13話 1日目:昼 【夫】予備審問
【アダム視点】
ベッドで横になっていると、いつのまにか寝ていた。
ドンドンと扉をノックする音で起きる。
「アダム伯爵。時間ですよ」
若い騎士が扉を開けて外に促す。
「なんだ。釈放か?」
「違います。今から審問です」
分かっていたけどちょっと気落ちした。
釈放されるかもと5%ぐらいは思っていたのだ。
部屋を出て彼についていく。
今は無性に誰かと話したかった。
「なぁ、審問には誰がいるんだ?まさか、王族もくるのか?」
「分かりません。私は出席者全員を把握してはいませんので」
「そうか、それならかなりの数がいるのか?」
「どうでしょうね。でも重大事件なので少ないはずはないですね」
「そうか。そうだよな。なんせ王族殺しなんだから」
僕は自分に自分で言い聞かせる。
「それで、容疑者は僕だけなのか?
他にも何人かいるんだろ?
そうなんだろ?どれぐらいいるんだ?」
「さぁ、どうでしょう。
では、もうそろそろつきますのでお静かに」
しばらくすると、とある部屋に通された。
その部屋の入り口には多くの人が集まっており騒がしい。
でも、僕の姿を発見すると視線が一斉に集まり、ひそひそ話がとまった。
その中を、人ごみをわけるようにして僕は騎士につれられて部屋の中に。
室内には部屋の中央の椅子に椅子がポツンと一つ。
その椅子をとり囲むように設置された机と椅子。
めったに使用されることがない特別審問場だ。
席には屋敷に来た騎士の他、何人もの貴族が腰掛けている。
その中央、一番高い席に腰掛けているのは、国の法務を指揮しているバーミンガム大公だ。
確か恩とし60歳だったか。
白い髪と白い顎髭がふさふさだ。
僕は騎士に目線で合図され、中央の椅子に座る。
すると、「カンカン」と木槌が鳴らされる。
「皆さん、静粛に、静粛に」
バーミンガム大公の声でその場が静まる。
「では、これより、アダム・デ・マドリード伯爵の審問を始める。
初めに言っておくと、これは正式なものではなくあくまで予備審問である。
そのため、本日は重要な事項だけの聴取とする」
バーミンガム大公が黙ったままこちらを見ているので。
「はい。わかりました」
そう答えると彼は満足する。
「その前にまず確認したい。
君はアダム・デ・マドリード伯爵で間違いないですね?」
「はい」
「ではいまから君の聴取を始める。
くれぐれも嘘はないようにして頂きたい。
これは国王様直下の事件であり、虚偽を働いた場合は厳罰処す可能性がある」
「はい」
「よろしい。では、単刀直入に聞く。
君は第三皇女、セレステ・デ・ヴァンダーウッド様を殺したか?」
皆の視線が僕に集まるのが分かる。
多くの人が息を飲んだのが伝わってくる。
僕はきっぱりと告げる。
「殺していません!」
「そうか。そういうであろうな。
王族殺しの場合、下手人は死刑、その家族も厳罰に処すのだから。
それでは昨晩から朝までの行動を話してもらいたい」
僕は真実を話した。
昨晩は妻とともに食事を取り、21時ごろに寝たと。
そして起きたら騎士団に捕まったと。
剣の柄でいきなり殴られたとも証言した。
話をきいている面々は疑わしげな視線を向けてくる。
まるで僕が犯人だと決め付けるような雰囲気だ。
僕が話し終わると、それまで黙って聞いていたバーミンガム大公が口を開く。
「アダム伯爵。21時に寝るのは子供だ。
内の子でもその時間には寝ない。
そんな嘘をいっていないで、本当のことを話したらどうだ?」
彼の言葉に「うんうん」と頷いて同意する人々。
頭の立てフリがシンクロして人ごみに伝染しているようだ。
「本当です。その日は、その・・・つかれていたんです。
なんなら妻に聞いてください。確認してください。
妻もそう答えるはずです」
「アダム伯爵。
分かっていると思うが、家族の証言は信用度は低い。
なぜなら犯人を庇う可能性があるからだ。
信用できる第三者の証言はないのかね?」
その言葉にイラっとしてしまう。
「あるわけないでしょ。
家の中なのに。ある方がおかしい。
あなたは昨晩の行動を第三者が証明できるのか?」
「私の事は今問題ではありません。
ですが随分反抗的な態度ですね。
これなら殺人を犯してもおかしくないかもしれません。
伯爵は記録を見る限り、元々荒くれ者が集まる冒険者出身ですね。
生粋の貴族ではなく」
室内の幾人かが、僕をさげづむ様な目で見てくるのが伝わってくる。
「偽者か」という声さえ聞こえる。
「な!それは今関係ないだろ!
この事件とどう関係あるんだ」
「それがあるのですよ。
自分の出自のために性格が歪んで、貴族のトップである王族を殺してしまったのかもしれません。 人の心の闇は分かりませんからな。
これで動機は十分ですね」
はぁ?
大公は何を言っているのか。
動機が十分だって。そんな事ある分けないだろ。
「それでは話を戻して。
あなたは昨晩は21時に寝てそれ以降はずっと夢でもみていたというのですね?
それが真実だと」
「はい。その通りです。
夢は見てません。見たかもしれませんが覚えていませんが、21時頃に寝ました」
「いいでしょう。
では、次に第三王女についてです。
あなたは彼女のことを恨んでいましたか?
殺したいと思っていましたか?」
「そんな事ありません。いっさい思っていません」
同じように周りからの疑わしい視線はとまらない。
「そうですか。では、今日はそれだけです。
現在も捜査が進んでいる状況ですので、状況を見て適宜審問を開いていきます。
ですが、捜査を効率よく進めるために最後にもう一度聞きます。
アダム伯爵、あなたは殺していないのですね?」
「はい」
「自分の侵した罪は言いにくいものです。
誰でも最初はやっていないと否定してしまうでしょう。
でも、早めに告白すればあなたは無理でも、母親ぐらいは救えるかもしれませんよ。
それが人としての道ではありませんか?
どうですか?人として最後をまっとうしたらどうですか?」
大公は諭すように、やさしく僕に語りかける。
まるで僕が犯人だと決め付け、温情をかけるかのように。
「殺していません」
バーミンガム大公は、仕事が増えてがっかりした様な表情だ。
僕が自白して事件が直ぐに解決すれば言いと思っていたのかもしれない。
「そうですか。残念です。では、容疑者を外へ」
その後、僕は若い騎士につれられて個室に戻された。




