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29話 2日目:夜 【母】ユヌス教団

【マリアンヌ視点】


 アダム伯爵の母、マリアンヌはユヌス教団の教会に来ていた。

 息子の妻と話してから、幾人かの貴族と会って息子への協力をお願いした後。

 教団の人に呼ばれたのです。

 なんでも「息子の件」で大事な話があると。

 

 今夜はミサが開かれていませんでしたので、教会の敷地内は昨日と比べるとかかなり人は少ないようです。

 でも、無人というわけではなく、多くの信者が何やら作業しています。

 一体、何をやっているかは知りませんが。


「マリアンヌ夫人、どうぞお越しくださいました」


 ブラッドリー司祭が教会の祭壇で私に告げます。


「はい、何でも息子について大事な話があるとか」

「そうなのです。私も聞いて驚いたのですが、何でも明日審問が開かれるようなのです。

 そこで最悪結果が決まってしまうかもしれないのです」


 その言葉を聞いて私は衝撃を受けました。

 寝耳に水とはこの事です。


「そんな、そんな事が・・・。

 だってまだ息子が捕まって一日、明日で二日ですよ。

 そんなに早い審問なんて聞いたことがありません。おかしくはありませんか」

「私達も驚いています。ですが、王城の考えは違うようです。

 なので、明日は夫人も呼ばれると思いますよ」


(なんですって!そんな・・・)


 私は震え。


「まだ、私には何の連絡も来ていませんが」

「多分、明日の朝連絡して、来れないようなら証言は無視されるのでしょう」


「そんな横暴が許されるのですか?」

「はい。今回の事はかなり怪しいと思っています。

 ですが、そうなっているのですから仕方がありません。

 それぐらい王城の要請が強いのでしょう」


「ですが、それなら息子はどうなるのですか?

 私は何人かに息子の無実を訴える協力を求めているのですが」

「難しいでしょう。ですが私達も協力します」


 司祭はお気の毒にという表情。

 でも、私は諦めていません。心強い協力者がいるのです。


「息子の妻にも協力してもらっていますので、きっと大丈夫だと思います」


 司祭は私の声に少々戸惑った表情をし。


「そうですか、アナスタシア伯爵夫人ですか・・・」


 怪訝な表情をする司祭。

 まるでアナスタシアに問題があるような言い方。

 私は不安になって聞いてみます。


「どうしたのですか?彼女は息子のためになってくれているのですよ」

「マリアンヌ夫人。彼女は妻ですので世間体的にはそうなのでしょうが。

 あまりアナスタシア伯爵夫人を信用なさなら方がよいかと思います」


 私は司祭の言葉に頭をを思う。

 なぜ彼はそんな事を言うのでしょうか?

 アナスタシアのどこがいけないというのでしょうか?

 あれだけ私に、いいえ、息子を救うために奔走してくれているというのに。


「その、司祭様。何かあるのですか?」

「いえ、アナスタシア伯爵夫人は良い人なのかもしれませんが、貴族という者を甘く見ない方が。

 これは私が言う事ではないかもしれませんが。

 貴族であるマリアンヌ夫人もよく知っているかと思いますが」


 私は今は貴族ですが、元は平民です。

 息子の出世のお陰で貴族身分には慣れましたが。

 貴族世界のやり取りには正直精通していません。

 なので司祭の言わんとすることがよく分かりませんでした。 

 だからこそ私は不安になるのです。

 何か勘違い、見落としをしているのではないかと。


「いいえ、司祭様。言ってください。正直に言ってもらって構いません」

「それでは・・・はい。

 現状、息子さんが重罪で疑われているのです。

 それならば、多分ですが、伯爵夫人。

 マドリ-ド家はあなたの息子との関係を切るのではないかと思います。

 自分達の一族に被害が及ばないように」


 私は司祭の言葉に衝撃を通りこして、頭を殴られたようなショックを受けました。

 一瞬、言葉の意味が分からなかった程です。


「まぁ!それはつまり、息子の妻はこのピンチに逃げ出すという事ですか?

 そんな人でなしの行動をすると?

 あの可愛いアナスタシシアがそんな事をするというのですか? 

