9話 0日目:夜 【王女】第三王女殺害事件(下)
題名の【】は視点になります。
【母】マリアンヌ夫人
【夫】アダム伯爵
【妻】アナスタシア公爵令嬢兼伯爵夫人
◆主要登場人物
・アナスタシア:25歳。アダム伯爵の妻であり公爵令嬢。甘やかされて育ったお嬢様。
・アダム :25歳。アナスタシアの夫。平民から成りあがった伯爵。母を大事にしている。
・マリアンヌ :49歳。アダム伯爵の母。夫は蒸発。一人で息子を育てたので愛情深い。貴族生活には慣れていない。
◆やや残酷な描写がありますので、ご注意下さい。
【続・第三王女視点】
王都の噴水広場で、私は彼との出会いを思い出していた。
あの誕生日パーティーの日が出会いだった。
あれから何度も会い、私達は関係を深めていったのだ。
私はいつの間に彼に惹かれていた。
彼もそうだったと思う。
お互いに障害はあったけど、隠れながら彼と付き合うのはドキドキした。
会うのだってとても大変だ。
私は王族で、彼は貴族だから。
今日だって通常であれば夜にこんな場所に一人ではこられない。
私は王族であり、その警備は厳しい。
夜の王城から一人で出る事など考えられない。
でも、それは過去の認識だ。
やってみると、よく調べてみるとなんとかなる事が分かった。
警護対象である私は、ある程度の警備情報を知っている。
そのため私にその気があれば、抜け出すことも可能なのだ。
私は警備の隙をつきつつ王城を歩き回り、最後には抜け道を通って城外に出た。
初めての経験ではない。
私は何度かこうして外に出て、彼と会っていた。
毎回ドキドキしながら城を抜け出すのがたまらなかった。
夜の静けさと冷たさ、体のうちに沸き起こる熱い思い。
冷静になると、「私はなんて事をしてるんだろう?」と思ったけど、彼と会う日々が近づくと、ついついそわそわして城を抜け出してしまう。
それは恋心がなせる業なのかもしれない。
私がそうして、今夜も噴水広場で待っていると。
いきなり後ろに誰かの存在を感じたと思ったら。
そっと後ろから目を手で塞がれる。
「だーれだ?」
薬品か何かで声を変えているようだ。
普通ではない甲高い声。
私は一瞬ビクッとするが、鼻をクンクンと動かして嗅ぎ慣れた匂いに安心して脱力する。
彼が来てくれたみたい。
全く、こんな子供みたいな事するんだもん。
でも、私は彼に会えて嬉しかった。
「もう、ビックリしましたわ。
いじわるいしないでください。
待ちくたびれていたのですよ。
あなたが来ないのかと思って。
城から抜け出すの大変だったのですから」
私は表情を緩め、目を塞がれたまま返事をする。
でも、彼の返事がない。
おかしいな。
どうしたんだろう?
それに彼は手袋をしているようだ。
彼の手が離れたので、後ろを振り返ると。
次の瞬間。
視界の中で何かがすばやく動いたと思うと、首筋に衝撃を受けた。
私が視線を下げて自分の首元を見ると、注射器が深々と突き刺さっていた。
「な、なん・・・で」
私は目の前の人物を見て、小さな声を必死に繰り出すが。
声を発することはできない。
意識がふわっと浮き、体の自由が奪われていく。
口も動かないし、体も動かない。
でも、意識も感覚もある。
(な、なんで?なんでこんな事に?)
私は意識はあるが、体が動かなかった。
黒ローブ姿の誰かは、仮面をつけたまま私の髪を掴んで地面をひっぱっていく。
私の手首をロープで縛りあげると・・・
ロープの先をどこかにかけたのか、私の体は宙に吊り上げられていく。
いつの間にか噴水傍の銅像の前につらされていた。
仮面の人物は右手に木槌、左手に大きな釘の様な物をもっている。
その人物は、私の右手を押さえつけると。
次の瞬間、手のひらに釘を打ち続ける。
激痛に体が震える。
するどい痛みが、燃えるような痛みが襲ってきた。
これまで味わった事も無い強烈な痛みが私を襲う。
カン、カン、カン、っと木槌を打つたびに。
釘は銅像にめり込んでいく。
そして私の手の平に釘がめりこむ。
仮面の人物は同じように私の左手を押さえつける。
私は涙が出てきた。
必死に抵抗しようとしたが体は動かない。
次の瞬間。
カン、カン、カン、っと再び木槌を打つ音。
またしても劇痛が私を襲う。
手の平に釘の底がめりこんでいく。
その後。
私の右足、左足と、同じように釘がうたれる。
もう激痛で失神寸前だった。
いいえ、実際に何度も失神した。
でも、釘を打たれるたびに、その痛みで目覚めてしまう。
薄れ行く意識と涙で視界がぼやけてくる。
仮面の人物は私の涙を優しくすくう。
私は一瞬目の前の人物が助けてくれるかもしれないと思った。
でも、仮面の人物は釘を目の前にさらして見せるだけ。
私の目の前に近づけた釘を、眼球に優しく接触させ。
思いっきり木槌を振りかぶる。
(待って、だめ、待って。もう打たないで。目だけは・・・やめて)
そう心で思ったが、体は動かない。
声が出ない。
次の瞬間、私の右目に釘がつきささった。
ぐちゃっと眼球がつぶれた音がする。
激痛とともに目の奥に入ってくる異物。
私はもう限界だった。
残った視界は左目だけ。
半分になった視界。
でも、残りの目の前に釘がさらされる。
(だめ、やめて。もうやめて。早く開放して。残りの目はやめて)
その願いをむなしく、釘が左目に突き刺さる。
再び眼球がつぶれた音がし、私の視界はふさがれた。
(もう、殺して欲しい。早くやってほしい。お願いだから、早くして欲しい)
だが、次の一撃はこない。
体中から血が流れ、全身から激痛がする。
しかし、意識をなくならない。
ただ暗闇の世界で激痛に耐える日々。
地獄の様な時間が過ぎていく。
私は何度も気絶し、その度に釘を打たれる。
意識を回復させられれ、再び襲ってくる激痛。
そうしていつしか。
私は痛みの中で意識は消えていった。
こうしてこの国の第三王女は死んだのであった。
彼女の殺した人物は、数秒間その死体をじっと見つめと、とあるしかけをした。




