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28話 2日目:夜 【妻】貴族面談

【アナスタシア視点】


 アダム伯爵の母、マリアンヌが帰った後。

 伯爵夫人であるアナスタシアは思っていた。


 彼の母、マリアンヌったら。

 もー、信じられないぐらい、本当にお人よしなんだから。

 平民出の人はそういう人が多いとは聞いていたけど。

 彼女程それに該当する人はいないと思うわ。

 こちらの思ったとおりに動くんだもの。

 

 少し親しいそぶりを見せれば、すぐに信用しちゃうみたい。

 まるで犬ね。アダムみたい。

 少しは人を疑うって事を学ばないとね。

 

 それにマリアンヌは何故か気にしてるみたいだけど。

 フキンを投げつけられて罵倒された事なんて、もうどうでもいいの。

 そんな事一晩寝たら忘れるわよ。

 そんなみみっちい事を気にしたら貴族としてやっていけないわ。

 アダムの小心者気質は、あの母から受け継いでいるのかもしれないわね。




 そしてその後、私は何人かの貴族と会った。

 皆が優しく接してくれるのですっごく良い気分だったけど、一番の目的は情報収集。

 アダムの事件、第三王女殺害事件がどのような状況にあるのか知る必要が会ったの。

 王城に行っても公式には手に入らない事は目に見えていたので、こうやって関係者に会って聞くの。

 幸い、私と会いたい人は大勢いたのでこちらが選び放題だった。

 私って本当人気者。



 それで私は客間で一人の貴族を出迎えた。

 その名はユーリ・デ・デュポン侯爵。

 端正な顔で貴族令嬢に人気の独身貴族。


 彼は私に気があるようだけど、私は常に彼の申し出を跳ねつけてきていた。

 はっきりいって、彼の事はなんとも思っていないから。

 いいのは顔と身分だけ。

 本当にびっくりするぐらいそれだけの薄っぺらい男だって、一目見て悟ったから。

 私は子供の男には興味がないの。

 

 でも、彼はずっと私の事を諦めてないみたい。

 不思議な事に、私が彼の事を気があるとでも思ってるみたいだし。

 まぁ、私がどっちつかずの態度を取り続けているのもあるんだけどね。

 だって、一人でも多くの男を惹きつけておいた方が便利だし、気持ちいいから。


 だから今日も、彼はいつも通り私の姿を見ると満面の笑顔になる。

 私の夫が王族殺しで捕らえられているというのに、それはそれは場違いな爽やかスマイル。

 「頭おかしいじゃない」と思ったけど、私は彼の態度に対して不快な表情を見せないようにする。

 逆に「会えて嬉しいわ」と満面の笑み。


「よくいらしてくれました」

「なにをおっしゃいます。アナスタシアのためなら、いつでも参りますよ。

 いつ、どんな時でも馳せ参じます」


 彼は私の手をとると、手の甲に口づけをする。

 手に当たった唇の感触に「ゲッ」と思いながらも気にしないフリ。 


 それからお互い席につき、カミラが紅茶を出し、ゆっくりと飲む。

 彼はドカって感じで豪快に飲んでたけど。

 喉が渇いていたみたい。緊張でもしてるみたい。

 で、紅茶を全部飲んだ彼は、カップの宙に掲げてやたら観察してから話し始める。


「それでアナスタシア、今回は大変なことになったね。

 でも、僕はそれが良い事だとも思ってるんだよ。

 君にとっては大変なことかもしれないけど、あの男は信用できないって前からいっていたろ。

 あんな男は君にはふさわしくないと。君を不幸にすると」


 何を思ったのか、いきなりアダム批判を始めたユーリ。

 「相変わらずだなー」と私は思う。

 これでこそユーリだと。

 彼は空気を読むことをしないというか、常に自分が正しいと思っているみたい。

 それで思ったことを口に出して言うの。

 ある意味純粋でピュアね。


「まぁ、ユーリ侯爵。夫を非難なさるのですか。

 まだ罪が決まったわけではありませんよ」


 私が少し不快な声を出すと。

 彼はやっと自分の言葉に意味に気づいたのか、「はっ」と気まづそうな顔をする。


「いいや違うよ。気を悪くしたら謝るよ。

 君の事を悲しませるつもりはなかったんだ。 

 でも、僕が掴んだ情報によると彼の罪はほぼ確定だよ。

 王城はその方向で動いているからね。

 そういえば、僕を今日ここに呼んだ理由だけど・・・」


 彼は思い出したように最後の言葉を口に出す。

 私はにっこりと笑い。


「ええ、それは勿論あなたに会いたかったからです。

 夫のことがありとても不安だったのです。

 一体、今、どうなっているのか。

 誰かと話していたかったのです。

 そしたら、ユーリ侯爵の顔が浮かんだのです。

 あなたしか頼れる人がいなかったのです」


 私が感情を込めて話すと、彼は嬉しさを抑えきれないのか顔をほころばさせる。

 頬のにやつきを抑えようと妙な動きをしてお魚みたい。

 やっぱり彼はピュアだ。

   

