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11話 1日目   【夫】騎士団の襲撃

【アダム視点】


 アダム伯爵が目覚めると、見知らぬ個室のベッドで横になっていた。


 一般的な客室の様なその部屋。

 ベッドから起き上がり窓に移動すると、眼下に見える街の姿。

 どうやらここは王城の一室のようだ。


 思い出したように後頭部がジンジンする。

 そういえば意識が戻る前、家に入ってきた騎士に殴られたのだ。

 あの騎士は思いっきり殴りやがった。

 手で触るとたんこぶができてるようでヒリヒリする。


 僕は部屋の入り口に向かい扉を開けようとするが、部屋には鍵がかかっていた。

 ドアノブを回すとガチャガチャと音が鳴る。 


 するとドアに開いた窓には、一人の騎士の姿。

 若い男だ。歳は20代前後だろうか。

 僕はその騎士に話しかける。


「君、この扉に鍵がかかっているようだが?

 外してくれないか?」


 騎士は僕を見て呆れたように笑う。


「アダム伯爵、面白い事を言いますね。

 閉じ込めているのですから、鍵がかかっているのでは当たり前です」


 どうやら僕は閉じ込められているらしい。

 なんでだ?


「何故僕を閉じ込める?

 それにこんな事をしていいと思っているのか?

 僕は伯爵だぞ。

 騎士団がいきなり僕を捕らえて良いはずが無い。

 僕の妻の父が誰だか知っているのか。公爵だ。

 分かったらすぐに開放しなさい」


 一応権利のアピールだ。

 伯爵身分であれば、そう手荒なマネはされないはずだし。

 妻の父、公爵の威光があれば、なんとかなるだろう。直ぐに釈放されるはずだ。


 だが男は、「ふふふ」っと笑う。

 僕の言葉が心底おかしいかのように。


「な、何故笑っている。

 僕が何か間違った事を言ったか?」


 彼は笑いを抑えると。


「いいえ、アダム伯爵。

 それなら俺は伝説の騎士で、妻の父親は大賢者様ですよ」


 この騎士、完全に僕のことを舐めているようだ。

 だがなぜ若い騎士がそのような強気な態度に出られるのか。


 全く分からない。


「悪いが冗談じゃなくて本気だ。

 本当に僕は伯爵で、妻の父は公爵だ。

 こんなことするとまずいのは君たちのほうだぞ」


 そう。こんな暴挙は許されないはず。

 これは誘拐だ。


「分かってますよ。アダム伯爵。

 何度も言われなくても、あなたの身分と親族は。

 その上でここに閉じ込めているんですから」

「いいや。分かっているならこんなこと」


 騎士は肩をがっかりした様に肩を落とす。


「いいですか、伯爵様。

 まだ分かっていないようですから教えてあげましょう。

 この件、第三王女殺害事件については特別指定になったのです。

 通常の犯罪とは違い、身分に関係なく捌きを下します。

 なので例え伯爵だろうと、公爵だろうと、意味はありません。

 知ってると思いますが王族殺しは大罪です。

 刑が確定し、悪ければ一族郎党皆殺しです。

 せいぜい、自分の家族の心配でもした方がいいですよ」


 はぁ?

 僕が第三王女殺害犯だって?


「んな、バカな!何を言って」

「静かにしてください。

 あまり騒ぐと、強攻策を取ることになりますから」


 そういうと、彼は扉の窓をバシャンと閉めた。

 僕の部屋からは廊下が見えなくなる。

 

「おい、待て、開けろ。

 まだ聞きたい事があるんだ!開けてくれ」


 暫く叫んでみたが返事は帰ってこない。

 

 僕は部屋のベッドに腰掛け今の状況を整理してみることにした。

 ここに連れてこられる前、朝起きたらいきなり騎士団に捕まった。

 確かあの騎士も「第三王女殺害」と言っていたはず。

 そして先程の騎士も。


 それなら、僕が捕まったわけは「第三王女殺害の犯人」という事だろう。

 でも、おかしい。

 勿論、僕はそんな事をしていない。

 だが彼らは何故かそう思っているのだ。


 それが本当なら、通常の犯罪と違い特別指定の事案になってもおかしくない。

 なんせ王族、しかも王女が殺されたとなっては。

 厳罰を科さなければ王族の威光が揺らぎ支配力が低下するからだ。

 

