上から見る分には脅威ではないようだ。


 よく見ると会場のいたるところに騎士団がおりかなり厳重な警備だ。


 市民が数多く集まっているため暴動が起きないように注意しているのだろう。 

 いいや、夫人を教団に奪われた失態をとりもどすためかもしれないな。



 目をずらすと。

 私の直ぐ傍にはアダム伯爵を死刑にするためのやぐら。

 今日の死刑にために急ピッチで製作したものだ。

 

 実質数時間しかなかったため、既存の物を組み合わせて作ったようだが。

 外枠は奇麗に整えられているため、王族の威厳は保たれている。

 中々悪くは無いな・・・


 だが少し寂しい気もするが。

 昨日の今日ではこれが限界であろう。


 やぐらの中にはよく燃えるように乾燥した木材や草も詰め込まれている。

 後は台にアダム伯爵を飾れば完成か。


 やぐらに付けられた磔台が死刑の姿を想像させる。

 彼はどんな風に逝くか楽しみでもあるな。


 

 一通り観察し、私は「準備は出来た」と隣の者に頷くと。


「静粛に。静粛に。

 これより、ユーフォニア帝国総督、クラウディウス第三王子様のお言葉である」


 進行役が告げる。


 その声に市民がどっと沸く。

 市民の声が混ざり合い、うなりのような圧力となっている。


「静粛に、静粛に」


 進行役が声を荒げるが市民は反応しない。

 私に向って手を振っている。


 進行役は困ったようにパニックになるが。


 私が微笑を浮かべ、市民に向けて手を上げると。

 途端にざわめきは静まる。

 

 片手を動かすだけでこれだ。

 一挙動で多くの市民を支配していると思うと、なんともいえない高揚感に満たされる。 

 私が王族である事を再認識するのだ。 


 喉の調子を整え、眼下の民衆に聞こえるよう大きな声を出す。


『皆様。今日は我が妹、セレステの追悼にお集まり下さり、私は感激しています』


 一言一言、かみ締めるように発音する。


『セレステは皆から愛される存在でありながらも。

 不幸にして悲劇的な死をとげてしまいました』


『私は深く悲しんでいるのです。これ以上に悲しい事がありますでしょうか』


『ですがこの悲しみを乗り越えなければいけません。

 彼女の死を無駄にしてはいけないのです』


『今日はセレステの冥福を祈る日です。

 ですが同時に、罪人を裁く日でもあるのです』


『アダム伯爵は、今日、この場で刑が執行されます』


『今回は特別、皆様の中からも刑の執行に協力してくれる方を募集させて頂きました』


『この国の繁栄のためには、皆さんのお力が是非必要なのです』


『しかしその前に、ここで一つ残念なお知らせがございます』


『罪人の母親であるマリアンヌ夫人と、元奥方であるアナスタシア公爵令嬢。

 お二人方が今朝亡くなられたのです』


『アダム伯爵の事を思っての自殺か。

 本件に関連して捕まったユヌス教団の司祭の仕業なのか。

 分かりません』


『しかしお二人方にはなんの罪も無かったのです。

 願わくは、彼女達の死も私の妹セレステと同様に祈りたいと思います』


『冥福をお祈り致します』


 

 私が祈りの仕草をすると、広場の市民を同じ動作を繰り返す。

 建物内の貴族も同じだ。

 皆が手を合わせて目をつぶる。


 多くの人が集まっているが、誰も音を出さず、静寂に包まれる会場。

 聞こえてくるのは死刑台でゆれる旗の音と、時折聞こえる赤ん坊の泣き声。

 

 一種独特の雰囲気になる会場。


 


 セレステ。

 

 セレステ。


 セレステ。

 


 彼女の死後の幸福を祈る。

 

 セレステ・・・


 私が大好きだった妹。

 どうして私を裏切ってあの男、アダム伯爵と通じる事をしてしまったのか。

 

 今でもセレステの間違いに憤りを抱いている。

 いくらかわいい彼女でも許せない事はあるのだ。

 

 本当に天使のような妹だった。

 世界で一番の女性だった。

 溶けてしまうような魅力をもっていた。

 

 しかし彼女は死んでしまっただの。

 私の中で彼女は永遠になったのだ。

 もう、彼女は姿を変える事はないし、私の心をえぐるような行動もしない。

 

 彼女は私のものになったのかもしれない。


 私だけのセレステに・・・



 だからその幸福を祈ろうではないか。

 セレステにはあの世でも幸せになってもらいたい。

 きっと彼女は上手くやれるはずだ。


 君の幸福を祈ろうではないか。



 幸福を。




 だが、その他の二人。

 夫人と令嬢には何の感慨も無い。

 分不相応な事をした者達だ。


 彼女達が死んで胸のつかえは取れた。

 その事に関しては感謝してもよいのかもしれないが、所詮は目障りな属国民にすぎない。


 二人に祈る必要など無い。




 私はセレステに対して十分に想いを捧げた。


 祈りの時間を終わらすために口を開こうとすると。


 

 その時。

 私の声が出る前に一つの音が静寂を切り裂く。



『第三王子様。お祈りは結構ですわ。私は生きております』



 よく通る高い声。

 つい先日王城で聞き、私が死んだと思った者の声。

 聞きたくない者の声が耳に届いた。


 何故、あの女の声が・・・

 あの女は死んだはず・・・


 私は声の方向をとっさに振り返った。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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