27話 4日目:昼 【第三王子】面談(下)
【続・クラウディウス視点】
だが落ち着け。
たかが服の話だ。
それ程心を乱す必要は無い。
全く関係ない話なのかもしれないのだ。
「それなら騎士団に提出したらどうですか?
私などに言わず」
「そうもいきません。適当な事はで来ませんので。
まだ誰の血か分かりませんので現在調査中です。
検査すれば近日中には分かると思いますが」
「それは良かった。それで、その話しがどうかしたのですか?」
「はい。
実はですね、その服を見つけたのは数日前でして。
どうも服には複数の人物の血がついているようなのです。
それで、その人物の一人は既に分かっているのです」
ひやりと汗が垂れる。
まさか、こいつ・・・
どこまで知ってる?
まずいとこまで知っているのか?
それならば・・・
もしもの場合に備えなければ。
私は目線でニアに合図すると、彼は僅かに頷く。
ニアの神妙な表情からすると、彼に意図は通じているようだ。
「その人物というのは誰なのですか?
我が妹を殺した犯人が複数いるのかもしれません。
是非知りたい」
「そうですか。
それがですね、実は・・・」
ええい。
もったいぶりおって。
早く言わんか!
私を焦らすのではない!
「誰なのですか?」
司祭は数秒黙ってから。
そして口を開く。
「実は、第三王子様。あなたの血の様なのです」
司祭がそういった瞬間。
ニアが部屋の鍵を閉めた。
そして腰を剣を抜いて構え、いつでも司祭に襲いかかれる状態だ。
司祭はその様子を見て唾を飲み込んだ。
のどが動くのが見えたのだ。
彼が動揺しているのがありありと分かる。
門答では心意を隠せても、やはり生命の危機となるとそうはいかないようだ。
私は警戒する司祭に対して冷静に声をかける。
「司祭、それは何かの間違いではないのでしょうか?」
司祭は私の方に視線を戻す。
少しばかり動揺しているようだ。
「いいえ。
何度も確かめた結果です。
第三王子様の血を手に入れるのには少々手間がかかりましたが」
「そうですか。
ですがその情報をこの場で言うのはどういう意味ですか?
審問では何も発言しなかったようですが」
「色々理由はあります。
しかし、それは第三王子様にとっては良かったのでは」
司祭は微笑を硬くしながらも微笑を絶やさない。
「司祭、私を脅しているのなら止めた方がいい。
それは勝ち目の無いゲームですよ」
「脅すなどとんでもございません。
そんな恐れ多い事。私にそのような意図などございません」
彼は両手を挙げ無害だとアピールする。
「それなら、今この場でそのような話をする理由を明確に説明して頂きたい。
教義など、曖昧な言葉で濁すようでしたら分かっていますね。
この王城内では私の影響力は絶大ですよ。
例え、人が一人いなくなったとして。問題にはならないでしょう」
私が二アに再び目で合図すると、彼は頷く。
剣を力強く握り直したようだ。
剣を一振りすれば、司祭の首が飛ぶ距離まで近づいている。
司祭も自分に向けられた刃を注意深く確認している。
「不幸に見舞われるのは願い下げです。
私がその事を伝えたのは、たった一つのことのためです」
「それは何ですか?
答えを伸ばすと、寿命は縮みますよ」
「教団のためです。
我が教団の信者は増加の一途を辿っています。
さすれば資金が要るのです。
人が生活していくのにお金は必要です。
できましたら、第三王子様に慈悲を頂けないかと」
なさけない。
何かと思えば・・・結局は金の無心か。
用心しすぎたのかもしれない。
金のために、教義もまげて情報、証拠を売るという事か。
所詮宗教家はその程度のものか。
「いいでしょう。
貧民を救済している組織に資金援助するのは問題ありません。
しかし、それは血まみれの物を引き渡して貰った場合です。
それに勿論、この件は誰にも他言無用です」
「勿論でございます。
しかし、我が教団の資金需要は厳しく、なるべく早く援助を頂ければと。
できましたら、今すぐにでも」
なんてあつかましい者だ。
この場においてそのような申し出。
だが、手早く処理するためには早めに手を打ったほうがいいかもしれない。
それに金で解決できるならこちらは問題は無い。
「いいだろう。
ニア、前金として少し渡してやれ。
残りは物の受け取り次第だ」
ニアは剣を腰にしまうと後ろに下がる。
小さな袋を持って再登場し、司祭に渡す。
「ありがとうございます。
第三王子様のお気持ち。確かに受け取りました。
クラウディウス閣下には、きっと神のお恵みがあるでしょう」
「そんな言葉はいらん。
それより分かってるな。物は今日中に王城に持ってこい。
詳しい手順は後で説明させる」
「分かりました。必ず物は届けさせて頂きます。
それでは・・・今日はこの辺りで失礼しようかと思いますが」
「他になければそれでかまわん」
「はい。ございません。
今回は実り多き面談、ありがとうございました。
では、失礼いたします」
司祭が部屋から出て行った。
私はほっとしてニアを見る。
「二ア、分かっていると思うが司祭には監視をつけろ。
何か他にも知っているやもしれん」
「了解しました。
しかしいいのですか?
あのような者にお金を渡してしまい」
「大丈夫だ。金で動くなら操作しやすい。
それに今のうちに教団に繋がりを持っていれば後々使えるかもしれん。
どちらにしろ規模が拡大したら窓口は持とうと思っていた」
「さすがクラディウス様」
「だが、ニア、あの神父をどう思った?
信用にたる男だと思ったか?」
「私には分かりかねます。
宗教家は総じて信用できないと思いますが。
口先だけで稼ぐのが彼らの商売でしょうから」
「だろうな。
それで二ア。もしもの場合だが、あの司祭を暗殺したとすると問題になると思うか?」
「教団の出方しだいですね。
ある程度の人数がいる組織ですから。
彼らがどこまで本気になって運動するかにかかっています」
「もし、本気で騒ぎ出したとすると?」
「その場合はかなりまずいかと。
沈めるのに騎士団を使って殺し合いに発展した場合。
大勢の死者が出たとすると、暗殺の件は詳しく調べられる事になります。
こちらの仕業だとばれないとしても、信者が噂を流すでしょう。
そうすれば貴族達にも知られることになり、最終的には本国にも届くかと。
上手くやれば別ですが」
「そうだな・・・慎重さが必要か」
「はい。ですが暗殺が不可能という訳ではございません。
しかしクラウディウス様のおっしゃりますとおり、金で操るのが一番安全かと」
「まずはそうする。
だが、そうなるとやはり教団の存在は邪魔かもしれん。
王城に反対する可能性のある一定規模の集団は目障りだ」
「彼らを排除するか、飼いならすか。
どちらかに手を打ちますか?」
「今は様子を見る。
飼いならせるようならそれにこした事はない」
「了解しました」
私はユヌス教団の扱いについて頭を悩ました。
彼をどう利用すれば一番私のためになるのかを考えていた。