 まずいな。相当まずい。

 僕が何もやっていないのは当然だが、もし、他に犯人が見つからなければ、王の威光を示すために怪しい奴はかたっぱしから殺されるかもしれない。

 そうなれば、首チョンパの一番手は勿論僕だ。


 だが一体何故僕が捕まったのか。

 その理由が分からない。


 彼らは伯爵である僕、親族に公爵も持つ僕を強制的に捕らえたのだ。

 それなら何かしらの強い証拠があるのかもしれない。

 そうでないなら、ここまで強く出てこないだろう。


 その理由をなんとしても早めに突き止めて、疑念を払拭しなければ。


 僕はドアをドンドン叩きまくった。

 狂ったようにけりもいれてみた。

 ちょっと足がジーンとして蹴った事を後悔した。


 すると足音がして、ドアの窓があけられる。

 先程の騎士だ。


「アダム伯爵。少し静かにしてもらえませんか。

 十分な食事は与えられますし、生活には差し支えないはずです。

 特に食事の味については問題ないはずです」

「違う、そんな事で呼んだのではない。

 僕を捕まえた理由は何だ。

 何か証拠があって捕まえたんだろ?

 それを教えてくれ!」


「それはあたりまえです。理由があるから捕まえたんです。

 さすがに何も疑惑が無ければ貴族を捕らえたりしません」

「そうだよな。それで、僕が捕まった理由はなんだ?

 第三王女殺しにどう関わっている?」


 騎士は困ったような顔をする。


「言えません。

 それに直に取調べが始まりますので、その時に詳しい事は分かりますよ」

「いいや、今聞きたいんだ」


 そう、早めに知らなければ、取調べとやらでどうなるか分かったことじゃない。

 他の貴族が何か僕を陥れるためにするかもしれない。

 それに情報がなければ不安におしつぶされそうだ。


「ですから無理ですよ。言えません」

「なぁ、そこをなんとか頼めないか。

 私は伯爵だ。君に便宜を図る事だって出来る。

 君だって若いんだ、何か欲しいものの一つや二つあるだろう。

 騎士の給料はそれほどよくないはずだ」


 騎士は「ふぅ~」っとため息をついている。


「買収ですか?さらに罪を重ねるのですか?」

「違う。そういうのではない。

 ただの世間話だよ。最近の騎士生活はどうなのかと思ってね。

 こうみえても僕は騎士だったことがあってね」


「知っていますよ。結婚して玉の輿にのって伯爵になったと」

「そうか、結婚に興味があるのか。

 それなら貴族令嬢を紹介しよう。

 妻のアナスタシアを知ってるだろ。

 彼女は社交界に顔が効くから、きっといい人を紹介できると思う。

 とびきり君に会う子をね。

 どんな子に興味があるんだい?」


 騎士は僕の話に興味が引かれたようだ。

 結婚に興味があるのかもしれない。少し雰囲気が和らいでいる。

 でも、直ぐに表情を戻す。


「危ないところでした。

 アダム伯爵。話はそれだけですか?

 特に用が無いようでしたら」


 彼は扉の窓を閉めようとする。


「ま、待て。

 私は何もやっていないのだからすぐに釈放される。

 罪の無い私なのだから、問題ないだろ。

 その時にお礼をしよう。君はどんな令嬢がいいのかな?」


 騎士は「はぁー」っと再びため息をつく。


「この部屋にいれられた人は皆そう言うんですよ。

 何がそうさせるのか分かりません。

 本当に無罪なら釈放されるでしょうから、心配する必要ないですよ」

「それはそうだが。ほら、万が一があるだろ?」


 騎士は不安げな表情で僕を見る。


「どういう事ですか?何かいけないことでもしたんですか?」

「いいや、そういうわけではないが・・・」

「それなら大丈夫です。では」


 騎士は扉の窓をバシッと閉めた。

 僕は扉を叩いて騎士を呼んでみたが返事は無かった。

 

 暫くして僕はベッドに戻り、腰を下ろす。

 そこで深呼吸する。


 落ち着け、僕。

 僕は何も罪を犯していないんだ。

 そうだ。そうなんだから。

 それなら直ぐに釈放されるはず。

 そう考えればただ数日王城で暮らすだけだと思えば。

 いい休暇になるかもしれない。

 別荘に休暇にきたと思えばいい。

 

 伯爵としての仕事も気になるが、それは妻が上手く回してくれているはずだ。

 仕事はある程度組織化しているし、有能なメイドがいるから大丈夫だろう。

 あれでも伯爵夫人なのだから。


 今はとりあえず、ベッドで横になろう。

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連載始めました↓
彼女が二股していたので、腰が砕ける程衝撃を受けた。

 

連載始めました。よろしくお願いします。↓
転生したら吸血鬼さんだった件~チートで世界最強です~

 

さくっと同時連載中。↓
もう、結構ですわっ!

 

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