16話 3日目:夜 【カミラ&妻&盗賊】遭遇
【盗人二人視点】
「おい、いい紐があった。これで夫人を縛ろう」
「大丈夫か?起きないかな?」
「平気だろ。起きても夫人一人だ。すぐ気絶させれば良い。
酒を飲んでいるようだし」
「それなら手早くやってくれよ。俺は見てる」
「なんでだよ?手伝えを」
「縄結びはあまり得意じゃないんだ。
上手く結べなかったら困るだろ」
「しゃーない。そこでみていろ」
「早くしてくれよ」
盗人の一人が夫人を縛ろうとした瞬間。
廊下から足音が聞こえてきた。
「おい。誰か来るぞ」
「だからいったろ。どうするんだよ」
「戦うに決まってるだろ。相手はここに人がいると思ってないはずだ」
「そうかなー」
「そうだ。扉の前で迎え撃つ。相手が部屋に入ってきた瞬間に刺客から殴る」
「任せるよ。俺はフォローに回る」
「そうしてくれ」
盗人二人は部屋の入り口の両脇で待機する。
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【カミラ視点】
(まずいです。盗人達がベッドから離れてしまいました。
それも部屋の入り口からは足音が聞こえます)
もしや、アナスタシア様では?
それならなんとかしなければいけません。
このままでは、アナスタシア様が盗人二人に襲われてしまいます。
かくなる上は、好機を待たずにこちらから仕掛けるしかないのかもしれません。
そう思い、部屋の入り口を見ると一人の姿。
その姿を見て私は思いとどまりました。
「もらいー!」
盗人の一人が棒切れで侵入者殴りかかりますが、反対にカウンターをくらい地面に倒れます。
それをみていたもう一人の盗人は、これは適わないと思い、一目散に逃げ出そうとしますが、部屋の入り口は侵入者に塞がれています。
窓に向かいそこから逃げようとしますが、後ろから後頭部を殴られます。
それでノックアウトです。
二人の盗人は気絶したようです。
侵入者の男は気絶した二人の男を集めてローブで結ぶと。
「あら司祭様、奇遇ですね。こんなところで」
新たに部屋に入ってくる人物の登場です。
それは何を隠そう、アナスタシア様でした。
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【アナスタシア視点】
(なんだろう?何事?)
アナスタシア公爵令嬢がトイレから出。
音がする方向に向かうと、そこには床に倒れた二人の男と、それを見下ろして立っている男。
立っている方には見覚えがあり、思わず声が出てしまいます。
「あら司祭様。奇遇ですね。こんなところで」
そう、ユヌス教団の司祭。
王城で話したので覚えている。
でも、何故彼がこんな深夜に元お母様の家にいるのか分からない。
元お母様の服でも取りにきたのかな?
何か緊急事態でもあって。
彼は私を見て一瞬驚くけど、すぐに表情を戻す。
「これはこれはアナスタシア公爵令嬢、奇遇ですね」
へー、ちゃんと公爵令嬢と呼んでくれるようだ。
前回城の中で話した時は、私の離婚の事をしらなかったようだけど、今は知っているみたい。
多分、最後まで審問場に留まっていた人に聞いたのでしょうね。
「司祭様。こんな深夜にどうしたのですか?」
「それは公爵令嬢こそ、お茶会には遅い時間かと思いますが」
司祭はそれでジョークでもいっているつもりなのだろうか。
あまり面白くないわね。
でも、ちゃんと笑ってあげないとね。
「ふふふ。司祭様。お茶会は日中にやるものですよ。
私はマリアンヌ夫人の家に忘れ物を取りにきたのです。
夫人には「いつでもいらっしゃい」といわれている間柄なのですから。
あなたこそなんなのですか?