 一体どんな証拠があってそんな事をいうのですか?」


 私の勢いに押されたのか、司祭は少し後づさります。


「いいえ、証拠はありませんが。

 その可能性もあると言うだけです」


 この司祭はなんて事をいうのでしょうか。

 済ました顔で私の妻の息子を侮辱するのです。

 公然と人でなしであるというのです。

 私は私自身が侮辱されたように思いました。 


「ふざけないでください!司祭様。

 アナスタシアはとっても良い子なんです。

 私にも優しくしてくれますし、息子が選んだ人なのですよ。

 そんな人が、そんな非常なことをするわけありません。

 今日も彼女は私に向かって、一緒に息子を救うことを約束してくれたんです」


 私は司祭に言ってやりました。

 アナスタシアは私が無礼な行為をして許してくれる子なのです。

 ここで私が信じないでどうするのでしょうか。


「そうですか。ですが、それは本物の愛情からきた行為なのでしょうか?

 彼女の利益のための行動ではないでしょうか? 

 女性、特に貴族女性ほど表と裏が違う人もいませんよ」


 なんて人!

 司祭様とのあろう人が人を信じないなんて。


「司祭様、あなたは人間不信か何かなのですか? 

 よくそれで信者を率いていられますね?

 私はその事に今とても驚いています」


 司祭は苦笑しながら表情をとりつくろいます。


「私は人間不信ではありませんよ。

 その逆です。人のことを誰よりも信じています。

 少々、見方が違うのかもしれませんが」


「そうでしょうとも。司祭様はとても歪んでいるように思えますわ」


 私はチクリと毒を吐いていました。


「それは手厳しいですね。

 ですが、私は夫人の息子さんの妻の愛情が本物である事を祈っています。

 そうであるといいですからね。愛は尊いものです」


 司祭は全く表情を変えないで「祈っている」と。

 全然感情を感じませんでした。本当に他人事という印象です。

 その飄々とした態度が許せませんし、彼に「愛」の何が分かるというのですか。

 彼ほど愛から遠い人はいないと思います。


「お祈りありがとうございますわ。司祭様。

 でも、大丈夫ですの!私は神頼みをしないたちなのです」


 私は皮肉の意味を込めて言ってやりました。

 しかし、司祭はあまり動じていないようです。


「夫人、気分を害されたようでしたら申し訳ありません。

 しかし、夫人のために伝えておこうと思ったのです」


 この期に及んで「気分を害されたらですって」。

 きっと、私が怒る事を分かりながら言ったでしょうに。

 なんて偽善者。

 私は司祭がいってるように「気分を害しています」が、それを口には出しません。

 それぐらいの礼儀はあるのです。


「私は気分を害してなどおりません。

 司祭様には感謝しております。

 でも、明日審問となれば、十分に寝て体力を温存しなければなりません。

 ですので、これにて失礼します。とても実りの有る話しでしたわ」


「分かりました。夫人。

 あなたと、あなたの息子の幸せを願っております。

 ですが、今一度考えてくだされば幸いです。

 私達はマリアンヌ夫人の味方ですので。

 あなたの息子さんの妻、マドリード家ではなく」


 この期に及んで味方アピールをする司祭に、私は呆れて物も言えません。


「ええ、ありがとうございます」

「祈っておりますよ。私達は味方です。

 くれぐれも、誰が味方であるか、判断を誤ることがありませんように」


 私は司祭の言葉を背に建物を出ました。


 私は夜道を歩きながらも、あんな良い子、息子の妻を疑う司祭に正直頭にきていまいした。

 会った事も無いアナスタシアの事を侮辱するなんて。

 全く、信じられません!


 やっぱり宗教家なんてそんなものなのかもしれません。

 しょっちゅう何かを批判していないと息でもできないみたいです。

 やはりユヌス教団は信用できません。


 頼りになるのは親族で、息子の妻、アナスタシアです。

 彼女しかいません。

 でも、そんな中でも、審問の話は聞けてよかったです。

 彼女にも伝えた方がいいですね。


 ですけど、教団が知れたのですから、当然彼女も知っているでしょう。

 懸賞金までかけて情報を収集しているのですから。

 なので私から伝える必要はないでしょうね。


 それより司祭には頭にきました。

 あんな人を一時でも信用できると思った自分が恥ずかしいです。

 きっと昨日は酒に酔った頭で雰囲気に乗せられてしまったのです。

 

 今日はもう帰って寝ましょう。

 そうしましょう。

 なんでしょうか、無性にお酒が飲みたくなってきました。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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