12話 1日目 【妻】騎士団 vs 伯爵夫人
【アナスタシア視点】
あーあ、行っちゃった。
連れて行かれちゃった。
夫であるアダムが騎士団に連れて行かれちゃった。
騎士に囲まれた彼は、何を思ったのか剣をとろうとして気絶させられた。
まさかあの場で戦おうとでも思ったのかもしれない。
凄い数の騎士がワラワラと屋敷にいて、数人の騎士に囲まれていたのに。
無謀な男気を発揮した彼は、対価にズドンを剣で殴られて気絶した。
ちょっと間抜けで痛そうだったなぁ。
アダムを拘束した騎士団はその後。
屋敷を捜索して色々な物を持っていった。
本当に色々な物を。
「ありったけもっていってやる!全部な!」って感じで。
まるで野盗みたいに。
そう、彼らはちょっと身なりがよく、お揃いの制服を着た野盗だ。
多く持っていけばいく程仕事してる感があるのかもしれない。
多分、きっとそうなんだと思う。
私の屋敷から王城に帰るまでに、たくさんのものを運べば、「さぞ仕事した。さすが騎士団」って市民に尊敬されるんだろうし。
王城で「これだけ押収しました!」って部屋一杯の物を見せたら。
チラッと3秒程見た王族が「よくやった」って褒めると思っているに違いない。
とにかく王族に「全力で働いていますアピール」したいんだと思う。
でも私にはそんな事関係ない。
だから騎士たちにしょちゅう声を上げて注意した。
「それは高価なものなのですよ。一体いくらすると思ってるんですか?」
「今あなたが粗雑に扱っているその絵画ですがね、あなたの月の給料より高いと思いますわ」
「あなた、そんな小さな壷を持っていってどうするんですか?
その中に犯人が隠れているとでも思ってるのですか」
そんな感じでいちゃもんをつけまくってやった。
カミラも私を援護してくれた。
騎士達はしんそこ迷惑そうな顔をしていたけど、私は言いまくってやったわ。
気丈なところを見せ付けていかないと、屋敷を犬小屋の様にボコボコにされるんじゃないかと思ったから。
傷をつけられたら後で王城に請求しようと思っていたから。
メイド達にも騎士の動きを見張らせた。
少しでも家具に傷でもつけようなら。
「奥様!、奥様!」と彼女達が私を呼び、私がすぐにかけつけて注意をする。
そのうち騎士たちは私が来ると。
「げっ、ヤバ!」みたいな顔をして硬直していたし。
とっても丁寧に動くようになった。
私は文句を精一杯いってすっきり。
これぞwinwinの関係。
そんな中、騎士団は特にアダムの部屋は重点的に捜索したみたい。
まぁ、アダムは容疑者だから、さすがにその部屋の捜索は妨害できない。
彼らは私に注意された鬱憤をはらすかのように、布団は剣でズタズタに切り裂くし。
タンスの服は散らかしていった。
なんて男らしいことでしょう。
私は夫の部屋が荒らされるのを見。
「あー、なんてこと!なんてこと!」という表情をしてうろたえる妻を演じていた。
傍ではメイドのカミラが常に付き添っていたので安心だったし。
本当は全然うろたえてもいなかったんだけどね。
だってそもそも、捜査される事は事前に知っていたし。
私は伊達に社交界で顔が広いわけじゃないの。
王城には何人もの知り合いがいるし、騎士団にだってそう。
だから彼らが意気揚々と私の屋敷に突撃してくる前に。
しっかりと伝令がきて捜索を事を伝えてもらった。
それからしっかりと化粧はすませ、身なりも整えた。
多くの騎士団員に見られるので。
「さすが伯爵夫人」って思われる気品溢れる服を着ないといけない。
それに、捜索が始まれば付近に野次馬が現れるだろうし。
近所の人には迷惑をかけるので挨拶をしないといけない。
ここは高級住宅街だから、そんなに数はいないんだけど。
さっそくメイド達を派遣して、近所には菓子折りを持っていって事情説明はしている。
こういう所で失敗すると、後でどんな悪い噂を流されるか分かったものでないので。
少ししたら、友人や他の貴族からお悔やみの言葉が続々と届くだろうから・・
それの対処も考えないと。
そんな事を考えていると、騎士団は夫の部屋の何か見つけたようだ。
私達が追い出されたアダムの部屋の中が騒がしい。
私は内心「よっしゃー!」と思ったけど、悲嘆にくれた風にその場でうろたえる。
そして部屋の中に入ろうとするが、騎士に阻まれて部屋には入れない。
「ねぇ、一体何を見つけたの?何を?何かあったんでしょ」
騎士は、私を部屋にいれないように体をはる。
多分、あのリーダーっぽい人にきつく言われているんだろう。
「奥様、お伝えできません」っと騎士は繰り返す。
でも、私はそんな騎士を無視して。
「嘘よ、嘘よ、何も見つかるはずが無いわ!
夫は無実だもの。あなた達が勝手にへんなもの持ち込んだんでしょ!