司祭様が盗人のような事をして」
「いやいや、私は盗人ではありませんよ。
私は夫人をお迎えにきたのです。
この家は危険ですからね。
私が今捕まえたような者がいては、おちおち寝てもいられないでしょうから」
見苦しい言い訳ね。
それに夫人をお迎えに来たって・・・・
私は部屋の中をよく見ると・・・
なんと、ベッドの上には元お母様がすーすーと気持ちよさそうに寝ている。
それに今の騒ぎにも全く動じていないみたい。
元お母様は睡眠は深いほうなのかもしれない。
「そうですか。
ですが、元お母様はあなた方の教団に匿われていると思ったのですが。
違ったのですか?」
「それは・・・色々ありまして」
具合が悪そうに言葉を濁す司祭。
元お母様がここにいる以上、何かしらのアクシデントがあった事は確実なんでしょう。
「そのようですわね。
元お母様はぐっすり眠っているようですし、お互い長話はしない方がよろしくて」
「それには賛成です。それでは、夫人を確保していきます。
我が教団で匿いますので」
私は一瞬、元お母様の扱いについて異議を唱えようか迷ったけど。
それはやめておいた。
ここで何か言っても、彼は聞かないだろうし。
私の家で元お母様を預かる訳にもいかないので。
「ええ。そうして頂戴」
「はい。
それで公爵令嬢は、忘れ物が見つかったのですか?
よければ協力して探しましょうか?」
司祭はニコニコした顔でそんな申し出を出してくる。
私が絶対にその誘いを受けないと知っているだろうに。
「いいえ。お申し出はありがたいけど、結構です。
私物ですので」
「そうですか。それでは私達はこれで」
司祭が合図すると、廊下の置くから黒ローブか何人が入ってきて夫人と侵入者を担ごうとする。
でも、私は手を伸ばして、彼らが部屋を出て行こうとするのを妨害する。
司祭は驚いて様に私を見る。
「どうされたのですか、公爵令嬢。
思えば、王城でも私達の前に立っていましたね」
司祭は私を眺めながら問いかける。
その問いの答えを探すように、わたしを観察している。
私が何を考えているか全く分からないみたい。
「元お母様は構いませんが、侵入者は折角二人いるのです。
一人は置いていって貰いたいのです。
あなた達も一人確保すれば十分だと思いますが」
司祭は僅かに首をかしげ。
「いいでしょう。
ですが、公爵令嬢お一人で大丈夫ですか?」
彼は周りを見回しながら、私に視線を戻す。
私は彼の的外れは質問に笑ってしまいそうになるけど、それを抑える。
「司祭様。貴婦人が深夜に一人で出歩く事はありませんよ」
「それもそうですね。失礼しました。
では、一人置いていきますが、どちらかご要望はありますか?」
私は盗人の二人を見つめる。
ごっつい男と、すらりとした男。
はっきりいってどっちでもいい。
でも、選ぶとしたら・・・
「では、やせている方で。暑苦しい男は嫌いですの」
「分かりました。この男も令嬢のおめがねに適って嬉しいでしょう。
意識はありませんが。
では、それでは失礼しますね」
「ええ、ごきげんよう」
司祭達は去っていった。
それを確認してから、私はベッドに視線を向け。
「カミラ、いつまでそこに隠れているの?
まさか、そこで寝ているわけではないのでしょ?」
「はぁ!すみませんアナスタシア様」
カミラがベッドの下から這い出てきた。
私に申し訳なさそうに頭を下げる。
「ついつい出て行くタイミングを逃してしまいました。
面目ありません」
「いいわ。あなた、いつでも司祭に襲いかかれるように準備していたみたいだし」
そう。
カミラの手にはナイフが握られていた。
「さすがアナスタシア様。お見通しでしたか」
「それより、ざっと部屋を探したらこの男を屋敷に連れて帰りましょ。
聞きたいこともあるから」
「はい。分かりました。すぐに捜索を終わらせます」
「頼んだわよ」
それから暫くして、私とカミラも元お母様の部屋を後にした。
こうして夜の冒険は終わった。




