駐車場でのインターバル
結局服を二着買ってきた。帽子は大きめでゆったりしたやつを買ってきたもののかぶっていない。服に似合っていないのと、帽子で耳が擦れるのが理由だ。あとは、下着と基本的な化粧品。
帰りの電車中スーは執拗に頭を撫でてきた。無論耳を触るためである。こんな分かりやすいウィークポイントを抱えてしまうとは悲しい限りだ。電車は座れなかったので、ずっとプルプルしながら立っていた。また目がうるんできた。潤んだ目で上目遣いで見上げるとさらに耳を触られた。
私はスマホを持っていないので、スーがヒロに連絡してくれた。どうやらドクがすでについているらしく二人でくるそうだ。もう一人にも連絡したが連絡はつかなかったようだ。
帰りの電車の時間はいつもの三倍くらい長く感じた。ちなみに、服は重かったのでスーが持ってくれた。
駅に着くとやっと解放された。時間が夕方なので最後まで座れなかった。地下駅からエスカレーターで上がる。駅前の一時乗降用の駐車場に二人が来ていた。二人は黒い軽自動車に乗ったまま、談笑していた。耳がよくなったとはいえ、さすがに車の中で話している内容までは聞き取れない。こうして見てるとカップルみたいだ、なんて考えながら近く。私たちに気づいたヒロが手を振った。談笑をやめてドクは私をじっと見ていた。
「本当に女になったのか、実に面白い」とドクは言った。「私の能力でスキャンしても良いかな」
能力について最も開けっぴろげなのはドクだ。能力の内容を明かすべきかどうか五人で話し合った時に、全員で情報共有すべきと主張した。私とスーの強い反対で結局能力は秘密になったのだが。しかし、ドクは一方的に全員に能力を教えた。
「私の能力は、外傷や病気を治して、正常な状態にすること」と。医学部生が回復能力を得るのは、ベタなのだろうか、自然なのだろうか。
スキャンしたいという申し出は「家に帰ってから」と答えた。こんな目立つところでやられたくはないが一応、現状がどうなっているのか気になる。
四人で車に乗ると家へと向かった。