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39話 3日目   【夫】審問 6

【続・アダム視点】



 大公は、最早観衆をなだめる事は止めたようだ。

 いいや、その事を完全に忘れるほどアナの話しに聞き入っているようだ。


「夫人、アダム伯爵はそのような癖があったのですか?」

「はい、彼はやりすぎたのか、今も私の体に傷の一部あります」


「なんと!夫人!。

 それをみせてもらっても。

 もし、観衆にお見せできないようなものであれば、一部の女性にそれを見せて頂ければ。

 それは証拠になります!是非に!」

「はい。皆様にお見せしても大丈夫です」


 アナは腕をまくると、その手首には縄で結んだような紫の跡が。

 かなりひどそうな怪我だ。


 な、なんだあれ?

 僕は始めてみたぞ。

 嘘だろ!なんだよあれは。

 どうせ自分で紐でもまいてつくったんだろ。


「その傷は?」

「つい最近、彼にやられのです。

 私が彼のその、血の趣味に反対すると・・・

 いきなり乱暴に体を押さえつけられました。

 そして、手首を縄で縛られて、その・・・」


「何ですか夫人。

 大丈夫です。あの男は何も出来ません。

 ここには皆がいるのです。安心して証言してください」


「はい。分かりました。

 その、私は彼に、縄で縛れて・・・・辱めを受けました」


 ぞわーっと会場が沸く。


『な、なんて奴だ。殺人犯の上にレイプ魔だとは!』

『生きてる価値も無い男ですわ!』

『第三王女で飽き足らず、夫人までも』


 会場中から僕に憎悪が向かってくる。

 でも、今の僕にとってはそんな事はどうでもよかった。


 アナだ!

 僕の目には彼女しか目に入らない。


 さっきから何を言ってるんだよ、アナは!

 僕は意味が分からなくて、怒りしか沸いてこない。

 彼女は僕をドンドン悪い方向に向かわせていく。

 一体、何がしたいんだよ、アナは!


「アナ!やめろ!

 お願いだから、そんなでたらめよしてくれ!

 嘘ばかりつくなよ!

 何が血を飲むだ。ばからしい!」


「黙りなさい!被告人!」


 バーミンガム大公は僕に怒鳴った。

 彼は僕にかなり悪い感情を抱いているようだ。


「夫人、よく話してくださりました。

 他に無ければ、どうぞお席にお戻りください」


「はい」


 彼女が席に戻っていくと、カミラと父から暖かく迎えられる。

 だが、アナの隣に座る僕の母は、最早開いた穴が入りたいぐらいの勢いで縮こまっている。

 僕は母の姿を見る旅に申し訳なく思ってしまう。


 だが、観衆はアナに拍手までしている。


『よくいった』

『負けないで』

『がんばったわね。あなた偉いわ』


 っと、彼女にかけられる言葉。

 会場全体が彼女の味方だ。


 バーミンガム大公は目頭を熱くし、涙を流しそうになっている。

 そして、木槌をカンカンと鳴らす。


「それでは、もうほとんど決まったようなものですが。

 何か証言をなさりたい方はいますか?」


 シーンと静まり返る会場。

 誰も手を上げない。


 だが、少しして一つだけ手がある。

 それは僕の母親だった。


 小さく縮こまった母親だけが手を上げているので。

 僕はその姿に涙が出そうになった。

 敵だらけに囲まれた会場で、唯一僕の味方をしてくれる母の勇気に心が動いたのだ。


「マリアンヌ夫人。何かあるのですか?」

「はい」


 小さな子で母は答えた。


「では、どうぞ」


 母親が証言台に立つ。

 観衆は興味深く彼女を見守っている。

 多くの者は同情するような視線を向けている。


「息子は殺人をおかしておりません!

 それを私は信じています」


 母は僕の無罪を訴えてくれた。

 それは僕にとってはとても嬉しかった。

 母はまだ僕を信じてくれるのだ。


「それで夫人、発言を裏付けるような証拠はあるのですか?」


「それは・・・」


 母は黙ってしまう。

 それで察する。多分何も無いんだと。

 でも僕は、母がこの場で証言してくれただけで良かった。

 味方が一人でもいてくれて心強かった。


「お気持ちはお察しします。息子さんの凶行はさぞつらいでしょう。

 でも、真摯に事実に向かい合う事も大切ですよ」


 「うんうん」と頷く観衆。


「違います。息子はやっていないのです。

 そうです。そうなんです。

 私がやったんです。私が第三王女を殺したんです」


 母の発言に、一瞬静まる会場。


「何か証拠があるんですか?」


「私の家に血に染まった服があります。それが証拠です。

 そうです、それがあるんです」


 バーミンガム大公も観衆も、同情するような目線で母を見る。

 僕の事を庇うのためにそんな事を言っているのは誰の目から見ても明らかだった。


「夫人。本当にそんなものがあるのですか? 

 それにあったとしても、何故あなたが第三王女を殺すのですか?」


「それは・・・・その、かっとなったんです。

 そうです。それだけです」


 静まり返る会場。


「夫人。つらいのは分かります。息子が可愛いのでしょう。

 でも、虚偽を吐くとご自身のためにも、息子さんのためにもなりませんよ」


「違います、違います!

 聞いてください!私がやったんです!私が殺しました!」


 母親はバーミンガム大公に掴みかかろうとするので、騎士に取り押さえられる。


「ご夫人、落ち着いてください。落ち着いてください。

 少し、冷静になられた方がよろしいでしょう。

 私は罪の無い者まで裁きたくないのです」


「息子はやっていません!違うんです!

 離しなさい。私から離れなさい」


 暴れる母親。

 騎士団は拘束しながらも、どうしたことかと困っている。

 それをみかねたバーミンガム大公は。


「ご夫人を退出させてください。くれぐれも丁寧に。

 今は混乱なされてるのでしょう」


「違います!私は、息子は無実です!」


 叫びながらも、騎士団に拘束されて母親はさっていった。

 僕はその姿を見送った。

 僕が動かないように、数人の騎士が僕に近づいて睨みを効かせていた。


7月7日ですので。

七夕短編投稿しました。宜しければご覧下さい。

「大嫌いなお星様」(ハッピーエンドor悲恋ものです)

※リンクはページ下部に

あらすじ:

オリアナとヒイロは幼馴染。

二人は小さな頃から仲良しで、やがては結婚しようと思っていた。

だがある日、仕えている公爵令嬢が没落してしまう。

公爵家が悪事を染めていた事により、連帯責任で奴隷身分まで落ちてしまう二人。

二人は懸命に働くが・・・

奴隷のルールでは、男女は話をしてはいけない。

1年に1度、7月7日だけ、奴隷は自由に出来る。

だから二人は、7月7日、七夕の夜にだけ会う。

一年思いつづけて、たった一日だけ触れ合えるから。


今日も星を見上げて、天に願う。

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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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