早くここをとおしなさい」」
そう叫んで暴れてやった。
騎士の胸にパンチしてみたりもする。
「そうです、奥様をお通ししてください」
カミラも援護射撃をする。
騎士はオロオロしながら、「やばい!」と思ったのか、部屋の中に救援を呼ぶ。
すると騎士のリーダーがこちらくにくる。
「奥さん、落ち着いてください。
辛いでしょうが、あなたの旦那さんには重大な嫌疑がかかっています。
暫く、遠くで休んでいてはどうでしょうか?」
彼は私をなだめる気だ。
でも、私はそんな気は無い。
「いいえ、この場で見守ります。
あなた達が不正をするかもしれません。
私には捜査を見守る権利があるはずです。
ここは私の家なのですから」
リーダーは少し悩んだ後。
「では、お静かにお願いしますよ。
見るだけですからね。捜査の妨害はしないで下さいね」
「こんなときに、冷静でいられますか!
夫が逮捕されたのですよ。
私はそんな冷血ではありませんわ!」
彼は困ったような顔をし、「では、なるべくお静かに」
そういって捜査に戻っていった。
私は部屋の中に入り、騎士たちの捜査を見守った。
彼らは大事そうに証拠らしきものを袋に入れていく。
私は彼らの姿を見て満足した。
夫の部屋の捜索が終わると、彼らは私の寝室まで調べようとしたがそこは断固拒否した。
「奥様の寝室に入ろうとは何事ですか!」っとカミラが睨みを聞かせてくれたのだ。
相手の騎士は、「いや、これは王命でして」とたじろくが。
そこですかさず私は。
「疑惑は夫だけですよね。
私は容疑者ではないはずですが。
まさか、私が第三王女様を殺したとでも言いたいのですか、あなたは?
まさかそんなこと・・・
なんたる冒涜ですか!」
めいっぱい言ってやった。
いきなり私が叫んだからか、うろたえた騎士は。
「いいえ、そんな事はありませんが。
容疑者が住んでいた自宅ですので・・・」
歯切れが悪い答え。
「関係のない私の寝室に入りましたら、お父様にいいつけますよ。
家捜しに来た騎士に辱めを受けたと。
それに金品どさくさにまぎれて盗まれたと。
あなたはさぞ大変な目にあうでしょうね、騎士様」
騎士は私の言葉にぎょっとして、思わず目を見開いていた。
「いやいや、そんな事はよしてください。
分かりました。分かりましたから。
マリアンヌ様の部屋には立ち入りません」
騎士は引き下がってくれた。
彼は騎士団のリーダーのところに戻って指示を仰いだようだ。
リーダーは私と目があうと、その目を逸らした。
それから渋々うなづいているようだった。
その様子を見て確信した。
彼らは私の部屋には入ってこないようね。
別に入られたって何も怪しいものは見つかりはしないけど。
気持ちがいいものじゃないから。
そんなこんなで彼らは家を荒らしていくと・・・
暫くして彼らは撤収した。
まるで嵐の様な時間だった。
捜索が終わったあと、どっと疲れがふりかかった。
体中に砂袋をつけたみたい。
信じられないぐらいどかっときた。
それに私はかなり口を動かしたのでとっても喉がかわいていたし。
なので庭のバラ園の椅子に座り、紅茶を飲んでいた。
カミラが入れてくれるモノは質が良い。
いつも体内にしみる。
「アナスタシア様。これからどうなさいましょうか?」
カミラが聞くけど、私は隣の椅子を背をトントンとさする。
「カミラ、今は二人きりよ。それに一緒に紅茶を味わいましょ」
「そうでした、アナ。では失礼します」
そう言ってカミラは椅子に座る。
私はにっこりと微笑む。
「これからは、まず王宮に出向かなきゃね。
夫に会いに行かなくちゃ。なんたって妻なんですもの。
囚われた夫に会いに行くのは義務みたいなものですからね。
そうしないと、他の貴族から何も言われるか分かっちゃものじゃないわ」
「それでは、外出の準備をいたしますね」
離れていこうとするカミラの手をとる。
全く、彼女は仕事熱心なんだから。
「いいえ、カミラ。
もう少し今の時間を味わいましょう。
紅茶をもう一杯。あなたも飲んでみて」
「はい、アナ」
カミラが紅茶を注ぎ、私は飲む。
「それにしても、アダムは今、どうなってるかしらね?」
「アダム様は多分、個室に拘留されているのではないでしょうか。
まだ、容疑も固まっていないと思いますから。
一時的に王城のどこかで軟禁されていると思います」
「そうでしょうね。
彼もベッドでくつろいでいるでしょう。
そういえば、近所の反応はどうだった?」
「皆さん驚いているようでして、奥様に同情的です。
アダム様に対しては、今は態度を決めかねているようです。
何件か品も届いています。名目上は、励ましの品だそうです」
「そう、だいたい予想通りね。
一応全員の記録はとっているでしょう。
どの貴族がどう反応したか」
「はい、それは控えております」
「さすがカミラね」
「それと、お父様とお母様ですが」
「さっそく連絡がきたの?」
「はい、心配なので会いたいそうです」
「そうね。それじゃ時間を調整しておいて。これから忙しくなると思うから」
「はい、勿論です」
私は紅茶をすすった。




