地獄への転生
――あ、落ちる。
気づいたときには既に足の感覚は麻痺していた。
呼吸さえ困難で、爪に砂利が入り込んでなお何も掴めないままのた打ち回った。
短い息を繰り返して必死にもがきながら、頭の中はいやに冷静にこれから訪れるであろう死への描写に余念がない。
吐きたいのか、吸いたいのかも分からない。
涎も鼻水も涙も垂れ流しの状態で何も見えずに休息に思考が混濁していく。
やばい、まずい、苦しい死ぬ。
そうだよこれから死ぬんだよ。
まさか自分がこんなに苦しんで死ぬことになるなんて思わなかった。
安らかに死ねるなんてありえないとは思っていた、誰かがそう言っていたから漠然とそういうものだと思っていた。
それがどうだ、こう苦しいとは思いもしていなかったんだ!
今の自分は何て無様なんだろう、きっと体中の何もかもがいたるところから吹きだしている。
誰か助けて、助けて、誰も来ない!
ああ、私の馬鹿。
今日に限ってどうしてこんな時間のこんな場所を通ってしまったんだろう。
いや、そもそもどうして私が、何で私がこんな苦しみに遭っているんだろう。
おかしいでしょ、他に人間なんてそれこそ死ぬほどたくさんいるっていうのに。
苦しい、やばい、死ぬ、気持ち悪い誰か助けてよ!
時間にするとおよそ何分も経ってない、何十秒とすら経っていない。
正直そんなことどうでもいい、この頭はこんなときだってそんなどうでもいいことばかり考える。
いっそ殺して、一思いに、早く殺して苦しいよ。
思った瞬間、突然視界も音もなくなった。
真っ暗で無音、暗いというより真っ黒。
なのに、あれ?
苦しみはまだ消えないまま。
呼吸は困難なまま。
いやだ、嘘でしょ。
早く誰か助けて、私を殺して楽にしてよ。