23話 2日目 【妻】父、クリント公爵(上)
2日目に入りました。
【アナスタシア視点】
さすがお父様!
夫が第三王女殺害の容疑で拘束された次の日。
アナスタシア伯爵夫人の家には、国の重鎮であり、彼女の父親であるクリント・デ・マドリード公爵が訪れた。
お父様は、会った瞬間私をぎゅっと抱きしめてくれました。
優しく、小さな女の子にするみたいに。
「アナ、話は聞いたよ。
本当は昨日のうちに来たかったんだけどね。
それにしても大変な事になったようだね。大丈夫かい?」
「お父様ー、とても辛かったのです。
いきなり騎士団が屋敷に襲いかかってきたのですから。
もう、嵐みたいであっという間でした。
夫の部屋はもうひどいありさまです」
「そうかい、アナ、やっぱり辛かったね。
でも、よく耐えた。さすが私の娘だ。
母さんも来たがっていたんだけど、早急にやらなければいけないことがあってね。
今日は私だけですまないね」
「いいえ、お父様。
勿論お母様にもお会いしたかったですけど、お父様が来てくださっただけで嬉しいですわ。
だて、不安でしょうがなかったのですもの」
「アナ、よしよし、もう大丈夫だ」
お父様が頭をなでるので、私はそれを受け入れる。
愛情からか、お父様は私を未だに子供扱いしているから。
暫くしてから私は顔を上げて。
「お父様、それでお話の続きは、お部屋でよろしいですか?」
「おっといけない、そうだね。
立ち話ではなんだね。では、そうしようか」
私はお父様を応接室に案内した。
◇
カミラが紅茶を入れてコップを机の上に置く。
私達はそれを飲んで落ち着いてから。
「それでアナ。アダム君の事だけど」
「ええ、お父様、聞いてください。大変なんですの。
昨日王城にいきましたら、馬小屋の様な場所に捕らえられていましたの。
もう、私、見たときは気を失いそうでした。立っているのもやっとでしたのよ。
息も出来ませんでした」
「アダム君は容疑者だからね。それは仕方が無いのかもしれない。
でも、よく会えたね。かなり厳重に捜査していると聞いていたけど」
「そうですわ。
その件についてはお父様のお友達、ベネット侯爵に好意を示して頂きました。
お父様によろしくとの事です」
「ほ~う、ベネット侯爵か。懐かしいね。
今は王城の警備担当だったね」
「はい。お父様。とってもお元気そうでした」
「そうかそうか。それはよかった」
それから少し間を置き、紅茶を一口飲むと。
お父様は一瞬目を下にそらしてから私を見る。
どうやら話の変えるみたい。
お父様は言い難い事を話す時、よくそうするから。
「それでアダム君なんだが、実際はどうなんだ?
その、王女様に関してだが」
「それは・・・私は勿論アダムを信じています。
でも、今は混乱していて、上手く考えがまとまらないのです。
その、何が何だか・・・」
私は両手でぱっと顔を抑える。
「アナ、アナ、ごめんよ。つらい質問をしてしまったようだね。
でも、王族殺しだからね。
もしもの時の事は考えないといけないんだよ」
「もしもの・・・こと?」
私はお父様が何を言っているのか分からないようなフリをする。
実際は何を言いたいのかよく分かっていたけど。
「アナ、落ち着いて聞いておくれよ。いいかい?」
「な、なんですの?どういうことですか?
お父様・・・何をおっしゃりたいのですか?」
私は焦って驚き、不安に揺れるフリをする。
オロオロと瞳を動かして悲壮感を漂わす。
「いいかい、アナ。
王族殺しはこの国では重罪なんだ。それは国家に深く関わることだから。
だから犯人が死刑になるのは通例だし、その関係者も罪に問われる。
実際の犯罪に関わっていなくてもだ」
「お、お父様、いったい何を、何をおっしゃりたいのですか?
私にも分かるように言ってくださいまし」
私は取りみだした様に体を前に乗り出す。
お父様につめよるように。
「アナ、落ち着いて、落ち着いて聞いておくれ」
「お父様、こんな時に落ち着いてなどいられません!
私はいてもたってもいられないのです」
「そうだね。それじゃ、そのままの姿勢で聞いておくれ。
出来るだろ?アナ?」
「はい、勿論です」
「いい子だ。
それで、もしアダム君が犯人となった場合だが・・・」
「おっ、お父様なんてことを・・・・
アダムは犯人ではありまえん!絶対に違います」
「分かってる、分かってるから、アナ。
そういう仮定の場合だよ。あくまで仮定の話だよ」
「・・・はい。分かりましたわ」
「そう、事実は置いといて。
もしアダム君が犯人となった場合、関連してアナが死刑になる可能性があるんだ。
それに私達家族にも影響が及ぶ可能性がある」
「そ、そんな、そんな事・・・あんまりだわ」
私は絶望の表情でソファにふわっと身を投げる。
まるで全身から力を抜いたように。
ちょっとソファの弾力がありすぎて、ポワンって感じで思ったより跳ね返ったけど気にしない。
ドレスと髪もワサって揺れちゃったけど気にしない。
カミラは笑いそうになってるけど気にしない。
だって今はシリアスモードなんだから。ここで笑ったらすべた台無しだから。




