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3話 3日目    【母】脱出(上)

【マリアンヌ視点】



 審問で死刑が求刑されたアダム伯爵の母、マリアンヌ。

 彼女は息子の審問で騒いだため、会場である特別審問場から騎士団によって強制退出させられた。

 そして今、会場外の一室で騎士団に周りを固められながら椅子に座っていた。

 


 筋肉隆々な屈強で厳つい騎士達に囲まれ、肉のプレッシャーを受けながらも。

 マリアンヌである私は憤慨していました。



 審問では、まるで息子が犯人の様に扱われたのです。

 そうです。最初から皆が皆、息子を犯人だと思っているようでした。

 それはそれは異様でした。

 

 しかも平等が必要であるはずの審問官までそうなのですから。

 全く持っておかしな事です。信じられません。


 審問が進めば進むほど、会場の聴衆は息子の有罪を確信していったようでした。

 まるで私の他には誰も無実を信じている人がいないようでした。

 いいえ、違いますね。

 息子の妻は信じていたのかもしれません。

 

 ですが、息子の妻アナスタシアは、その・・・とても可哀相でした。

 

 審問で、その・・・あまり耳によくない事を聞いたからです。

 

 言いにくいのですが、とても恥ずかしながら、息子が不倫をしていました。

 

 勿論私も初めて聞いたので衝撃を受けました。

 まさかあの優しくて母親思いの息子が、そのような道徳に反する行為をするとは思ってもいませんでした。

 それも相手はなんと恐れ多い事に、第三王女様なのです。


 その話を聞いた時、私は深く嘆き悲しみました。

 一瞬ストンと暗い井戸の底に落ちたのかと錯覚したぐらいです。

 まさかあの優しい息子が、そんな人の道に反する事をするなんて。

 今でも信じられないのです。


 でも私よりも、息子の妻であるアナスタシアの方が辛かったと思います。

 私の隣に座っている彼女は、危うく気を失いそうになり、メイドに介抱されていましたので。


『アナスタシア様!!!お気を確かに!!!』


 っというメイドのカミラの声が耳から離れません。

 耳にこびりついています。

 可哀相なアナスタシアを見る事はとても辛かったですが、そんな彼女を私は慰める事が出来ませんでした。

 そうです。一体、不倫をして息子の母が、その妻に何と声をかければいいのでしょうか? 

 一体どうすればいいというのですか?


 私に出来る事は、なるべく気配を消し、決して声を出さず、ただただじっと座っているだけでした。




 それから審問では、息子の特殊な趣味について語られ。

 しまいにはアナスタシアへの暴力まで。

 彼女の手に出来た傷は生々しいものでした。

 

 私の頭には、想像したくも無い息子の非道なシーンが浮かび上がってきましたので、それが浮かび上がってきては、全力で消していました。そこに全神経を注いでいました。


 私はもう傍聴席に座っている事すら耐え切れませんでした。

 これ以上息子の暗部を聞きたくなかったのです。

 幼い頃にろくでなしの父親が蒸発して、私が女で一つで育てたからかもしれません。

 それで息子の精神が歪んでしまったのかもしれません。


 気づくと、私は自分の子育てのどこが悪かったのか想いを廻らしていました。

 

 もう少し優しく育てればよかったのではないか。

 あの時、ああすればよかったのではないかと。

 息子が小さな頃の思い出が頭に浮かんでは消えていきます。


 私は傍聴席で小さくなりながらも、審問を見守りました。

 まさに針の筵状態でした。

 周りから私に突き刺さる同情の視線がつらかったのです。

 

 ですが、私は息子の母です。

 隣では私以上につらい立場であろうアナスタシも審問を見守っているのです。

 私が逃げる事は許されません。


 ですから、審問官であるバーミンガム大公が会場に異議がある者を求めた時、私は迷わず手を上げました。

 私しか息子の味方がいなくとも、母である私は証言しなくてはなりません。

 息子の無実を信じているのですから。 


 大公に指名されて証言台に立ちました。

 ですが、そこに来たのはいいのですが、私に息子の疑いを覆す事が出来る情報はありません。

 ですので、無実を訴えるだけです。

 少しでも息子の疑いを払拭できればいいと思ったのです。



 そうして話している途中に思い出したのです。


 事件の朝、私が血塗られた服で目覚めた事を。

 そうです。

 あの朝の私の状況から考えれば、私が犯人であってもおかしくないのです。

 

 だから、私は訴えました。

 大きな声で。

 私が犯人だと。


 でも、誰も信じてくれませんでした。

 皆が皆、同情の視線で私を見るのみでした。


 それでついかっとなってしまい。

 審問官であるバーミンガム大公の元へ詰め寄ろうとしましたが、騎士団に取り押さえられました。

 私は騎士団に触れられた事で、何かの栓がはじけ飛んだようになりました。

 

 それからの事は正直よく覚えていません。

 多分、鬱憤を晴らすように息子の無罪を訴え、騎士団の方を軽くこづいたのかもしれません。

 


 気づくと私はこのこの部屋で拘束されているのですから。

 私を囲む騎士団の方の腕や顔に、真新しいひっかき傷の跡や歯型が見受けられますし、彼らは私を危険人物かのように注意深く見ています。

 多分、私がやったのではないかと思い、とても息苦しいです。


 それに息子の審理の続きを聞けません。

 ですが結果は予想できます。あの雰囲気で分かります。

 きっと良い結果にはなっていないだろうと思います。


 正直、あの場にいなくてよかったのかもしれません。

 直接耳で息子の刑が確定される瞬間の声を聞くと、私の心はどうなっていたか。

 さらに激しく暴れていたかもしれません。


 それに騎士団が私を拘束している事を考えると、私も捕まるのでしょう。

 王族殺しは一族郎党皆殺しになる可能性もあると聞いています。

 それなら私だってどうなるか分かりません。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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