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42話 3日目   【夫】審問 9   ※1部最終話

「あらアダム。止めたほうがいいわよ。

 この場で私を殺すなんてことわね。

 どうせ無理だから、すぐに騎士団がとんでくるわよ。

 一刻も早く死にたいのでしたらそれでもいいのですけどね」


 僕はその言葉で腕を止めて、彼女の肩で手を止める。

 そうだ、冷静になれ。またなんとかなるかもしれないんんだ。

 この事件はアナのでっち上げだ。それなら僕が助かる方法もあるはずだ。

 こんな事が上手くいくはずが無い。


「アナ、君をこの場で殺したいけど、そうはしないよ。

 僕は君とは違うからね。僕は君と一緒のところまで落ちるつもりは無い」


「あら、それは残念。

 あなたはいつだって小心者だからね。

 ビクビクビクビクビクビク、いつも何かにおびえているの。見てて可愛いけどね」


 目の前にいる悪魔の様な女が信じられない。

 僕はこの女性をずっと愛していたのに。

 そして結婚までしたのに。

 そう思うと泣けてくる。いや、怒りと情けなさで意味が分からない感情になる。


「僕は君を愛していたんだ。それなのに君ってクソ女は」


「私も愛していたわよ。それに今も愛してるわよ。

 でも、だめ。私を裏切った事は許せないわ。

 だから私の手で死を送ってあげたのよ。良いプレゼントだったでしょ。

 愛してるわアダム」


「僕は君を許さない。絶対に許さない」


「そう、牢屋の中でいってなさい。

 あなたは血を飲む悪魔教崇拝者で暴力夫でレイプ魔。

 それに王女を拷問して殺した不倫男。

 きっと後世に語り継がれる大悪党でしょうね。

 よかったわね、昔歴史に名を残したいとか夢みたいな事いってたわよね。

 それが叶ったのじゃない」


「クソ女、必ず復讐してやる。

 絶対にだ。絶対に君をとんでもない目に合わせてやる」


「あらあらアダム。さっきから語彙が少ないわよ。

 メス犬にはあんな情熱的な手紙を書いていたのに」


「黙れ。君に復讐できるならなんだってやる。

 直ぐにこのピンチから抜け出して復讐する」


「そう。頑張ってね。でも、残り少ない日々は良い気持ちで過ごした方がいいわよ。

 後、それと、あなたがこれまで働いて溜め込んだ資産は私が有効活用してあげるわ。

 死罪の人間の資産は国に帰る事になるけど、上手くやって私のものにするから。

 皆、悪魔みたいな凶悪犯を持った妻、悲劇のヒロインには優しいから」


「ゴミ女。公爵令嬢の君は十分に金は持ってるだろ。

 どこまでがめついんだ。君って女は。本当に信じられない。

 でも、忘れるなよ。絶対に僕は君に復讐する。

 今日から安心し眠れると思うなよ」


「化けてでるってでもいうの。

 まぁ、あなた!本当に悪魔教崇拝者みたいね。

 それと心配しなくても死刑は見に行った上げるわ。ちゃん泣いてもあげるわよ。

 私、悲しくなくても泣くのは得意なのよ。それじゃあね、アダム」


 アナは僕から離れる。

 そして観衆にも聞こえるように大きな声で、悲痛な表情で、涙を流しながら。


「アダム、あなたの事は愛してるから!」


 そういって去っていった。

 わざとらしく仰々しい仕草で。

 まるで死に別れる恋人だ。


 僕は歯を食い縛りながら彼女の後姿を見た。

 あの悪魔の様な女のそれを。見た目だけは奇麗な彼女を。


 彼女はメイドのカミラに介抱されるが、目を合わせてこちらを見る。

 カミラの複雑そうな目と僕の視線がぶつかるが、無表情の彼女の心境は分からない。


 アナの父は憎しみをこもった目で僕を見ている。

 娘を溺愛している彼は、アナの言う事を全て信じて僕を恨んでいるのだろう。

 これまでずっと仲良くやってきたのに。 


 バーミンガム大公は仕事をやり終えたような達成感に浸っている。

 この事件を裁けて嬉しいのかもしれない。

 正義がなされたという雰囲気だ。


 他の観衆は、凄いものも見てしまったと言わんばかりに、興奮したように話し合ったり叫んだり。

 まるで祭りの会場だ。


 僕に向かって罵詈荘厳を飛ばす者もいるし、何故か泣いている者もいる。

 騒々しい様々な人の感情が渦巻いていた。

 一種この場は混沌として、人々のエネルギーが渦巻いている。


 僕はその中で一人脱力していた。

 あまりのことで何が何だか分からず、気づくと死刑になっていたのだ。

 僕は自分の無力さと妻の豹変に驚いていた。

 愛していた妻に裏切られたのだ。


 僕はここ数日、いや、不倫をしている当時からアナの心を見やあまったのだ。

 僕が欺いていると思ってた彼女に、逆にずっと欺かれていたのだ。


 僕は奇妙な浮遊感を感じていた。

 僕は皆に囲まれながらも一人だった。


 皆が僕に感情をぶつけるけど、それは何とも思わない。

 今の僕の状況を正しく理解できるのは、多分、妻しかいないのだろうから。

 

 そういう意味では、この騒々しい空間でも妻と僕だけは通じ合えているのかもしれない。

 多くの人がいるこの空間でそんな風に思えるのは、なんとも奇妙だった。

 







 そうして、僕は死刑になった。






【1部 伯爵夫人 暗躍編 終了】



 次回



【2部 公爵令嬢 王城編 】 

ここまでお読みくださりありがとうございます。

無事、1部完走しました。


2部につきましては・・・

2日後【7/11(月)】から再開予定です。




※死刑が確定したのみで、刑は執行されていない状態です

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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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