 勿論私が言った事はお世辞だけど、彼はそれを信じたようだ。

 今日は何人もの人に同じようなことを言っている。

 会う人会う人に。そうして情報を得ているの。


 ユーリ侯爵は喜びをかみ締めるように飲み込んでから。

 しばらく間を空けて話し出す。


「そうですか。安心してください。僕はいつもあなたの味方です」

「でも、夫はどうなっているのですか?」


「アダム伯爵は、明日審問にかけられる予定ですよ。

 早ければそこで死刑を下されて終わりです。

 何故か上の方は早くこの事件を解決したいみたいでしてね。

 侯爵である私まで働かされているのです。

 全く、よく分かりませんね。王族が絡むと一筋縄ではいきませんからね。

 おっと、今のは決して王族批判ではありませんよ。私は王家に忠誠を誓っています」


「そうなのですか。随分早いのですね」

「ええ、何故だか分かりませがね。

 ですのでアダム伯爵は終わりでしょう。

 夫人はすぐにでも行動を起こしたほうがいいと思いますよ」


 彼は意味深に言う。

 彼が言う「行動」は、お父様が提示した「家族関係の解消」という事だろう。

 つまり、それによって自分の身も守ったほうが良いと助言してくれているのだ。

 今日はこの助言を何度も受けた。

 皆、考える事は同じようだ。


「ご心配ありがとうございます。いくつかは検討しておりますの」


「さすがアナスタシア夫人。

 覚えておいてください、私はあなたの味方ですから。

 別れて直ぐは体裁が悪いでしょうが、いつでも声をかけて頂いても構いませんよ。

 一人の夜は心細いでしょうから。私ならそんな寂しさを払うことが出来ると思います」


 あまりにも分かりやすく誘う言葉に、カミラが一瞬ギロっとユーリ侯爵を睨むのが見えた。

 だが私は微笑を崩さずに。


「そうですね。お言葉だけ受け取っておきます」


 無難に反応してから和やかに会話を続けた。




 ユーリ侯爵が帰った後。

 カミラがつぶやく。


「アナ、あんな男をこの屋敷に呼ばなくても。

 あなたの視線が外れた隙に 、アナをどんな目で見ていたかご存知ですか?

 まるで嘗め回すように見ていたのですよ。あまりにも不躾です」

「いいのよ、カミラ。

 確かに彼は少々性格に問題がある方ですが、有益な情報はくれたのですから」


「でも、許せませんわ。

 手元が狂ったフリをして、頭の上から紅茶をかけてやろうかと何回も思いました」

「もう、カミラったら。そんな事をしてはダメよ。

 ちょっと見たい気もするけど、絶対にダメよ」


「勿論です。アナスタシア様。

 ですが、それぐらい私はあの男に嫌悪感を感じました」

「あれでも、貴族令嬢には人気があるのですけどねー」


「顔と身分につられる幼い女性ぐらいでしょう」

「まぁ、そうではあるみたいだけど、どんな層にしろ人気がある事はいい事だわ。

 それでカミラ。今日は後何人に会うのでしたっけ?」


 カミラは書類をパラパラとめくると。


「後、三人になります。

 夕食前に一人。ご一緒に夕食が一人。その後に一人です」

「そう、中々ハードね。

 今日は何回紅茶を飲んだことか。

 でも、カミラの紅茶は何回飲んでも飽きないわね」


「滅相もございません。アナスタシア様。

 ですが次まで時間もありませんので、そろそろお色直しを」

「そうしましょうか」


 私は控え室に入り、他のメイドに化粧を任せた。

 これまで得た情報によると、明日がアダムの審問に間違いないみたい。

 それなら、もしものために備えて今日中になるべく多くの情報を集めなればならない。

 ずっと気は抜けない。


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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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