34話 3日目 【夫】審問 1
とうとう始まります。
審問タイム。
ここまで長かった・・・
では、どうぞ。
【続・アダム視点】
僕が部屋の中に入ると、その中には多くの人がいる。
傍聴席には、見知った貴族に王城ですれ違っただけの者も。
見たところ、多くの役人と貴族が揃っているようだ。
王族への忠誠を示すためか、遠方からこられた人の姿も。
よくもまぁ、この短い間で王都までこれたものだと感心する。
それぐらい彼らにとっては王城との繋がりが大事なのかもしれないが。
一際豪華な装飾がされた場所を見ると、そこには親しい者達の姿。
妻のアナスタシア、彼女の傍付メイドのカミラ、それに彼女の父親のクリント公爵。
僕の母のマリアンヌもいる。
何故かアナスタシアの席だけ、他の人よりちょっと高めで装飾が豪華なのは謎だ。
余所行きのドレスアップをしたアナスタシアは。
僕の姿を見ると「はぁ!」っと大げさに自分の顔の周りに両手を挙げ。
「アダム!アダム!私はここですよ!」っと声をかけてくれる。
僕は彼女に対して手を振ると、彼女も振り替えしてくれた。
「無実を信じてますから!」っと強く応援してくれる。
僕は手を振って答える。
なぜなら会場中が騒がしく、僕の声は彼女に届きそうにないからだ。
不思議とアナの声は人ごみでもよく通る。
それから傍聴席以外の席を見る。
今回の審問を取り仕切る審問官の席には、前回と同じバーミンガム大公の姿。
彼の席がこの部屋で一番高い場所にある。
大公は、気力が充実した顔をし、白いふわふわの顎鬚を触っている。
僕を告発する検事の席には、騎士団の男の姿。
あの朝屋敷にきて僕を拘束した男だ。
彼は僕を見るとニヤっと一瞬笑った。
彼は余程今回の事に自身があるのかもしれない。
僕が前回と同じ、部屋の中央に設置してある椅子に座る。
ここまで僕を連れてきた監視官のバーニーは、部屋の隅に移動し、部屋の警備を行う騎士団の混じる。
するとバーミンガム大公が木槌をカンカンと鳴らし。
「静粛に、皆様、静粛に」
その声と音で会場は静けさを取り戻す。
それに満足した大公は。
「これより第三王女殺害事件の審問を始めます。
それでは、開廷」
カンカンカン
っと木槌を鳴らし、大公は僕を見る。
「では、被告人、アダム・デ・マドリード伯爵。
確認しますが、あなたは本人で間違いありませんね?」
前回も聞かれたが、勿論僕は僕だ。
それ以外にはありえない。
あまり意味は無い質問だと思うけど、必要な事なのだろう。
「はい。間違いありません」
僕はなるべく大きな声で答える。
しっかり者だと会場の者達に印象付けないと。
そうして仲間を増やさなければ。
「よろしい!では続けます。
今回の事件は実に痛ましいものでした。
第三王女様がかくも残酷な方法で殺されたのです。
なんという悲劇でしょうか?
このような悲劇を目にするとは思ってもいませんでした」
会場はざわざわし、同情の言葉で満たされる。
第三王女は皆に愛されていたのかもしれない。
僕も彼女、セレステが死んだ事はとても悲しい。
「それで、アダム伯爵。
審問を効率的に進めるためにあなたに問います。
あなたは第三王女を殺しましたか?」
会場中の視線が一斉に注がれる。
「いいえ、殺していません」
「おぉー」っと会場が沸く。
『嘘つくな。お前がやったんだろ』
『とっとと白状しろ!このクズが』
『王女様を返せ!』
どこからか罵詈荘厳が飛んでくる。
バーニーが言っていたように、敵は多いのかもしれない。
カンカン。
「ご静粛に、ご静粛に」
審問官である大公が木槌を鳴らして、会場内のざわつきを沈める。
それから再び僕を見る。
「分かりました。
被告人は、あくまで殺していないと主張するという事ですね」
「勿論です」
「それでは審問を続けます。
まずは捜査を担当している騎士団の、ダグラス騎士から状況説明です」
検事席に座ってた騎士団の男が立ち上がる。
「では、説明させていただきます。
第三王女様が殺害されたのは、死体の状況からみて三日前の深夜と推測されます。
彼女の体には複数の損傷がございます。
両手、両足、両目、胸部等、多くの箇所に釘が打たれていました。
どれも釘の底が皮膚にめり込むまで入念に打ち込まれています。
ここに、その釘と同じものを用意しています」
するとダグラス騎士は、手のひらサイズはあるだろう大きな釘を頭上に掲げ、会場中の者に見せる。
それを見て観衆は想像してしまったのか。
会場がざわつく。
『あんな大きなものを・・・』
『とても恐ろしいわ。心がひやっとしました』
『なんてことでしょう。想像しただけで卒倒してしまいますわ』
カンカン
「ご静粛に、ご静粛に」
バーミンガム大公が木槌を鳴らす。
会場が静まると大公はダグラス騎士を促す。
「続きをどうぞ」
「はい。
死体の状況を見ますに、彼女は生きたまま何本もの釘を打たれたようです。
その場合の苦痛は想像もできません。
痛みで気絶することもできないでしょう。
気を失っても、釘を打たれるたびに意識は回復するのでしょうから」
「おー」っと会場に悲痛の声が木霊する。
第三王女が受けた痛みを想像し、そのつらい運命を惜しんでいるのかもしれない。
「なんと嘆かわしい・・・。それで死因の方は?」
「はい。出血多量が原因かと。
つまり、釘を打たれ事で血が流れすぎたのかと。
釘の傷も大きいのですが、上手く致命傷は裂けているようでして。
意図的に彼女が苦痛を長時間受けられるようにしたのです。
これは通常拷問に使われる手法です」
「な、なんと、第三王女様が拷問を受けたという事ですか?」
「真に遺憾ながら、傷をみるかぎりそのようです」
会場がどっと沸く。
『まぁ、なんてこと!』
『王族にそのようなことが』
『許せませんわ』
王女が拷問を受けて王都で殺された事にショックを受けているのだ。
そして彼らはその憎しみを込めて僕をさげづむ様に見る。
だが僕は、そんな視線よりも。
ダグラス騎士が告げた事実がショックだった。
第三王女、セレステが、僕が愛していた彼女が拷問されて殺されたのだ。
僕はショックで言葉が出ない。
信じられない、そのため。
「おい、それは本当なのか?本当に彼女は拷問されて殺されたのか?」
僕はダグラス騎士に向かって叫んでいた。
騎士は「何をいまさら。お前がやったんだろ」と言わんばかりの表情で僕を見返し。
「間違いありません」
僕は続いて頭の中に浮かんだ言葉を口に出す。
「それで、犯人の手がかりは?」
だが、すぐさま、カンカンっと木槌が鳴らされる。
「被告人、質問は私が行います。
被告人は許可があるまで口を開かないように。いいですね」
「はい」
しまった!
ついつい興奮してしまった。
だが、それだけセレステの事はショックだったのだ。
まさかそんな殺され方だったとは。




