10話 1日目 【母】血まみれの飲酒
【マリアンヌ視点】
頭が痛いわ。
ガンガンと奥の方から響きます。
伯爵を息子にもつ母マリアンヌが目覚めると。
彼女は手に赤いものがついている事に気づきました。
なんだろうと思い全身を見ると、服にも赤いものべっとりをついています。
その上服が所々濡れています。
その瞬間、再び頭痛に襲われて頭がガンガンします。
(昨晩は飲みすぎてしまったみたいね)
私は昨晩の行為を反省し、頭の痛みに向き合います。
昨日の昼、息子の妻を怒らせてしまい、そのことが気になってついつい飲んでしまったのです。
自分の軽率な行為を忘れるために。
だんだんと意識が覚醒してくると、すぐに独特の鉄の匂いが鼻をついてきます。
そのお陰で赤い液体の正体が分かりました。
この赤い液体はあれです。
そう、血です。
すぐに私は悟りました。
私は怪我が無いか自分の体を確認しましたが、とくにないみたいです。
痛みも感じません。
いいえ、昨晩飲んだためか、二日酔いの様で頭は痛いですが、それ以外にはありません。
いたって健康そのものです
でも、私の血でないのなら一体誰の血なのでしょうか?
その疑問が私の心を占めますが、答えは浮かんできません。
私はとりあえず身なりをなんとかする事にしました。
これ以上血まみれでいたくはありません。
部屋を出てお風呂に入り血を洗い落とし服を着替え、血にそまった服とシーツは袋に入れます。
この服とシーツは洗っても汚れは落ちないでしょう。
血の汚れは落ちにくいのです。
それから私は家の中に垂れていた血の掃除にとりかかりました。
汚れをほっておけない性格で、家はなるべく奇麗に保ちたいのです。
床をごしごしとこすり汚れを落としていきます。
奇麗になっていく床を見ていると気持ちがいいです。
この家で私は一人暮らし。
そんな私を心配して、息子はメイドを雇うといってくれましたが私は拒否しました。
家事は自分でやりたいのです。
他人にやってもらおうとは思いませんでした。
でも、週に2回ほど家にメイドが来ます。
息子の好意を一部受け入れ、その日は休日としています。
今日は休日でなくて良かったです。
もし、今日メイドが来ていれば、血について何か言い訳を考える必要がありました。
でも、本当にどうしででしょう?
一体、この血は何なのでしょうか?
私は床を磨きながら、血のことを考えていました。
この血は一体、どこから来たのかと。
私の血でないのだからそれは他人のものです。
それでしたら、一体いつそんなものがついたのか?
昨日の晩は居間で酒を飲んでから、それから・・・・
恥ずかしいことにそれ以降の記憶がありません。
私は嫌なことがあると酒を飲むんで忘れるようにしています。
いけない習慣だと思っていますが、やめられません。
昨晩は息子の妻を怒らせてしまった失態を忘れるために飲んだのです
私は一体、昨晩から今朝まで何をしていたのか?
時々酒を飲むと記憶がなくなる事がありますが、今回の様な事は初めてです。
お酒の影響で、息子の家であんな事をしてしまったのかもしれません。
それなら私は記憶を失っている間に何かとんでもない事をしてしまったのでしょうか?
大量の血が身に降りかかることを。
まさか、まさか、まさか。
誰かに怪我をさせて、その血が私にかかったのかもしれません。
まさか・・・・
でもその疑念を打ち消す事はできませんでした。
私は不安になり、街に出ることにしました。
◇
近所に女性達が集まっていました。
その中の一人が私を発見して手を振ります。
「あら、マリアンヌさん。聞きました、あのお話?」
彼女は興奮しているのか、息が弾んでいます。
「なんのことですか?」
「すごい事がおこったんですのよ。
なんでもね、なんと、第三王女様が殺されちゃったの!」
彼女はさも大事そうに話しました。
「え?」
私は上手くその言葉がのみこめません。
「驚くのは無理無いわ。私もビックリだから。でもね、その殺され方が凄いの」
「そうそう、なんとね、噴水広場の銅像貼り付けにされていたんだって。
おまけに魔女みたいな格好をさせられて、手のひらには杭までうちこまれていたみたい。
それにお腹は切り裂かれていて、中には何か入れられていたんですって」
「怖いわよね。まさか、第三王女様がそんな殺されかたするなんて」
「そうよねー。平民でもそんな死に方しないのに」
「絶対に王宮の世継ぎ問題よ。そうに決まってるわ」
「そうよねー。色々悪い噂を聞きますしね。そうかもしれないわ」
彼女達が噂話で盛り上がっている間、私はうわの空でした。
(第三王女様が死んだ・・・・
それも私が血まみれで目覚めた日の晩。
もしかして、私?
覚えていない間に、私がやったの?)
「大丈夫、マリアンヌさん?顔色悪いみたいだけど」
一人が私を心配そうに見ます。
「大丈夫よ、ご心配なく」
「あなたが、グロテスクな話をするからよ」
「そうよそうよ」
「そんな、皆だってしてたじゃない」
私は彼女の達の話を聞いていると。
一人の女性がこちらに駆けてきます。
そして。
「皆、犯人がつかまったって」
「だれだれ?」
「誰が殺したの?」
「私も驚いたの。実はね、なんと・・・」
彼女はそこで域をため、みんなの注目が集まってから。
「アダム伯爵だって!本当驚きよ」
そういってから、その子は私がいる事に気づいて表情を固めます。
「やばっ!」という雰囲気が伝わってきますが。
「はーい。マリアンヌさん。おはようございます」と挨拶する彼女。
私は挨拶を返している暇はありませんでした。
彼女は私の息子が第三王女殺人犯だといったのです。
私は衝撃を受けましたが、すぐに口を動かします。
息子が犯人だなんて、とうてい信じられることではないのですから。
「そんな事ありえません。あの子はとっても良い子です。
きっと何かの間違いです」
自分で言ってあれですが、どこかで聞いた事があるセリフです。
息子が捕らえられた母親が毎回言うセリフなのかもしれません。
「そうよね、私もそう思うわ」
「私も私も。あなたの息子がそんな事するはずないわ」
「ほらあなた、つかまったって、確定なわけじゃないでしょ?」
情報をもってきた子は。
「うん、そうかもしれない。
でも多くの人が、アダム伯爵の家に騎士団が訪れて、伯爵を拘束して連れて行くところを見たって」
私はその話を聞き、その子につめ寄ります。
「あなた、息子はどこへ連れてかれたの?ねぇ、一体、どこに?」
私に問い詰められてぎょっとする子。
あたふたして。
「えっと、その・・・確か王城だって」
私はそれを聞くと彼女を離し、王宮に急いぎました。
マリアンヌが去った後。
集まっていた女性達は彼女が去ったのを確認してから。
「本当、お気の毒ね。マリアンヌさん。
せっかく息子さんが出世なされて貴族なられたのに」
「ええ、そうですんわね。私も息子がそんな事したらと思うと・・・冷静でいられませんわ」
「でも、まだ決まったわけじゃないですしね。何かの間違いかもしれませんよ」
「そうですけど、何もなかったら騎士団は拘束しないのではありませんか?」
「どっちにしろ大変だわね」
「そうですね」
そうして彼女達は噂話を続けた。




